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1996年10月3日(木)《BN》

【僧侶鍛錬場②:古川 美穂・金尾 秀文・田畠 究】

「まだ厳しそうかなー」
 受験生達を順番に見て回りながら古川 美穂は思わず言葉を漏らした。ここは僧侶鍛錬場②。2次試験3日目であり、本日も試験開始から2時間程度が過ぎている。現状指先から光が発現しそうな対象者はおらず、おそらく本日中にクリア者が出るのは難しい状況のようだ。ちなみに先程の休憩時間に聞いた話だと、罠解除士で1名課題をクリアした者がいるとのことである。
「できる気がしねえな」
「諦めたらそこで試合終了だよ」
 光が発現せずに多少イラついている金尾 秀文が発した言葉を聞いて田畠 究が声をかける。昨日から始まった実技試験であるが、指先に光を発現させる集中をずっと行っている。まったく何の変化もない指先をずっと見つめているのは気分も滅入るし、本当にできるのかどうかの葛藤と戦わないといけない。周りの受験者を見ても多少イラつきを表に出している者もいるようであり、そのような場合は少し休憩を挟んで気持ちを落ち着かせているようだ。ところで金尾と田畠はもともと知り合いではなく、おとといの説明会の際に近くの席に座り、お互いに趣味が似通っているので仲良くなっている。なお、その趣味とはパソコンゲームであり、2年ほど前に発売された“闘神都市Ⅱ”という作品の話題で盛り上がったようだ。ちなみに、このゲームは俗にいうエロゲである。
「それでは残り30分になりました。集中して成功できるように頑張ってください。ちなみに罠解除士で1名クリアしたらしいですよ。皆さんも負けてられません」
 大きな声で古川が受験者全員に声をかけ、受験生達は真剣な表情を浮かべて鍛錬を継続する。真面目に課題に向き合っている姿勢は感じるが、まだ光は発言しそうにないので、本日中にクリア者を出すのは無理だと諦めている古川であった。ちなみに本日クリアしたのは罠解除士の1名だけで有り、その対象者は新藤 麻乃である。

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