1999年5月24日（月）

【AXIS：本田　仁・富田　剛】
「ういー、絶対トゥザヴィクトリーが勝てたはず。あれは絶対八百長じゃ」
「竜二の父ちゃんじゃないんですから」
　酔っ払ったような口調をしながら発した富田　剛の言葉を聞いて、呆れたように本田　仁が返事を返した。ここはゲーム＆喫茶『AXIS』ゲーセン部。本日本田は午前中魔術師鍛錬場で鍛錬を行った後、『AXIS』喫茶部でランチを食し、その後でここに来たのである。しばらくゲームを楽しんでいると、店番の富田が暇そうにしていたので声をかけに行く。すると富田が、今週末は日本ダービーだとテンションが高かったので、昨日のオークスはどうだったのかと質問してみたのである。すると先程のような返事が返って来たのだ。ちなみに富田は仕事中なので実際に酔っ払っているわけではない。
「まあ仕方ないす。ダービーで取り返すよ」
　こう言いながら富田はお茶缶を取り出して本田に渡した。冒険者組織にはパチンコやパチスロ、麻雀などを行うギャンブル好きはたくさんいるが、意外と公営競技にのめり込んでいる人は少ない。要因としては熊本市には熊本競輪場しかなく、競輪以外の公営ギャンブルをやろうとすると結構遠出をしないといけないのだ。JRAであれば小倉競馬、地方競馬で荒尾競馬場、競艇だと微妙な距離であるが福岡競艇場か大村競艇場、オートレースは飯塚オートレースまで行かないと楽しめないのだ。また、JRAのGIレースは荒尾競馬場で購入できるのだが、購入金額が1000円単位なので、微妙に買いづらいのである。また、電話投票というのもあるが、まだこの時代はあまり浸透しておらず、富田でこそJRAと競輪の電話投票権を取得しているが、ほとんどの者が電話投票自体をまだ行っていない。
「ダービーはナリタトップロードで決まりだよ。けーいばーけーいばー美しい〜ひゃっほー」
「来週も竜二の親父にならなきゃ良いですね」
　ダービーの予想を話した後で、今年のJRAのCMソングを口にした富田に、本田は笑いながら返事を返したのである。ちなみに竜二の父ちゃんとは名作リングにかけろの主人公高嶺　竜二の義父のことであり、いわゆる人間のくずである。富田は酒もギャンブルも人並み以上に行うが、ああはなりなくないという気持ちでブレーキがかかっている。そう考えると竜二の父ちゃんもアルコールやギャンブル依存症へのアンチテーゼとしては有益なキャクターだったのかもしれない。