1999年11月3日(水)
【AXIS:水井 華代・富田 剛】
「お疲れ様ですー。喫煙所借りますー」
「いらっしゃい。どうぞー」
店内に入ってきていきなり声をかけてきた水井 華代に対して、富田 剛は笑顔で返事を返した。ここはゲーム&喫茶『AXIS』ゲーセン部。現在朝8時半を少し過ぎた時間であるが、祝日ということで数人のゲーマーがすでに来店している。今やってきた水井は特にゲーマーという訳ではないので、おそらく今日も本田 仁と打ちにいくスロットの待ち合わせをしているのだと予想する。もしかすると本田はもう喫茶部に来ているかもしれないが、少し前に店を覗いた時にはまだ来てはいなかったようだ。そのようなことを考えながら雑務をこなしていると、タバコを吸い終わった水井が喫煙所から戻ってくる。それに気づいた富田がお茶缶を差し出した。
「あ、ありがとうございます」
可愛い笑顔を浮かべて水井が礼の言葉を述べる。それに対して富田はサムズアップで返事を返した。
「本田くん待ち?」
目の前で蓋を開けてお茶缶を飲み始めたので、富田が声をかけてみる。すると一口飲んだ後で水井が返事を返す。
「そうですね。今日も一緒にスロット打つ約束してます。たぶんもう喫茶部に来ているかと」
こう話した後で再度お茶を飲み始め、残りを一気に飲み切ったようである。そして喫茶部に移動しようと出口に向かっていったが、足を止めて振り返り戻ってきた。
「もう一本吸ってきます」
こう言って水井は再度喫煙所へと向かって行った。この後、水井は本田の車でパチンコ屋へと向かうことになるのであろうが、本田は非喫煙者なので本田の車でタバコを吸うのは流石に出来ないと考えられる。そこで吸える時に吸っておくという喫煙者の定石にしたがって2本目を吸いに行ったと予想する富田であった。