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1999年5月31日(月)
【AXIS:本田 仁・富田 剛】
「ういー、絶対ナリタトップロードが勝てたはず。あれは絶対八百長じゃ」
「先週と全く同じセリフでわろす」
先週と同じような雰囲気で同じようなセリフを吐いた富田 剛の言葉に、笑いながら本田 仁が返事を返した。ここはゲーム&喫茶『AXIS』ゲーセン部。お昼過ぎの時間であり、店内はまったりした雰囲気になっている。先週の月曜日と同様に、午前中は鍛錬を行い、そのまま『AXIS』にやって来た本田であったが、先週テンションが上がりまくっていた富田に対して、ダービーの結果を質問してみたのである。すると先週と全く同じような返事が返って来たので思わず笑ってしまったのである。
「明らかにジョッキーの腕の差が出てしまった感じ」
「そうなんですね」
あまり競馬に興味がない本田は昨日のダービーも見てなかったので、今わかっているのは富田の馬券が外れたということぐらいである。ただそんな本田でも武豊ジョッキーのことは流石に知っているので、騎手の腕の差という言葉を言われると納得せざるを得ない。
「直線は3頭の叩き合いで、結果追い出しを我慢した順に1着2着3着になったんだよね。和田くんも渡辺くんもまだ若いから、我慢ができなかったんだろうね。最後は図ったかのように武さんに差された」
先程自分が言ったジョッキーの腕の差というのを出来るだけわかりやすく富田が説明する。それを聞いてなんとなくではあるが本田も状況を把握できた。
「まあ仕方ないですね。また来週頑張ってください」
こう言って本田はもらったお茶缶を握って、音ゲーコーナーへと移動する。この後富田は別に急ぎではない業務をダラダラと行いながら、頭の中は来週の安田記念のことに思いを馳せるのであった。