1999年11月15日(月)
【熊大第2迷宮:人類補完計画部隊】
「やっぱり通れないんだ」
「変な感じだね。ま、置いてけばいいよ」
話に聞いていた見えない壁の感触を確かめた雨宮 英利香が漏らした言葉を聞いて、前野 諭子も感想を口にした。ここは熊大第2迷宮入り口。前回の探索で第1迷宮をクリアした人類補完計画部隊は本日から第2迷宮を探索することになっている。第2迷宮の特徴として、第1迷宮で収集した強力なアイテムが使用できないというルールがある。それらを持ち込もうとすると、入り口手前にある見えない壁に侵入を阻まれるのである。もちろんこのことを部隊のメンバーは知っていたが、見えない壁の感覚を味わってみたいということで、戦士3人は今から使う武器とは別に、第1迷宮で使用していた武器を持ってきていたのである。
「じゃあ行くよ」
第1迷宮の剣を3本部屋の隅に置いた戦士の3人は、すでに見えない壁の先で待っている後衛の3人と合流し、迷宮へと侵入する。
「とりあえず呪文が効く亜獣は攻撃魔法で倒して、魔法が効かない亜獣は私たちで倒す。武器もまあまあ使えそうからなんとかなりそう」
とりあえず入り口付近を彷徨きながら前野が作戦を口にする。何だかんだで第1迷宮をクリアしているので、冒険者としてのレベルはある一定以上はクリアしている。現在確認されている魔術師と僧侶の呪文についてはティリオス以外は全て唱えることができるので、呪文が効きさえすれば地下1階レベルの亜獣であればそれだけで倒すことが出来るのだ。問題は戦士の装備が弱体化していることであり、こればかりは今後第2迷宮用の強力な装備を集めて行くしかない。ただ、前野と雨宮、高宮 太輔が装備している武器は、純然たる初期武器ではなく第2迷宮で発見された武器を中古で購入したものなので、悲観するほど弱い武器でないのは確かである。
「亜獣います。5体」
「良し、第2迷宮初戦。集中するよ」
亜獣の気配を感じた長内 泰大が報告し、前野が全員に声をかけた。声を聞いて全員が集中し、亜獣との戦闘に備える。
「TNT爆発」
「無効」
目の前に現れたオーガの君主5体に対して鬼塚 茉莉花がTNT爆発、金尾 秀文が無効を唱える。呪文の直撃を喰らったオーガの君主は何もできずに消滅していった。
「呪文だけで行けますね。物質回収します」
TNT爆発だけで亜獣が消滅するのを見て長内が声を発しながら物質回収に向かう。戦士3人は戦闘を行っていないので、回復を受ける必要がなく、他のメンバーたちと一緒に回収が終わるのを待つ。
「しばらくこんな感じなのかな」
「まあ、仕方ないんじゃないっすかね」
出番が無かったことに少し残念な表情の雨宮の言葉に、高宮も気持ちを伝える。この後は回収が終わるのを待って探索を再開し、攻撃呪文が撃てる分だけ亜獣との戦闘を行い、呪文が切れたタイミングで探索を終えることにした。