見出し画像

1999年12月15日(水)

【熊大第2迷宮:>>1さん部隊】
「ティリオス!」
 いつも以上に精神を集中して、細川 舞美が呪文を唱えると、足元から無数の光が放物線を描きながら進み、そしてボスである大きな剣を持った亜獣に収束、光が天空へと解き放たれた。
「ティリオスとは・・・まさか・・・あの」
 何かを悟った表情を浮かべたボスはこの言葉を残して消滅していき、これにて第2迷宮地下3階はクリアということになったのである。
「何なんだろうね、ティリオスって」
「良く分からないみたいですよ。って疲れた」
 先程のボスの言葉を受けて宮崎 藍が疑問の言葉を発し、それに細川が答えた後で、体の疲労を訴えた。1995年に本田 仁が初めてティリオスを唱えて、先程のボスを倒すことに成功している。その時からボスは倒される時には同じセリフを発しているのだ。このセリフについて冒険者組織の研究所でもティリオスという呪文の正体についていろいろと研究が行われているが、今だに“まさかあの”以降に続く言葉が何であるかは断定できていない。ただ現時点でティリオスは魔術師の最高位の呪文であることは間違い無いので、そのことを表しているのではないかという意見が現時点の議論の中では支配的である。
「舞美大丈夫?」
 非常に疲れた様子を見て、飯島 桜が優しく声をかける。ティリオスの呪文は非常に魔力を消費し、その消費量はTNT爆発とは比較にならないほどである。あの化け物と評される本田でさえも初めて唱えた時は多少の疲労を感じたという伝説が残っているのだ。細川も一般の魔術師と比べれば比較ができないほどの魔力を有しているが、その細川を持ってしてもティリオスで消費する魔力は、保有する魔力のほとんどを消費してしまうものなのである。
「じゃあ帰りますかね。細川さん瞬間移動出来る?」
 物質回収から戻ってきた森下 翼が声をかけてきたので、細川は瞬間移動を唱えるぐらいの魔力は残っていると判断し、首を縦に振る。そして全員を見渡して問題なさそうだったので瞬間移動の魔法を唱え、迷宮入り口まで戻ったのであった。

いいなと思ったら応援しよう!