1996年11月7日(木)《BN》
【富田ビル:原田 公司・谷口 竜一・大塚 仁・本田 仁・富田 剛】
「へー、結局喫茶店にしたんだ」
「ゲーセンと半々ですね」
まだ何も準びができていないガランとした店内を眺めながら原田 公司が言葉を発して、それに富田 剛が返事を返した。ここは『富田ビル』1階。先日完成した建物であり、3階建ての1階を現在見学中である。もともと富田がゲームセンターを作ると聞いていたので、そこが喫茶店のような構造になっていたことに原田が驚いたのである。ただ、実際は1階は2エリアに分かれており、正面から見て左側が喫茶店スペースであり、右側がゲーセンスペースとなっているのだ。
「鍛錬終わりに是非ご利用ください」
まだ開店は先の話であるが、今のうちに常連客を捕まえておくのは売上に直結するので、富田が商売笑顔を浮かべて全員に言葉をかける。すると軽くため息をついた後で本田 仁が言葉を漏らす。
「鍛錬後に富田さんの料理は食べたくないですな」
「いやいや、本田くん。口ではそう言ってるけど、食べてみたら案外ほれこの通りかもしれんよ」
今までの付き合いで富田が料理をするなどとは聞いたこともないので、その料理に懐疑的な意見だったが、富田はなぜか強気な返事を返した。実際には富田はゲーセン部を主に見て、喫茶部の運営は妻のさやかが担当する。将来的にどうなるかは分からないが、しばらくは富田の料理が店に出ることはない見込みである。
「ゲーセン部も見ます?」
こう言って富田は喫茶部の出入り口から外に出て、ゲーセン部へと移動する。そこには何となくゲーセンの雰囲気のある何もない店舗が広がっていた。
「ゲーセンもおそらく皆さんがメインで使うことになるので、機種とか配置とか考えてくれると助かります」
この富田の声を聞いて、店舗の隅から隅までを見回っていろいろ頭にイメージを浮かべる。そしてこの後は2階の富田の家に移動し、妻のさやかも交えてゲーセンの店舗イメージを話し合うのであった。