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1997年1月27日(月)《BN》
【北食2階:谷口 竜一・大塚 仁】
「あっそ、おめでとう」
「全然驚かないんやな」
淡々とした返事を返した大塚 仁に対して、谷口 竜一は笑いながら返事を返した。ここはレストラン『北食2階』。お昼過ぎの時間であり、たくさんの客で店内は賑わっている。大塚は午前中第2迷宮鏡の間の探索を行った後、部隊のメンバーと別れてここにやって来たのである。予定では本田 仁も一緒にくる予定だったが、何か急用ができたらしく、探索後はそそくさとどこかへ行ってしまったのだ。なので、谷口と2人だけでの食事となってしまっているのである。
「それでお相手は?」
「桜井さん」
何となく想像はついているが、一応相手が誰かを尋ねた大塚に、谷口は完結に返事を返す。これは大塚の予想通りであり、はっきり付き合っているという話は聞いてなかったが、そうではないかとの噂はちらほらあったのである。
「結婚式はするの?」
「大塚たちほど盛大にはしないけど、前田さんの結婚式が終わった後ぐらいで考えてる」
昨今結婚しても式を上げないカップルもいるので、大塚がその点を質問したが、結婚式自体は実施予定だと谷口が回答する。時期は前田 法重の結婚式の後ということなので、4月以降ということなのだろう。
「そっかそっか。今年は結婚式ラッシュやな。多分原田さんとか中尾君もそろそろだからな」
「俺たちもそういう年になったってことやな」
注文した料理が運ばれて来たので、それを受け取りながら大塚が感想を口にし、それに谷口が感慨深く返事を返す。谷口と大塚が出会ったのは熊大の某サークルRに入部したタイミングである。すなわち年齢的には19歳であり、それから3期冒険者としても一緒の時間を過ごしている。現在26歳になっているので、出会ってからは7年近く経過しているのだ。今は谷口は冒険者を引退しているが、熊大生として、サークル仲間として、冒険者として過ごした7年間は実にあっという間だったと感じるのである。
「ところで今日本田は?」
「わからん。何か急用って言ってた」
「何やろな。まあ俺の結婚のことみんなには大塚から伝えといて」
一応約束をしていたのにこの場にいない本田について谷口が口にし、大塚はわかる範囲で回答する。それを聞いた谷口は軽くため息をついて、食事を食べ始めるのであった。