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2000年2月11日(金)
【鶴屋:島田 笠音・前島 瑠衣・太田 香澄・左村 亜香里】
「ちょっと多くないですか?」
「自分用もあるからね」
買い物かごを覗いて声をかけてきた太田 香澄の質問に対して、島田 笠音は笑顔で返事を返した。ここは熊本を代表する百貨店『鶴屋』。現在バレンタインフェアが行われており、たくさんの若い女性が高級チョコレートを求めて来店している。本日は建国記念日で祝日なので、冒険者組織もお休みである。そこで島田と太田、前島 瑠衣と左村 亜香里の華撃団Ⅲ部隊の女性陣で朝から『鶴屋』にやって来たのである。いろいろなメーカーのたくさんの種類のチョコレートが用意されており、本命チョコにしろ義理チョコにしろ誰にどのチョコレートを渡すのかは悩ましいところである。そんな中、島田の買い物かごに入ったチョコレートの数は他の3人よりも明らかに多く、思わず太田が突っ込みを入れたのである。
「笠音は甘いもの好きだからねー」
「にしても多いですよね」
少し呆れた様子で前島が言葉を発して、それに左村も感想を口にする。チョコレートは全員大好きなので、男性に渡す分以外にも自分用として欲しいチョコレートは購入する場合がある。とはいえ、それはそこまで大量ではなく、多くても3〜4個ぐらいの数になるのが普通だ。ただ、島田のカゴに入っているチョコレートの数は、他の3人のチョコレートに比べて5倍程度の量があるのだ。もちろん冒険者の数的に戦士の人数が多いのもあるかもしれないが、人数比としては3対1であり、同じ職種のメンバー全員に配ったとしても3倍の数があれば足りるのである。
「考えて見たら戦士は大変だな」
「男性比率も高そうだもんね」
チョコレートの数の理由を考えて左村が口にした言葉に前島も感想を述べる。基本的に接するのは同じ職種の人が多いので、純粋に人数が多く、男性比率も高い戦士は、配るチョコレートも多くなると理解する。ただそれを加味しても島田のカゴにはあまりにも多くのチョコレートが入っており、結局島田はそれを全て購入したので、帰り道は大量のチョコレートが入ったたくさんの鶴屋の紙袋を手に下げて黒髪まで帰るのであった。