前庭神経炎の発症から復帰までの軌跡②
4人部屋のベットに寝かされたのはお昼間際だったので先に入院している方々はお昼ご飯を食べていた。「お昼ご飯どうしますか?」と看護師さんに問われたが、全く食欲がなかった。というか、体を起こすと目が回るので私は横たわるしかなかった。頭を起こすことが出来なかったその日は、寝ながら口に出来る小さいジュースのパックとチョコレートだけ食べた。水分をほとんど取れないその日は2回もトイレに行かなかった。それにベットから2メートルの距離にあるトイレにも歩いて行けないので、看護師さんに付き添って貰った。僅か2メートル。その距離がもどかしかった。翌日も同じ。こうなると、「なんでも自分で出来る!」と言い張る年配の入院患者の気持ちが、実によく分かった。当たり前に出来たはずのことが出来ないことがもどかしく、そして腹立たしい。その腹立たしさはそもそも自分に向いているのだが、親切に手助けしてくれる看護師さんに向けてしまうのだろう。自分が歳をとって入院した時に、絶対にしてはいけないことだと思った。
結局、5日間ほど入院した。退院後、直ぐに前の生活に戻れることはなく、最初の3日間は連続して1時間も座っていることが出来なかった。ミーティングしては横になって休憩し、パソコンで作業しては横になるという感じ。外出すると、急に方向感覚を失うので一人で外で歩くのが怖くなった。それが2週間程続いたのだろうか。入院したことで毎日午後10時には寝て、翌日7時に起きる健康的な生活をしたことで大分マシになった。が、睡眠時間が足りなくなると如実に足元が覚束なくなった。ただ調べたところ、3ヶ月も経つと多くの場合は元の生活が送れる様になるとのことで「絶対に大丈夫。元に戻る」と自分に言い聞かせて耐えることにした。
そして今、5ヶ月が経過した。もう旅行にも行けるし、ジムにも行ける、ただ、以前の様な生活が出来ているかと、そうではない。日常生活は送れる様になったが、何かのタイミングで足元がふらつくことがある。急に頭の向きを変える動作をすると、世界がちょっと回る感じがする。この状態が治癒した状態だとは思いたくないし、この状態が今後も続くのかとなると正直嫌になる。健康って本当に大事だと実感しつつ、今日も明日も仕事する。