コークスと鉄鋼業の株価連動性についての考察 part4
はじめに
第四回は化学とは少し離れてしまいますが鉄鋼と石炭事業の関連性について考察、調べたことをレポートしたいと思います。今回は調べてるうちに思いついたことをただ羅列したような感じになってしまったので読みにくかったり一貫性がなかったりしますが温かい目でお目通しお願いいたします。JFEは2002年に川崎製鉄とNKKが新日鉄(今の日本製鉄)に並ぶ規模の鉄鋼メーカーを作るために統合してできたのがJFEです。JFEは日本を代表する高炉メーカーで、鋼材と石炭を輸入して鉄鋼を生産しています。鉄鋼を生成するとき、鉄鉱石は当然そのままだと酸化されてるのでコークスを利用して還元をします。日本コークス工業は日本を代表するコークスメーカーであり、今回はこの2社の株価を比較しました。
考察
株価推移の比較
以下の図1に2社の株価の推移を示します。なお、青色が日本コークス、赤色がJFEで、2024年1月24日の株価からの変化率を横軸に設定してあります。
図1からわかる通りある程度の連動性が株価に見られます。2023年3月の日本コークスのピークは国の研究開発助成金に採択された事によるものであると推測されます。次に図2にJFEとドル円相場のグラフを示します。図3に上海総合指数とJFEのグラフを示します。
図2,図3からは、上海総合指数とドル円相場との直接的な関係は見出すことができませんでした。
JFEにとってのコークス
前節でJFEとコークス産業の関連性を示しましたが、JFEはコークスを2019年より完全自給しています。割高な中国産のコークスを輸入するより自社で生産したほうが為替の影響やコストの増大を防げるからです。調べていくうちに、日本コークス工業の主な取引先は日本製鉄であることが分かりました。つまり、日本コークス工業の株価はJFEのコークス需要に呼応しているわけではなく投資家間の鉄鋼産業に対する包括的な期待の下で株価が連動していると分かりました。図4にJFEと日本製鐵の直近3ヶ月の株価推移を示します。
図4を見ると概ね2社の株価は連動しているようですが、8月の日経平均暴落からの戻り方には差異が認められるようです。図5に今年1年間の2社の株価推移を示します。
図5を見てわかるように8月の大暴落からJFEは日本製鉄に比べて株価回復が遅れていることが分かります。この理由についてはまた次回の記事で書けたらと思います。
USスチール買収について
なにかと話題になるUSスチールの買収についてですが、私個人の意見では買収の可否は日本製鉄の株価にはさほど影響が無いだろうと考えています。もちろん規模の大きい企業の買収はなんだかすごい感じがするし、メディアも大きく取り上げているので日本製鉄の株価に期待するのは分かりますが、買収にはそれ相応のデメリットが伴います。特に財務状況の悪化です。表1にUSスチールのROE推移、表2に純利益推移を示します。
USスチールを買収するということは当然、上に示したように業績が悪化している企業を抱え込むということであり、大きなリスクが伴います。このリスクに見合ったリターンを投資家達が期待しない限りは株価は上昇しません。現に、日本製鉄のチャートからUSスチール買収を巡ったニュースに連動した大きな株価変動は認められないことからも、買収に関するニュースに過敏に反応する必要はないと言えます。しかし、もちろん今回の買収によって得るられる大きなメリットも存在します。
伸長を期待できる米国内の高級鋼需要
安価なエネルギーの供給
先進高強度鋼などの高級鋼技術
鉄鉱石鉱山や高級鋼生産設備等の資産
これらについてはまた次回書けたらと思います。申し訳ありません。
今回は以上です。