2024夏、とうがらしを200㎏収穫してわかったこと
リッカ・コンサルティングのフクダです。
久しぶりの投稿になりました。夏の間は、週2~3回ぐらいのペースで「十色とうがらしファーム」の収穫を手伝っていました。ひと夏、200㎏以上のとうがらしを収穫し続けて気づいたことを書いてみます。
なぜ、とうがらし収穫?
十色とうがらしファームを運営する「合同会社十色」は、2021年に女性3人で立ち上げたスタートアップです。私の仕事は中小企業診断士で、創業時から十色さんの経営のサポートをしてきました。
とうがらしの収穫は自動化・効率化が難しく、特に7月~9月の収穫最盛期は、パート・アルバイト・ボランティア総動員で収穫に明け暮れます。
今年は特に栽培面積が増えて収穫の人手が足りない!と聞いたので「早朝、仕事前の2時間ぐらいだったら手伝えるよ!」と、収穫ボランティアの申し出をしたのです。
野菜の収穫はいわば「栽培の総決算」です。どんなに頑張って栽培しても、収穫のときに傷つけてしまうと商品として販売できません。だから、これまでお付き合いしてきた農家さんに対しては、なかなか収穫作業のお手伝いを言い出しにくい雰囲気がありました。
その点、十色さんは研修生やボランティアの受入れに慣れていて「手伝ってくれるなら誰でもWELCOME!」的な姿勢だったので、収穫のお手伝いを申し出やすかったのです。
朝5時から容赦ない日差し、ぼたぼた垂れる汗
収穫の日は朝4時起床です。虫よけや日焼け止めの準備をして、家からバイクで20分。日が昇る5時前後から収穫をはじめます。
畑は5箇所あり、栽培するとうがらしの種類は約40種。前日のうちに「どの畑でどの品種を何㎏ぐらい」収穫してほしいかをLINEで確認してから収穫します。品種によりますが、1時間で大体3㎏~5㎏のとうがらしを収穫します。
梅雨明けから9月中旬まで、朝7時過ぎには気温30℃を超える埼玉。下を向くとぼたぼた垂れる汗で目が痛くなりますが、とうがらしを触った手で顔を触ると大惨事になるのでガマン。
収穫したとうがらしは収穫用のカゴに入れて畑に保管、あとで十色のメンバーが回収してくれます。
私は体力がないので、作業は2~3時間が限界。7時過ぎには畑を出て、本業であるコンサルティングのお仕事に向かいます。
これを7月から9月まで、週に2,3回程度続けました。1日6~8㎏収穫したとして、ひと夏で200㎏以上は収穫したかな。
これ、本当に同じ品種? 「固定種」「伝統品種」の難しさ
7月にいちばん売れたとうがらしは、今年初めて栽培した「パドロン」という品種でした。パドロンはスペインのとうがらしで、長さ3㎝~5㎝程度の若い実を素揚げして食べます。「ししとう」みたいな感じ。
ところがこのパドロン、ものすごーく収穫が大変だったのです。
パドロンをはじめとして、日本であまり知られていないとうがらしのタネの大半は、日本では普通に流通していません。海外のタネを専門に輸入する業者から買います。いわゆる「伝統品種」とか「固定種」と呼ばれる、昔からある品種をタネとりしたものです。
日本の種苗会社が販売する野菜のタネは、畑一面に蒔いても大体全部同じ形の実ができます。遺伝子操作とかそういうのでなく、厳しい品種選抜をして「同じような実がつくタネ」を揃えているのです。
ところが輸入品種は、同じ品種名で売られているのに、かなり枝葉の形も実も違う品種が混ざっていることがよくあります。写真は「パドロン」のタネを蒔いて収穫できた実。全然違う!
