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1999年7月26日(月)
【熊大第1迷宮:人類補完計画部隊】
「いよいよクリア出来そうだわね」
「あと1回だけチャレンジして良いですか」
先程の戦闘を眺めて感じたことを前野 諭子が口にし、それに絶賛回復施術中の高宮 太輔が言葉を返した。ここは熊大第1迷宮。人類補完計画部隊は本日も地下9階の筋肉の部屋を訪れている。先週までに前野と雨宮 英利香は筋肉をクリアしており、本日は高宮が既に筋肉戦を3戦行い、現在は金尾 秀文に回復を行ってもらっている。とはいえ、喰らったダメージはあまり大きくなく、回復にかかる時間もかなり短くなっている。筋肉戦の始めのうちは物質回収に向かう長内 泰大が、回収を終えて戻ってくるのが早かったが、現在は回復が終わってもしばらく戻ってこない状況だ。戦った感じから高宮もそろそろクリアになっても良い頃だと感じており、体力的には結構厳しいが、もう1度挑戦したいと考えているのである。ちなみにクリアした場合は戦うことなく筋肉は消滅するので、戦闘を行う必要がない。ただ、クリアではなかった場合はまた筋肉戦を行わないといけなくなり、クリアできるかどうかはその次の彫像移動に持ち越されるのである。
「これって倒した時にクリアかどうかわかる方が楽だよね」
「ワンチャンクリアと思ってチャレンジすると結構厳しかったりするからね」
自分はボス戦を行うわけではないが、後方で見ていて感じていることを鬼塚 茉莉花が口にし、それに物質回収から戻ってきた長内が言葉を続けた。迷宮の仕組みがこうなっているから言っても仕方がないことではあるが、確かに戦闘終了後にクリア可否が判断できた方が便利なのは間違いないであろう。
「じゃあ、言って来ます。クリアを期待しててください」
こう言って高宮はカエルの彫像へと向かい、いつものように移動させる。すると煙が立ち上り筋肉が出現した。
「待っていたぞ。高宮」
これを見て大きくため息をついた高宮であったが、気持ちを切り替えて戦闘を開始する。体力的にはだいぶ厳しい状況だったが、3戦戦っていることで感覚は非常に鋭くなっており、いつも以上にダメージを喰らうことなく筋肉を倒すことができた。この後は軽く喰らったダメージの回復と、長内の物質回収を行い、どうするかを検討する。そして、体力的にギリギリもう1戦は行けそうとのことで高宮はまたカエルの彫像を移動する。
「死兆星を見たことがないのであればまだわしと戦う時ではないということだ」
ついに筋肉をクリアできた高宮は大きく息を吐いて後ろを振り向く。すると部隊のみんなが全員で祝福を行ってくれており、それを見て少し照れ笑いをしながら、みんなの場所へと移動したのである。