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1999年12月27日(月)

【AXIS:本田 仁・水井 華代・富田 さやか】

「すいません本田さん。年末年始は一緒にスロット打てないです」
「いやいや、全然気にしなくていいよ」
 済まなそうな表情を浮かべた水井 華代の言葉を聞いて、本田 仁は笑顔で返事を返した。ここはゲーム&喫茶『AXIS』喫茶部。お昼過ぎの時間であり、ランチを楽しみにたくさんの客が来店している。午前中は魔術師鍛錬場で一緒に鍛錬を行った本田と水井であるが、鍛錬終了後は一緒に『AXIS』にやって来て、現在はランチ後のティータイムをのんびりと楽しんでいる。クリスマスも終わり、年末年始に向けて待ったなしであるが、水井は29日から2日までは実家に帰ってこいと言われているようであり、その間は本田と一緒に活動できないことをかなり残念に感じている。同じように本田も残念に感じてくれるかどうかはわからないが、一応状況を説明してみると、意外とあっさりとした答えが帰って来たのだ。ちなみに冒険者組織の年末休暇は30日から始まるので、水井は1日早く仕事納めとなる。
「じゃあ今日明日が今年の打ち納めになるかな」
 少し残っていたコーヒーを飲み干した本田がこう言葉を漏らし、それに水井は無言で頷く。29日の朝のJRで帰る予定なので、今日と明日一緒にスロットを打つと次は年明けになるのである。
「ということで今日明日はがっつり打ちましょう」
「閉店までコースかな」
 一緒にスロットに行けるのが今年残りあと2日になったので、気合を入れて打ちに行く気が満々の水井の言葉を聞いて、本田もそれに併せた返事を返す。今日も明日も午前中は鍛錬もしくは探索になので、実際にスロットを打ち始めるのは13時過ぎぐらいになる。そこから腰を据えて打つとなると、途中の夕食を我慢して閉店まで打ち切るのがスロッターの矜持というものである。
「じゃあ行きますかね」
 こう言って本田は伝票を持って立ち上がり、レジへと向かい、そこにあるベルを押す。すると厨房の奥から富田 さやかが出てきた。
「本田くん。今日もありがとうね」
 こういって富田はお金を受け取り、小銭のお釣りを返す。そして2人を見つめながら声をかける。
「じゃあ本田くん、水井さん頑張ってきてね」
 最近スロットを打ちに行く前はほとんどここに寄っているので、富田も今からスロットを打ちに行くことを理解しているようである。この言葉を聞いた2人はサムズアップで返事を返して、笑顔で店を出ていくのであった。

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