パドロン以外にもいくつかの輸入品種で「キミ、完全によその子だよね?」というとうがらしが混じっていました。場合によっては「同じメーカーの同じ品種なのに、年によってぜんぜん違う見た目だった」り、「他の品種と同じように種まきしたのに、ほとんど発芽しない」品種などもあって、輸入品種を育てる難しさを痛感しました。
売り物の野菜が「完成形」とは限らない
さらに困ったことがありました。パドロンって、本来はピーマンくらいのサイズに成長して、辛くなるとうがらしだったのです。
つまりお客さんが「パドロン」だと思って欲しがっている野菜は、パドロンが熟して辛くなる前の幼果(ようか)で、ちょうどいいサイズの日数は1日か2日。あとは大きくなって辛くなるので売り物にならない。おっそろしく収穫が面倒くさいとうがらしだと分かりました。
辛いとお客様からクレームが来るので、収穫後のパドロンを何度も味見します。形がさまざまなパドロンですから、小さいうちから辛い品種も混ざっています。
十色の選別・出荷スタッフは数百回の「パドロン・ロシアンルーレット」を経て、ようやく辛いパドロンと辛くないパドロンを見分けられるようになりました。
収穫後のパドロンを選別すると、サイズや「辛そう」基準をクリアしたものは半分以下でした。手間と価格が合わない…
ヒザがからい!とうがらし収穫の意外なワナ
とうがらしの草丈は腰から胸ぐらいの高さ。地面にヒザをついて屈んで収穫します。「ハラペーニョ」という肉厚のとうがらしを収穫していると…なんか…ヒザが痛い? いや、熱い! 辛い! ヒリヒリする!
虫食いなどで販売できないとうがらしはそのまま落としてしまうのですが、そのとうがらしをヒザで踏みつけてしまうと、めちゃくちゃしみることが分かりました。ハラペーニョみたいな肉厚のとうがらしは特に…
慌ててワークマンに行き、ひざあてを購入。翌日、畑でその話をしたら「わかるー! ヒザがからいよねー!」そう、とうがらし収穫をしなければ「ヒザがからい」という、一般の人には意味のわからない経験をすることはありませんでしたね。
虫食い、サイズ外…厳しい選別作業
収穫だけでなく、選別や袋詰めも何度かお手伝いしました。とうがらしの辛味って、哺乳類は避けて食べないのですが、虫は「気にしませんよー」とばかりに食べるヤツがいるんですよ。特にハバネロは糖度が高いらしく、やたら虫の被害にあっていました。
十色は栽培期間中に農薬を使用しないので、虫食いの小さな穴が空いてしまった実が結構あります。これらはもちろん出荷できません。
パドロンのようにサイズの基準がある実、傷や変色のある実などもはじくと、結構な数の規格外品が出ます。
食べるうえで問題のない規格外品は乾燥品に回すこともありますが、大半は畑に戻して堆肥化しちゃうので、何か手間のかからない活用策があればいいな、といつも感じています。
強すぎる雑草、病害で枯れる株
十色では除草剤を使わないので、畝間(通路)の雑草は草刈り機で刈ります。元々休耕地だったところは雑草のタネが沢山残っているので、2週間に1回は除草しないと、通路を歩けないほど雑草が伸びてしまいます。
私は早朝の涼しい時間帯に収穫するだけですが、十色のスタッフは猛暑の中で収穫に加え、剪定と除草の作業もあります。
さらに7月あたりから病害で枯れる株も目立ってきました。有機栽培、過酷です…
台風、突然の収穫終了
8月上旬、大きな台風が通過しました。
新しく借りた畑は、隣の畑よりも低い場所にあり、周りの畑から流れ込んだ水で畑が水浸しになってしまいました。
農業に関わるようになって知ったのですが、台風の農業被害って、台風が過ぎた直後には分からないんです。数日経って、浸水により根が傷んだ株がどんどん枯れていきました。これでいくつかの品種は収穫終了…
さらに、とうがらしは暑くなると辛味が増すのです。辛いと売り物にならないパドロンが辛くなってしまい、こちらも収穫終了。
収穫最盛期のはずの8月に、大きなダメージを受けました。
お手伝い隊が助けてくれた
とはいえ、元気な畑もあります。特に「プリッキーヌ」というタイのとうがらしは気候風土が合うのか、毎日たくさんの実をつけてくれました。
収穫が間に合わないので、SNSで「収穫をお手伝いして欲しい」と呼びかけたところ、たくさんの友人達がお手伝いに来てくれました!
皆さん大汗をかきながら楽しく収穫してくださり、助かりました。来年もよろしくお願いします!
それでもとうがらし収穫は楽しい!
仕事前の早朝収穫はまあまあハードでしたが、それ以上に毎回カラフルなとうがらしを収穫したり、「今日は3箱収穫できたぞ!」など達成感も感じられて楽しい日々でした。
とうがらし収穫は畑に霜がおりる11月下旬まで続きます。来年はさらに多くのとうがらしを栽培する予定とのことなので、興味のある方は来年一緒にとうがらし収穫をしませんか? 楽しいですよ!