1998年8月18日(火)
【熊大第1迷宮:イナバウアー部隊】
「君が佐藤くんかねー。かかってきなさい」
目の前に出現したブッチャーがこのように言葉を発して、微かに微笑みを浮かべている。ここは熊大第1迷宮地下1階。イナバウアー部隊は本日からボス戦であるブッチャー戦を開始すべくブッチャーの部屋を訪れ、先ほど佐藤 義明がカエルの彫像を動かしたのである。ブッチャーに関する情報については事前に確認済みであり、現在の実力が有れば挑んでも大丈夫であることは諸先輩達から話も聞いている。とはいえ、冒険者になって初めてのいわゆるボス戦なので、多少の緊張感は感じている。
「義明集中!」
「佐藤さん、頑張ってー」
同じ戦士である佐々木 裕司と山田 由紀が後方から声援を送ってくれている。それを聞いて気合いを入れ直してた佐藤はブッチャーへと挑んでいく。聞いていた通りブッチャーの攻撃は鋭く、避けるのは難しい部類に入る。だが、喰らったとしてもあまりダメージは大きくない。また、こちらの攻撃は比較的当たりやすいが、ダメージが通っているかどうかが分かりにくい。しかし、全くダメージを与えられていないかと言えば、そうではなさそうである。佐藤は戦いながら、ブッチャーの戦闘力が事前に聞いていた通りだと感じ、これなら時間はかかれど倒すことができるという自信を持てた。程なく佐藤の渾身の1撃によりブッチャーは消滅し、戦闘が終了する。
「義明おつー。物質回収します」
ブッチャーが消滅している場所に向かって小田 直樹が物質回収に向かう。その途中、佐藤とすれ違いざまに声を掛けたので、佐藤はそれにサムズアップで返した。
「佐藤くん。お疲れ。回復するからおいで」
優しい笑顔で石田 有紀が手招きをしているので、佐藤はそこに向かって歩いていく。ブッチャーの攻撃は軽いものだったが、結構回数は喰らっているのでダメージは蓄積している様である。この後、小田の物質回収が終わったので、ブッチャー戦を再開することにし、この後は佐々木 裕司、山田 由紀の順番でブッチャーと戦った。特に問題なくブッチャーを倒せることがわかったので、次回からは数回戦うことを視野に入れて、本日はこれにて探索終了とすることにした。