1996年8月5日(月)《BN》
【新迷宮:黒髪てへトリオ部隊】
「これは・・・斉藤一?」
「にしてもでけーな」
鏡から出現してきた亜獣を見て前田 法重が言葉を発した後で、原田 公司が思わず感想を叫んだ。ここは新迷宮。黒髪てへトリオ部隊は本日も地下6階の鏡の部屋を訪れている。いつものように大塚 仁が罠を解除し、亜獣が出現したのであるが、出現した亜獣はイケメンの戦士であり、おそらく斉藤一なのではないかと思われる。ただイメージよりもかなり大きい姿をしており、静かに冒険者達を見つめている。
「絶対殺すリスト系が来ると思ったー」
「斉藤一にそんな話なかったですよね」
最近の傾向として前回の道の飲み会で話題になったキーワードにまつわる亜獣が出てくることが多く、前回の飲み会のベストキーワードは間違いなく殺すリストなので、大塚はそこを一点読みしていたが、どうも違うようであり、本田 仁も同じ読みをしていたらしく、読みが外れたことを口にする。
「とりあえず倒すぞ」
「TNT爆発」
「無効」
戦闘開始の合図を前田が発したタイミングで本田がTNT爆発、中島 一州が無効を唱える。戦闘開始を認識した亜獣は剣を構え、戦士3人に近づいてくる。それを迎え撃つのはまず原田なのはいつもの通りである。
「ど・・・ぐは」
あまりもの早い剣筋に原田は反応することができず、変な喰らい方をする。それをみて前田と中尾は一瞬原田を心配したが、すぐに気を取り直して亜獣に目を向ける。
「原田は下がって回復。中尾、踏ん張るぞ」
この言葉を聞いて、原田は何とか自分の足で後方に下がり、中島に回復を依頼する。亜獣は相変わらず攻撃が素早く、前田と中尾もギリギリの戦いを続けている。
「TNT爆発」
2発目のTNT爆発を本田が詠唱する。このタイミングで一瞬怯んだ亜獣の動きを見逃さず、前田が必殺のスペシャルローリングサンダーを放つ。だが今はまだだめだ。
「くっそ。原田、早く戻ってこい」
「もうちょい待ってください」
必殺技を外してしまい、状況が変化しなかったので、原田に急いで復帰するように前田が叫んだが、まだ回復途中のようである。ただ、亜獣は2発のTNT爆発を喰らっているので、流石に少しダメージが蓄積しているようであり、初めに比べると動きが重たくなっている。
「何とか・・なるかな」
亜獣の剣さばきに対応できるようになった前田は言葉を漏らし、少しずつ切り返しの精度を上げている。こうなると亜獣も前田に集中しなければいけなくなり、中尾がフリーの状況となる。
「TNT爆発」
本田が3発目のTNT爆発を唱え、これでかなり動きが重くなった亜獣に前田と中尾が猛攻を加えて、ほどなく亜獣は倒れ伏した。
「物質回収します。強かったすね」
こう話しながら大塚が物質回収に向かい、前田と中尾は中島に回復を依頼する。そして少し場が落ち着いたところで本田が口を開く。
「さっきのはビッグ斉藤ですね」
「そっからか。それはわからんな」
先程の亜獣の正体を聞いて、前田は正直に出典が難しいことを認めたのである。
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