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2024年12月17日(火)《GB》

《周りの気配に敏感な人っていますよね。私は鈍感なので全く感じません。気づかない方が幸せなこともある》
【立田山:黒瀬 舞人・米満 唯花】
「舞人くんどうかしたの?」
「いや、何でもない」
 声をかけてきた米満 唯花の言葉を聞いて、黒瀬 舞人は平然と返事を返した。ここは夕方過ぎの立田山。気温が非常に低く、散歩をする人も少なめである。いつものように黒瀬と米満は夕方の鍛錬を行うために立田山にやってきており,先に自分の予定鍛錬を終えた米満は、まだまだ自分を虐め抜いている黒瀬の鍛錬を静かに見守っていた。いつもと同じ鍛錬メニューを同じ動きで行っており、その動きをのんびりと眺めていたが、動作の切れ目切れ目で何か周りを気にして目線を動かしていることに気づく。そしてほどなく黒瀬は自分のメニューを終えて大きく肩で息をしながら米満の場所まで歩いてきて、ペットボトルを手にしたタイミングで米満が声をかけたのである。
「何か周りを気にしているみたいだけど」
 疑問に思っていることをはっきりと米満が質問し、それに対して黒瀬が正直に返事を返した。
「はっきりとはわからないんだけど、何か視線を感じるんだよね」
 こう話した瞬間に黒瀬は山頂方面に向かって全力で走り出す。そして100メートルほど走った場所で止まり、そこから歩いて戻ってきた。
「気のせいなのかなあ」
 気配を感じてその方向へと向かったのだが、途中でその気配が消えたのを感じる。気配の感じ方が間違っているのかもしれないが、気になって仕方がないのである。
「舞人くんのストーカーとかだったりして」
「いや、だったら恐怖の極みだわ」
 少し笑顔を浮かべて米満が発した言葉を黒瀬が否定する。もし先程の気配が自分のストーカーだとして、気配を出したり消したり出来つつ、絶対に見つからない能力を持っているとするならば、正直恐ろしいとしか言いようがない。
「でももしかしたら唯花のストーカーかもよ」
「私をストーキングする奴がおるかね。逆にちょっと嬉しいかも」
 可能性として考えられることを黒瀬が口にし、それに米満が正直な感想を返したのであった。

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