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1997年2月19日(水)《BN》
【熊大迷宮:それが1番大事部隊】
「これで終わることにします」
「お疲れ様でしたー」
本日2回目の高澤 卓弥VSペケ戦の後、回収と回復が終わったタイミングで金山 孝介が部隊の探索終了を宣言し、メンバー全員が大きな声で返事を返した。ここは熊大迷宮。それが1番大事部隊は本日も地下8階を訪れて、ボスであるペケ戦を行っている。今月を持って引退を決めているそれが1番大事部隊にとって本日が最終探索日であり、本日の探索が終わることすなわち、部隊としての最後の探索が終わることになる。タイミング的にペケクリアが難しいことは以前からわかっていたので、ペケをクリアして引退というわけにはいかなかったが、地下8階のボスと戦うところまでやってきたこの経験は、今後の人生に何かと生かされるであろうと考えている。
「約3年頑張ったかー。早かったようなそうでないような」
「いろいろありましたよねー」
昔を懐かしみながら大林 愛妃が言葉を漏らし、それを聞いた杉谷 希衣も感想を口にする。右も左もわからない状態で10期冒険者組織試験を受け、合格祝いセレモニーの場で仲良くなったメンバーで部隊を組んだ。それから約3年間、平日は週に1回探索を行い、それ以外の日は休まず鍛錬を行った。元々全員が熊大2回生だったので、今年大学卒業となり、冒険者も引退するのである。
「年に1回ぐらいは集まって忘年会しようぜー」
「年に2回、忘年会と新年会でもいいよー」
引退して離れ離れになっても、年に1度ぐらいは集まって酒でも飲もうと提案する宇田 丈博の言葉に、回数を1回増やして池永 芳実が返事を返す。この後はいや年に3回、いや年に4回と少しずつ数字が増え始め、二桁になった辺りで急にテンションが下がってきたので、下がったテンションのまま迷宮を後にし、部隊としての最後の探索を終えたのであった。