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1999年12月24日(金)

【冒険者組織書籍部:内田 佳奈美・大島 清吾】

「後少し業務が残っているからもう少し待っててね」
 格闘技コーナーで立ち読みをしている大島 清吾に向かって内田 佳奈美が優しく声をかけた。ここは20時を過ぎた『冒険者組織書籍部』。すでに店は閉店しているので、店内に客は残っていない。まだ大島は店内にいるが、内田が仕事を終わるのを待っているだけであり、客とはカウントされないのである。本日はクリスマスイブであり、カップルたちは楽しい夜を過ごすのではなかろうか。内田と大島もこの後は一緒に出かける約束をしており、大島の車で草千里ヶ浜に夜空を見に行く予定だ。
「清吾くんお待たせー」
 呼びかけられたので大島は読んでいた雑誌を棚に戻し、内田に視線を向ける。
「じゃあ行きましょうか」
 こう言って内田に視線を向けた大島は笑顔を浮かべた。2人は一緒に店を出て店の鍵を閉める。そして南地区にある駐車場まで歩き、大島の車へと乗り込んだ。
「阿蘇に行くんですけど、途中でご飯食べなですね」
「そうね。清吾くんも晩御飯まだだよね」
 車を発進させながら大島が夕食について口にし、それに内田が返事を返す。現在20時半ぐらいになっており、先程まで仕事をしていた内田はもちろん大島もまだ夕食を食べていないのだ。南地区を出た大島は県道337号線を右に曲がり、阿蘇方面へ進んでいく。その途中のレストランか何かに寄ろうと漠然と考えながら道を進める。すると武蔵ヶ丘あたりに良さそうなファミレスがあったのでそこで夕食を取ることにする。そして夕食の後はまた阿蘇に向かって車を走らせた。時間も夜景を見るにはちょうど良い時間となっており、草千里ヶ浜の駐車場に到着すると、雲ひとつない天気で満面の星空を眺めることができた。
「寒いけど綺麗ね」
「さすが夜空スポットに上がるだけはあるな」
 車を降りて少し歩きながら内田が言葉を漏らして、大島は冷静に分析をする。その言葉を聞いて内田は少し笑ってしまったが、大島はなぜ笑われたのかは理解ができなかった。この後しばらく散歩をした2人は車に戻り、暖かい車の中から星空を眺める。そして色々なことを話していくうちに良い雰囲気になって自然に唇を重ねるのであった。

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