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1998年6月2日(火)

【熊大生協:井上 貴志・栗原 慎・坂上 直輝】
「じゃあ現実ナックル系の武器を使用するのは可能ということだな」
 井上 貴志は栗原 慎の話に対してこのように述べた。栗原は今日の午前中の鍛錬の後、生協の中にある武器製造所へと向かった。そこでは冒険者達の武器や防具の製造、修理、精錬が行われている。そこでの窓口になっているのが坂上 直輝という修理工で、武器の注文や要求等をじっくりと聞いてもらえる。栗原は坂上にナックル系の武器の製造と、それによる迷宮探索が可能かどうかを質問してみた。
「へえ、格闘で亜獣をやっつけるってわけかい。それはなかなか斬新な発想だな。で、質問に答えると、まずナックル系の武器の製造はそう難しいことではない。まあ剣などとちがって指の太さや手の大きさが個人個人で異なるので、完全オーダーメイドにはなるけどね。ただ、それで迷宮探索が可能かどうかというのは前例がないからなんとも言えないね。動きを身軽にするために防具も最低限しか装備できないだろうし、厳しいのは厳しいかもしれない」
 栗原はこの言葉を聞いて、とにかく武器の製造は行ってくれるということを確認できただけで十分だった。さっそく栗原は両手のサイズを測ってもらい、ナックルの試作品を作ってくれるように頼んだ。3日もすれば5 パターンぐらいの見本が出来るということである。
「ということで、結局ナックル系で戦うことに決めたから、明日からの鍛錬はもうナックル一本で行くからな」
「了解。とりあえず剣を持った俺の体に触れることができるようになるまでは猛特訓やな」
 そういって井上と栗原は目の前に残っていたカツカレーの最後の一口を食べ終えた。

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