別世界では別職種だった件 ホンダ編 第13話(追記)
追記 ジャンヌ山の戦い
「あ、俺はもうやられたんだ、もう死ぬんだ、いや、これは死ぬどころではない。俺の存在ごと消滅させら・れ・・る・・・」
部隊全員の目の前からホンダの体はだんだん薄れていき、次第に消滅していった。
「いやーーーーーーーー」
両手で顔を覆い、サキアはその場にへたれ込んだ。他のメンバーたちもあまりのことに言葉を失っている。
「さて、1人終了。どうするー。その娘を渡すか、全滅するかの2択だよー」
こう言葉を発した額に⭐︎マークがある男は相変わらずの笑顔を浮かべている。
「少し時間を貰ってもいいかな。えっと・・・」
「アスタート」
ハルキシスが提案し、名前がわからないので言葉を詰まらせると、その男は自分の名前を伝えた。
「アスタート。少し相談する時間をくれ」
「5分な」
こう返事があったので、部隊のメンバーは集まり、作戦を考える。
「正直俺にはサキアを渡す以外の方法が浮かばない」
非常にすまなそうな表情でハルキシスが口を開き、その言葉にそこにいる全員が他に対策を持ち合わせていない表情を浮かべる。そのことを感じたサキアは自分を差し出すか、もう一つの可能性の2択があることを全員に告げる。
「私はホンダを愛しています。なので、やらせてください」
決意の表情を浮かべたこの言葉に反対できる者はここにはいなかった。
「では、やりますね」
軽く笑顔を浮かべながらサキアはバッグからあるアイテムを取り出し、何かを唱え始める。アスタートはそれに気づいたが、特に反応することはなかった。サキアが唱え終わると目の前に煙が立ち上り、目の前にある男性が出現した。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン」
その男はそのように叫んで、サキアを見つめて笑顔を浮かべた。周りのメンバーはその男性の額を見て驚く。そこには“R”の文字が刻まれていたのだ。
「リッチマン」
息を吐くようにリンドがその男性の正体を述べる。この男性の職業はリッチマンであり、お金さえあればどのような望みも叶えられるというチート能力を持っているのだ。その男性はアスタートに気づかれないように背中をむけたままでサキアに話始める。
「私を召喚したということは私に仕える覚悟が出来たということだね」
それを聞いて、首を縦に振る。それを見てリッチマンは非常に満足な表情を浮かべて言葉を続ける。
「願い事は何になるかな」
それを聞いて、大きく息を吐いた後で口を開く。
「2つあります。1つはさっきアスタートに消滅させられた仲間を復活させて欲しいです」
少しだけリッチマンは難しい表情を浮かべたが、それには気にせずにサキアは言葉を続ける。
「あの男を元の世界に返して欲しいです」
そう言ってアスタートに視線を向ける。それで全てを理解したリッチマンは少し考えた上で言葉を発する。
「3年だな」
そう言ってサキアを見つめたリッチマンだったが、サキアが首を縦に振ったので、契約が成立したことを理解する。
「では契約成立だ」
そういってリッチマンはアスタートの方向に体を向ける。その瞬間アスタートもその男性がリッチマンだということを悟ったが、反応が一瞬遅れてしまい、アスタートはこの世界から追放されてしまった。
「1つ目終了。もう一つだな」
そういってリッチマンは何かを念じるような仕草をしだす。すると何もない空間からホンダが現れてきた。それを見て、サキアの目から大量の涙が流れ出す。
「ホンダ」
そう言ってサキアは復活したホンダの体を抱きしめる。抱きしめた瞬間その体には命があることも感じることができた。サキアはその事に喜びを感じながらも、自分がしないといけないことも理解できている。
「リンド」
サキアはリンドを呼び寄せて、座らせる。そしてその膝にホンダの頭を置いた。リンドはあまり状況を理解できていなかったが、いうがままにホンダに膝枕をしている。
「この状況を説明します」
大きく息を吐いた後サキアがこのように口にしたので、全員が注目する。
「この方はルクサール様と言って、リッチマンになります。以前少し付き合いがあり、私を非常に気に入ってくれていました。何かあったら助けてくれるという約束をしていたので、今回助けてもらいました」
何と無くではあるが、今の状況を全員が理解する。
「先ほど私はルクサール様にお願いを2つ叶えてもらいました。リッチマンが願いを叶えるには莫大な金額が必要です。先ほどの2つの願いもかなり大掛かりな願いだったので大金が必要でした」
真剣な表情でサキアが話を続ける。
「一旦先ほどの金額はルクサール様に出してもらった状況になってます。なので私はそれを払わないといけません」
話を聞いている全員が理解しようと必死である。
「ただ、そのような金額は払えないので、私自身の時間を売る事にしました。なので、私はこれから3年ルクサール様に仕えます」
そう言った瞬間にそこにいる全員がサキアが全てかぶるのはおかしいと感じる。この状況を好転させる方法はあれしかなかったのだし、であれば、その対価は全員で払うべきである。
「では私はルクサール様と共に行きますね。皆様ご機嫌よう」
軽く涙を浮かべてこう口にしたサキアはルクサールと共に消滅した。そのことに対して誰も納得はいっていなかったが、次の瞬間には全員がこのことを記憶から抹消され、気がつくと敵はいなくなり、ホンダは恋人であるリンドに膝枕されている状況となったのである。
画像イメージ:ホンダ&リンド
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