1996年11月16日(土)《BN》
【道:前田 法重・中島 一州・原田 公司・大塚 仁・中尾 智史・本田 仁】
「何かすげー犠牲者出たらしいっすね」
「空中で衝突だからな」
テレビの音が少し聞こえたのを聞き逃さなかった中尾 智史がそのニュースについて発言し、それを聞いた原田 公司が冷静に返事を返した。ここは居酒屋『道』。本日もたくさんの客で店内は大賑わいである。前田 法重と心の友のメンバーたちもいつもの時間に集合し、いつものように盛り上がっている。11月12日にインドで、旅客機が空中で衝突するという事故が起きた。この事故により多くの死傷者が出たことは連日テレビでも放送されている。飛行機が空中で衝突するなどということは、おそらく誰も全く想定していない事象であり、現在も全世界で数多くの飛行機がフライトしているが、飛行機同士がぶつかるという可能性はほぼ0に近い。そのくらいの安全性が確保されていなければ飛行機という移動手段が成り立たないであろう。
「いやー、こんなの聞くと怖くて飛行機乗れんよね」
「まあ、そんなに乗ること無いっすけどね」
事故に遭う可能性を考えて前田が言葉を漏らして、それを聞いた大塚 仁が返事を返す。冒険者組織の冒険者たちは基本的には黒髪地区から移動しないので、飛行機に乗るような事象が存在しない。もちろん実家が遠かったり、旅行に行ったりする場合に利用するものもいるが、少なくともここにいるメンバーは実家が遠くても福岡であり、旅行にもほとんどいかないので飛行機に乗る必要がないのである。
「そういえば俺も新婚旅行で乗ったぐらいかもしれん」
「俺たぶんオランダ行った時ぐらいですよ。飛行機乗ったの」
飛行機に乗った記憶を中島 一州が思い出し、本田 仁はそれよりもっと以前の記憶を思い出した。
「オランダ懐かしいな」
「意外と楽しかったですよね」
自分も思いだした前田が言葉を発して、原田も思い出を口にする。オランダには以前冒険者組織の研究協力のために訪れており、このメンバーの中では中島と中尾を除く4名がそれに参加している。
「大塚は新婚旅行で今度飛行機乗るんだよね。落ちんように祈っとくよ」
「うわー、それ何てフラグ!不吉だからやめれ」
次に飛行機に乗りそうな予定を本田が口にし、それに大塚は全力で突っ込み返すのであった。