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1999年8月18日(水)
【罠解除士鍛錬場:前島 瑠衣・村田 恋歌・市井 小雪】
「そういえば笹井くんがレベル3を成功させたって話よ」
「本当っすか、また負けた・・・」
先ほど聞いた情報を前島 瑠衣が口にすると、村田 恋歌がため息をつきながら言葉を漏らした。ここは午前中の罠解除士鍛錬場。本日もたくさんの罠解除士が鍛錬を行っている。今日も朝から師匠の前島と弟子の村田、市井 小雪は一緒に鍛錬を行っていたが、先程の休憩時に前島が沖本 蓮香から聞いた話によると、笹井 紀夫が罠解除装置のレベル3をクリアしたとのことである。19期の罠解除士の中ではカードキャプター部隊の高村 佳子が能力的に少し抜けており、お盆前にすでにレベル3の罠解除に成功している。争点はいつも2番手争いであり、残り4人の実力はほぼ拮抗しているので、誰が先に成功してもおかしくない状況だったのである。だが、レベル2解除と同様に笹井にレベル3の解除も先を越される結果になってしまったのだ。
「先輩。どんまいです」
落ち込んでいる村田を慰めようと市井 小雪が声をかける。それに軽く反応は見せてくれたが、やはりショックは大きいようである。
「そんなに落ち込んでてもしょうがないわよ。覆水盆には返らないんだから」
見かねて前島も声をかける。自分も長年冒険者をやっているが、他人との比較や、迷宮内でのミスなどによって落ち込むことはたくさん経験して来ている。そこで学んだことは、起こっている事象は変えようがないので、落ち込んでても仕方がないということだ。ただ、これは長年の経験によって習得できたことではあるので、これを村田に理解しろというのは少し無理があるのもわかっているのである。
「ちょっと休憩しましょうか」
雰囲気が良くないので一旦休憩を挟むことにする。その間に前島と市井が励ましの言葉をかけ続けたので、何とか村田の気持ちも少し前を向く。そして休憩明けに罠解除装置のレベル3にチャレンジすることにし、それを見事に成功させた村田は完全復活するのであった。