1998年8月28日(金)
【罠解除士鍛錬場:森下 翼・宮本 紳・前島 瑠衣】
「あれ、上手くいきそう」
そろそろ吹っ飛ばされるのを覚悟していた森下 翼だったが、目の前の罠の状況が前回より少し進展しているのを感じ、こう言葉を発した。ここは午前中の罠解除士鍛錬場。本日もたくさんの罠解除士が鍛錬を行なっている。13期の罠解除士である森下と宮本 紳、前島 瑠衣は朝から一緒に鍛錬を行なっており、現在は罠解除装置のレベル8に順番に挑んでいるところである。
「あれ、解除できそう?」
「チッ」
近くでこの状況を見ていた前島がいつもとは違う雰囲気を感じて期待を込めた言葉を発し、森下が吹っ飛ぶのを今かいまかと待ち構えていた宮本は思わず舌打ちをした。この後しばらく森下は解除に集中し、程なく見事解除に成功した。
「森下くんおめー」
「悔しいが認めざるを得まい」
解除装置の前で大きく息を吐いている森下に近づきながら前島が祝福の言葉を述べ、宮本も解除できたこと自体は素直に認め、賞賛の意を示す。
「サンキュー」
それに対して、森下は軽く返事をし右手を上げたので、前島と宮本はハイタッチをした。
「結構時間かかったな」
本日レベル8を成功するまでの経緯を思い出しながら森下が言葉を漏らす。13期の罠解除士としては圧倒的な才能を持つと言われ、罠解除装置も同期と比較してかなり早いペースでクリアをしてきた。だが、レベル7の解除にかなりの時間を要し、レベル8の解除ができない間に同期の宮本と前島にレベル的には追いつかれてしまっていたのである。流石にレベル8を先にクリアされることは無かったが、実力差はほとんどなくなっていると言っても良いであろう。
「森下が成功できたから俺も成功できる気がする」
そう言葉を発して、宮本が罠解除装置へ向かい、レベルを8に合わせて起動させる。目の前に罠が出現したので大きく息を吐いて集中を始める。
「男塾ばんざーい」
残念ながら解除が出来なかった宮本は両手を大きく上に上げた姿勢で後方に吹っ飛ばされたのである。