1999年8月23日(月)
【森の小径:宮崎 桃・飯島 桜・福永 菜月・島田 笠音・前野 諭子・雨宮 英利香】
「まだ悩んでるんだよね」
ため息をつきながら福永 菜月が言葉を漏らした。ここは喫茶店『森の小径』。お昼のランチタイムは少し過ぎているので、店内は落ち着いた雰囲気である。13期生の戦士である宮崎 桃と飯島 桜、福永、島田 笠音は朝から一緒に戦士鍛錬場で鍛錬を行っており、そこで話をする中で、甘いものを食べに行きたいという話になったので、鍛錬後に『森の小径』でランチとパフェを食べることにした。そして鍛錬が終わって移動している最中に、本日の迷宮探索を終わらせて帰宅中の14期生前野 諭子と雨宮 英利香と遭遇したので、2人も誘うことにしたのである。6人は一緒に『森の小径』まで歩き、店内に入ると6人がけのテーブルを確保する。そしてまずはお腹を満たすために全員で本日のパスタセットを注文した。そして料理を待っている間に、福永の結婚の話になり、先程の言葉が漏れたのである。
「当初は来年の2月で一緒に引退しようかって話だったけど、最近別に引退しなくても良いんじゃって感じになってて」
「え、良いんだったら良いんじゃないですか?」
悩みを浮かべた表情の福永の話を聞いて、飯島が返事を返す。結婚したら冒険者を引退しないといけないという法はなく、現に男性冒険者の中には結婚後も冒険者を続けている者もいる。ただ、冒険者の歴史の中で、結婚後も冒険者を続けたという女性は今のところいないのである。
「子供も欲しいんだよね」
表情を変えずに福永は悩みを口にする。これを聞いて宮崎が思いついたことを口にする。
「えー、そんなに急がなくでも良いじゃないですか」
「桃ちゃん。良く忘れるみたいだけど、私は桃ちゃんよりも9つ年上なんだよ」
見た目が非常に若く、自分と同い年ぐらいにしか見えないので、宮崎は福永の年齢を勘違いすることが多い。ただ実年齢は30歳をとうに過ぎているので、なるだけ早く子供が欲しいと思っているのである。
「子供が出来たら引退とかでも良さそうな気がしますが」
「というか引退してほしくないんですよ私ら」
このように前野 諭子と雨宮 英利香が発言したタイミングで店員がパスタセットを運んできた。この後はしばらく食事を楽しむことになるが、福永はずっと悩んでいる表情を浮かべているのであった。
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