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1999年6月18日(金)

【AXIS:桑野 絵梨花・富田 穂樽・富田 さやか】
「キャハ、キャハハ」
「穂樽ちゃんかわいいー」
 目の前で富田 穂樽がおもちゃを操作しながら笑っているのを見て、桑野 絵梨花は思わず声を上げた。ここはゲーム&喫茶『AXIS』喫茶部。夕方過ぎの時間であり、お客はまばらな状態である。本日も小学校が終わるとまっすぐに『AXIS』にやってきた桑野であるが、いつものように喫茶部でおやつを食べ、その後ゲーセン部に移動しようとしたところ、キッズスペースに穂樽がいることに気づいて、一緒に遊ぶことにしたのである。ちなみに桑野は現在小学4年生、穂樽は今年2歳である。
「あら、絵梨花ちゃん穂樽と遊んでくれてるの。ありがとうね」
「今日は珍しく穂樽ちゃんいたので一緒に遊んでます」
 てっきりゲーセン部へ向かったと思っていた桑野がキッズスペースにいるのに気づいた富田 さやかはお礼を述べる。すると桑野はこのように返事をして軽く頭を下げた。穂樽は普段は一緒の建物に住んでいる大塚 まことが同い年の娘である大塚 瀬名と一緒に面倒を見てくれている。ただ、今日は大塚が実家に帰らないといけないらしく、穂樽を預かってもらうことができなかったのだ。そこで、本日穂樽はほぼ1日、喫茶部のキッズスペースで遊んだり昼寝をしたりしているのである。
「何かこうして見てると、絵梨花ちゃんはお姉さんみたいだね」
「そうですか、私妹いないので、穂樽ちゃんみたいな妹が欲しかったです」
 2人のあまりもの微笑ましさにさやかは思わず声をかけ、それに桑野は正直な感想を返した。桑野は女の子2人姉妹の妹なので、妹が欲しかったというのは正直な感想なのであろう。この後、桑野は結局帰る時間までゲーセン部にいくことはなく、このまま喫茶部のキッズスペースで穂樽と遊んでいたのであった。

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