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1997年1月21日(火)《BN》

【上通り:本田 仁・高島 奈月】

「あ、本田さんだ。お疲れ様ですー」
「あ、お疲れ様です」
 まるぶん書店から外に出たタイミングで高島 奈月に声をかけられた本田 仁は冷静沈着に返事を返した。ここは『上通り』。平日の午後の時間であり、道ゆく人の人数はまばらである。本田は午前中鍛錬場で鍛錬を行った後、『AXIS』喫茶部でランチを食べて、その後は本屋巡りのために街にやってきたのである。いつもの様にまずは銀座通りの『紀伊國屋書店』をチェックし、その後は上通りに移動して『まるぶん』で結構な時間本を見ていたのである。そしてある程度満足して次にむかうところを高島から声をかけられたのである。
「本田さん、本屋巡りですかー。何か面白い本ありました?」
「そうだね。面白い本はまああるよ。何冊か買ってるし」
 こう話しをする本田は年季の入ったバッグを持っており、その中に購入した本が入っている気配を感じられる。
「そう言えば本田さん1人なんですか?」
「そうだね。今は1人だよ」
 近くに知っている人が見当たらないことから質問した高島に、本田は相変わらず冷静に返事を返す。これを聞いて少し嬉しい表情を浮かべた高島は思い切って提案してみる。
「もしこの後暇なら一緒に遊びませんか?私も1人で暇なんですよー」
 これを聞いて本田は頭の中でどうするかを検討する。この後の予定は『長崎書店』に寄って、黒髪に帰るかパチンコでも打ちに行くかと考えていた。暇ではないが暇といえば暇なのである。それにしても高島は1人で暇だと言っていたが、上通りで何をしていたのだろうか。暇だから上通りに来た。でも暇というのであれば暇つぶしのレベルが余りにも低すぎである。この様なことを瞬時に心配した本田だったが、それよりもこの後どうするかを考えて返事を返した。
「特に予定はないよ。何かする?」
「じゃあボウリングにでも行きましょうー」
 こう叫びながら高島が笑顔を浮かべたので、本田は軽く息を吐いた後で頷き、一緒に通町筋電停近くにある『大劇ビル』に向かったのであった。

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