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1999年11月27日(土)

【道:前田 法重・中島 一州・原田 公司・大塚 仁・中尾 智史・本田 仁】
「そういえば浦和レッズが降格になりましたね」
「Vゴール決めて嬉しくないのは始めてみましたよ」
 思い出したように言葉を漏らした原田 公司の言葉を聞いて、中尾 智史が感想を述べた。ここは居酒屋『道』。本日もたくさんの客で店内は大盛況である。前田 法重と重臣たちもいつものように飲み会を開始し、すでに大量のアルコールを消費している。プロサッカーリーグのJリーグは今シーズンからJ1下位2クラブとJ2上位2クラブが入れ替わる事になった。これまで固定だったJ1チームがJ2に落ちる可能性が出たことで、優勝争いだけではなく、残留争いも注目される事になる。そして、今期成績が低迷していたベルマーレ平塚が1クラブ目の降格を決め、もう1クラブを決める争いが激化していたのである。その3チームとは浦和レッズ、ジェフ市原、アビスパ福岡の3チームであり、ほぼ同じ本日15時過ぎの時間に最終試合が開始された。この時点での勝ち点はレッズが26P、アビスパが28P、ジェフが25Pである。ジェフは90分勝利で3Pを加えても28P止まりなので、レッズは90分勝利、アビスパは引き分け以上で無条件で残留となる。ジェフが延長戦勝利で2P加算の27Pの場合は、アビスパは無条件、レッズは延長戦勝利以上で残留となる。また、ジェフが引き分けで26Pの場合はレッズが引き分け以上で残留となる。ちなみに、得失点差についてレッズが他の2クラブよりも4点下回っているので、最終的な勝ち点が並んだ場合はレッズが降格となる。試合は前半は3試合ともあまり動きはなく、レッズ対サンフレッチェは0−0、Fマリノス対アビスパは1-0、ガンバ対ジェフは0−0で折り返している。後半に入るとジェフが1点を先制し、状況が大きく変化する。もしこのままジェフが90分勝利して勝ち点3を加えれば勝ち点が28Pとなり、得失点差を考えればかなり有利な状況になる。レッズは90分勝利の3Pを取れれば29Pとなるが、それが絶対条件となるのだ。またレッズが90分勝利で29Pとなった場合、アビスパはもし負けて勝ち点0だと28Pのままで得失点差でジェフを下回り降格してしまうのだ。後半戦はこのまま硬直した試合が続き、Fマリノスが2点目を取った以外の点数の動きはなかった。すなわちレッズは延長戦、アビスパは敗戦、ジェフは90分勝利ということである。この時点でジェフは勝ち点28P、アビスパは勝ち点28P、レッズはもし延長で勝利しても勝ち点が28Pにしかならず、ジェフ、アビスパとの得失点差で降格が決定してしまっているのだ。この後レッズ対サンフレッチェは延長後半までもつれ込み、最後はレッズ福田のVゴールによってレッズが勝利する。しかし、J2降格が決まってしまっているのでレッズの選手達はVゴールを決めたが、全く喜べなかったのである。
「でも最後勝ったのは次に繋がるよ」
「すぐ帰ってくるでしょう」
 降格が決まっても最後まで頑張って戦った浦和レッズに中島 一州がエールの言葉を述べ、大塚 仁も期待を込めて発言した。この後はサッカーの話題からいつものつまらない話題に移行していく。このタイミングで本田 仁は全員分の追加の飲み物とつまみを気付かれないように自然に注文したのであった。

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