三菱倉庫と住友倉庫の比較分析
両社の概要
両社とも社名に『倉庫』と入っていますが、実際には生産者から消費者に商品が届くまでの物流網全体をカバーしている総合物流企業となっています。
また、旧財閥系企業であり多額の土地を保有していることから、不動産事業も行っています。
ですので、事業セグメントは物流事業と不動産事業の二つに大別できます。
物流事業の収益内容は以下の通りです。
三菱倉庫 (倉庫保管料、倉庫荷役料、陸上運送料、港湾荷役料、国際運送取扱料)
住友倉庫 (倉庫収入、港湾運送収入、国際輸送収入、陸上運送収入、海運収入、物流施設賃貸収入)
主要財務数値の比較
図表1-1
(単位:百万円)
図表1-2
(単位:百万円)
図表1-3
上記3つの表から読み取れることは以下の3つです。
両社とも2022年に営業収益、営業利益、営業利益率ともに大きく増加している。
5年間のROAは三菱倉庫が住友倉庫を下回っている。
2022年の収益増加の際、伸び率は三菱倉庫の方が小さい。
これら3つのポイントをさらに深掘りすることで三菱倉庫と住友倉庫の分析を進めていきます。
1.両社ともに2022年に収益が大きく増加した理由
有価証券報告書によると2022年に営業収益、利益ともに大きく上昇したのは、取扱数量の増加と海上運賃の上昇による影響だと記載されています。
特に海上運賃の上昇の影響が大きく、両社ともに国際運送業務の収益が大きく増加しています。
2.三菱倉庫のROAが住友倉庫よりも低い理由
図表2-1
図表2-2
図表2-1を見ると、三菱倉庫は不動産事業セグメント資産の保有割合が住友倉庫の約2倍、不動産賃貸面積は3倍以上であり、事業全体における不動産事業の比率が高いことがわかります。
不動産事業は保有する資産の規模が大きいのに対し、売上高はストック収入である賃貸料ですので、不動産事業の資産回転率は低く、全体の回転率を低下させます。
実際に図表2-2を見ると全体の総資産回転率が住友倉庫よりも低水準で推移しているのが確認できます。
図表2-3
さらに図表2-3の不動産事業の利益率が三菱倉庫の方が圧倒的に低いことがわかります。
三菱倉庫は横浜ベイクォーターや神戸ハーバーランドUMIEなどの大きな商業施設を多く保有しており、着工から収益化に至るまでの期間が長いことが原因の一つと考えられます。
総資産回転率を低下させる不動産事業の営業利益率が低いとなると、総資産回転率×営業利益率で表されるROAが低値になるのも必然といえます。
また、三菱倉庫は大きな土地と建物を必要とする倉庫事業の割合 (対物流事業収入)が住友倉庫よりも5%ほど高くなっており、物流事業の資産回転率の低下によるROAへの影響もあるでしょう。
3.2022年の収益増加の伸びが三菱倉庫の方が低い理由
先程、2022年の収益増加の主要因が海上運賃の増加であることを示しました。
住友倉庫は2021年時点での国際輸送収入と海運収入の割合が収入全体の約33%を占めているのに対して、三菱倉庫は約21%となっており、住友倉庫の方が海上運賃の上昇による恩恵を受けられる事業の割合が高いことが主な要因でしょう。
さらに三菱倉庫は不動産事業において商業施設を多く保有していることから、コロナウイルスによる外出自粛制限の影響を受けやすく、不動産事業の減収が大きくなったことも要因の一つと考えられます。