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1999年7月30日(金)

【罠解除士鍛錬場:宮本 紳・中津 明日菜・堀越 希巳江】
「良し、行ってみるか」
「頑張ってくださいー」
 罠解除装置に向かっていく宮本 紳の後ろ姿を見つめながら、中津 明日菜と堀越 希巳江は明るい声で声援を送った。ここは午前中の罠解除士鍛錬場。本日もたくさんの罠解除士が鍛錬を行っている。朝から弟子である中津と堀越を指導していた宮本であったが、ある程度の時間を鍛錬に費やした後で、堀越が罠解除装置の高レベルを解除しているのを見たいと師匠の宮本にお願いしたのである。これに対して宮本は断る理由もなかったので、了承し、現在罠解除装置に向かっているのである。ちなみに現在宮本は罠解除装置のレベル11までをクリアしている。なので、安全にいくのであればレベル11の罠を出現させて、それを解除するということになるが、先週森下 翼が罠解除装置のレベル12をクリアしたので、自分もそろそろクリアしたいと考えていたところである。ただ、まだ一度もレベル12を試したことはなく、自分の考えではレベル12をクリアできる実力を保持していると思って入る。だが、もし解除に失敗すると吹っ飛ばされてしまうので、それを弟子達に見せるのは勘弁して欲しいところである。
「さあ、どうしますかな」
 装置の目の前にたった宮本はこう言葉をもらす。どうするかとはもちろん罠のレベルを11にするのか12にするのかであり、言葉には悩んでいる節が見えるものの、実はほぼほぼ決心していることである。
「じゃあ行きます」
 こういって宮本は罠解除装置のレベルを12に設定し、罠を出現させる。森下が解除にチャレンジしていたのを見たことはあるが、実際目の前で凝視するのは初めてである。色形や大きさはレベル11のそれとほとんど変わりないが、罠から発するプレッシャーは比べものにならないぐらい大きい。一瞬気負けしそうになったが、自分を信じて宮本は罠の中に両手を差し込む。そして沈黙の中宮本は両手を細かく動かしながら、集中を続ける。すると罠は次第に小さくなり、最終的には罠の解除に成功した。
「ふう、あぶなかった」
「すごい!」
「おめでとうございます!」
 目の前で実際に行われたレベル12の罠解除を見て、中津と堀越も興奮の声を上げる。それに宮本は右手を軽く上げることで返事を返し、思っていた以上に精神を使ったらしく、歩いていると少しよろけたのでベンチに座って、スポーツドリンクを口にしたのである。

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