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1999年4月22日(木)
【熊大第1迷宮:いつかは最強いつでも最強部隊】
「ついに俺たちも第2迷宮進出だな」
回復を終え、大きく背伸びをしながら藤井 淳紀が言葉を漏らした。ここは熊大第1迷宮。本日いつかは最強いつでも最強部隊は地下10階を訪れて、遭遇する亜獣を討伐していたが、ボスであるワードナとついに遭遇し、苦戦しつつも殲滅に成功したのである。これで第1迷宮はクリアということになり、第2迷宮探索の権利を得たことになる。
「別に第2迷宮行かなくても良いんだよね?」
特に深い意図はなく、福永 菜月が質問の声を上げる。第1迷宮をクリアしても、第1迷宮探索を継続するという選択肢は残っているので、別に第2迷宮に探索の場を移さないといけないわけではない。
「何か、飽きちゃったかな」
ワードナから受けたダメージを鹿本 芽衣に回復してもらっている前村 亮二が自分の感想を述べる。第1迷宮探索を開始してから約4年。ほぼ毎週第1迷宮を訪れては探索を行っている。もちろん階層は10階あるので、時期によって探索するエリアも違えば遭遇する亜獣もことなる。とはいえ根本的には同じ迷宮なので、流石に飽きるという感情が湧き上がっても仕方がない状況なのである。
「俺も少し飽きたかもしれないです」
「私はどちらでもいいかな。多分あまり変わらないし」
レア物質回収から戻ってきた宮本 紳が話に入り、それに大河原 美沙が言葉を続ける。罠解除士の本懐は隠された罠の発見や解除にあるので、同じ場所の探索を行ってもあまり心が踊らない。単に亜獣探知をしながら知っている場所を彷徨いているという感覚にしかならないのである。対して魔術師は探索中はマッピングをするという役割はあるが、現在完成版のマップは出回っており、探索中は特にすることがない。戦闘時も攻撃魔法を唱えるだけのことが多いので、それが第2迷宮に行って変わるのかと言えばそうでもない気がしているのだ。
「まあでも、第2迷宮の方が楽しそうじゃない。みんなで行きましょう。はい、回復終わり」
笑顔でこう言いながら、鹿本が前村の肩をポンと叩く。これで物質回収と回復が終わったので、本日は探索を終えて戻ることにする。戻りながら全員で意見を交換し、次回から第2迷宮探索を行うことを決めたのである。