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1999年5月28日(金)

【罠解除士鍛錬場:富田 剛・宮本 紳】
「おう、そうか。めでたいな」
「めでたいですけどね」
 少し驚いたような感じで発した富田 剛の言葉を聞いて、宮本 紳はなんとも言えない表情で言葉を返した。ここは午前中の罠解除士鍛錬場。本日もたくさんの罠解除士が鍛錬を行っている。本日は金曜日であり大塚 仁が探索を行っているので、富田が様子を見にぶらっとやって来たのである。もちろんお店のゲーセンはバイトが見てくれている。やって来てから気づいたが、20期生が入って来てから初めて鍛錬場に来たようだ。なので数人見たことないメンバーが鍛錬を行っている。とはいえ見ず知らずの男性に急に話変えられるのも驚くと思い、とりあえずは声をかけに行くのをやめ、なんとなく罠解除装置の近くで佇んでいた。すると宮本が声をかけて来たのである。そこで富田はいつかは最強いつでも最強部隊の藤井 淳紀と福永 菜月が結婚することを聞いたのである。
「めでたいけどあれだな。引退するのかな」
「いや、明確にいつまでってのは聞いてないですけど、まあ少なくとも菜月さんは引退しそうですよね」
 軽く発した富田の質問に対して、宮本は寂しい表情で返事を返した。宮本は今でこそ罠解除士のベテランとして、後輩の育成なども行っているが、元々はかなりの人見知りであり、気持ちを許せる人が周りにいなかった。そこでそんな自分を変えたいと思い、一念発起して冒険者を受験し、罠解除士として合格する。だが、そんな宮本にとって部隊に入るというのは大変なことであった。そんな中、いつかは最強部隊がたまたま隊員を募集しているのを見つけて、決死の覚悟で申し込んだのである。結果、宮本はいつかは最強部隊に入ることが出来て、現在に至るのである。いつかは最強部隊のメンバーは宮本に対して非常に優しく接してくれ、特に福永は見た目は妹なのだが実の姉のように優しく接してくれている。正直今の宮本があるのは福永のおかげであると言っても過言ではないのである。その福永が結婚することで、祝福する気持ちももちろんあるが、何か素直に喜べない自分がいるのである。そんな宮本に軽く声を変えて肩をポンポンと叩いた後、大きく頷くのであった。

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