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NO35 茜の十五周年記念
9月19日 木曜日
今日は茜の十五周年記念パーティーだ、
前もって、受けていた予約が二十六人だったので、それで打ち切り 、
今日は貸し切りの札を出しておいた。
午後17時、ぞろぞろとお客様が入ってくる。
どの顔もなじみの顔ばかりだ。その中に8人ほどの新顔があった。
常連さんが連れてきたお客様たちだ。
あかね・智美・香奈子・そして玲香が出迎える。
お客様たち 1人 1人にピンポン球のボールを手渡して席へ誘導した。
玲香は会社を休んでの特別ゲストだ。
春樹にも、そこの所はうまく伝えてある。
茜の十五周年記念パーティの始まりだ。
ママが挨拶をして乾杯をした。
テーブルにはたくさんの料理が並べられている。
それを各々が小皿に取って食べるのだ。
飲み物はビールが各テーブルに用意されていた。
常連さんたちは今日は玲香がいるので騒々しい。
なにかが始まる予感がしているのだろう。
玲香が小さなカラオケステージに立つと、イベントの説明を始めた。
「本日は、茜の十五周年記念パーティに時間を作っていただき、
本当にありがとうございます。
本日は飲み放題、食べ放題になっております。
では先に、お一人様一万円を徴収しますので、よろしくお願いします。
時間は今から23時までです。まずはママから一言、挨拶をお願いします」
そんな話は聞いていないって顔をして、ステージに立つと
「本日は、わざわざ足をお運びいただきありがとうございます。
皆様の後ろ盾をもって、十五周年を迎える事ができました。
これもひとえに皆様のおかげです。
どうか、今後とも末永く可愛がって頂きますよう、よろしくお願いします」
智美と香奈子がお客さんたちからお金を受け取りに行く。
「では、皆様、お待ちかねのイベントを始めます。
皆さんが手にしている球は、
ママが小箱から出したスイッチ球を押すと、どなたかの球が光ります。
青く光れば、私、玲香がお相手をします。黄色は智ちゃん
赤は香奈ちゃん、白く光ればママがお相手をしてくれますので、
その光った球を持った方は、こちらのステージまで来てください。
皆様のお相手に叶うように頑張りま~す。
さて、最初のイベントは、口と口で、あっち向いてホイをやりまーす。
では、今一度、あっち向いてホイに乾杯をしましょう。かんぱ~い」
そして、最初に赤く光ったのは、金山さんだった。
もじもじと、ステージに上がってくる。
香奈ちゃんがアヒルのくちばしのようなスプーンをくわえ、
その先にアイスクリームをのせて、
顔を右に左に、真ん中に動かす。
それを見事、金山さんがアイスクリームを食べられたら
良いのだが、
「あっち向いて、こっち向いて、あっち向いて ホイ」
金山さんは左にパク 香奈ちゃんも左に向いた。玲香がもう一度って叫ぶ
「あっち向いて、こっち向いて、あっち向いて ホイ」
今度は見事、アイスクリームを食べられた。おめでとう賞で粗品を渡す。
次また、あかねが小箱からスイッチ玉を出してボタンを押すと、
村井さんとあかねがあたった。
村井さんはあかねとできると思って気合いが入る。
「あっち向いて、こっち向いて、あっち向いて ホイ」 一発目で仕留めた。
あかねの顔が近い。アイスクリームをくわえたまま、
あかねの目をじろっと見る。
それがおかしいと云って、あかねはスプーンを外して大笑いだ。
おめでとう賞で粗品を渡す。
粗品の中にはスカンクのプリントハンカチに茜といれてある。
それと、ポケットルーペが入っている。
そろそろ、老眼鏡が必要になりそうな常連客ばかりなので
粗品はこれと決めていたのだ。
次に当たったのは浜口さんが連れてきた新規のお客さんだった。
お相手は玲香
「あっち向いて、こっち向いて、あっち向いて ホイ」
残念、もう一度トライしたが、玲香の動きが速く、うまくいかないようだ。
玲香は、このままではまずいと思って、
カウンターにあったドーナツボーを残念賞だと云って口にくわえ、
新規のお客さんに口渡しをした。
それを見たお客さんたちが残念賞の方がいいって、ぼやいている。
次から次とあっち向いてホイをしていくうちに、
だいぶん、だれてきたのを感じた玲香は第二のイベントを打ち出した。
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「あっち向いて、こっち向いて、あっち向いて ホイはこれで終了です。
では、ここからは第2部お尻相撲で~す。
茜風お尻相撲は、お尻ふりふりの部分は、
お互いにお尻をひっつけて右に左に振りましょう。
そして、プップの時に後ろに付き出して下さい。
ステージから先に出た方が負けです。ステージが小さいので、
あまり強くしないようにしてくださーい」
みんな、これはいいな~、おもしろそうだ。と騒ぎ出した。
また、あかねが小箱からスイッチボタンを取り出して押すと、
秋田さんとあかねが当たった。
この秋田さんはあかねを目当てに来るお客さんだ。
当たって大喜びをしている。
「おしりふりふり、おしりふりふり おしりふりふり プップ」
秋田さんはお尻の感触がたまらないようで、
もう、ニタ、ニタ、ニタ、ニタ、プップの時も、
横に振っていたため、簡単に負けてしまった。
本人は勝った、負けたより、お尻の感触の方がよっぽど、うれしかったようだ。
次に当たったのが幸ちゃんと智ちゃんだ。
「おしりふりふり、おしりふりふり おしりふりふり プップ」みんな合唱をしている。
あかねはカウンターのお客さんにお酒を作っている。
玲香はお客さんたちにビールを注ぎ回っているのだが、お尻ふりふりの間、
玲香もいつものようにお尻を振っているので、
みんな、自然に手が出るのだ、
新規のお客さんが、動揺していると、常連客が、ほれ、さわれさわれ、公認だから、大丈夫だよって耳打ちした。
「おしりふりふり、おしりふりふり おしりふりふり プップ」
幸ちゃんは気合いが入りすぎ、智ちゃんを壁にまで飛ばせてしまった。
これは危ないと、次からは、誰かが受けるカバーに入った。
次は、吉田さんの連れ客と香奈ちゃんだ。
「おしりふりふり、おしりふりふり おしりふりふり プップ」
そのお客さんも、
お尻ふりふりの感触がたまらなく良いようで、両手を頭の上に挙げて、
お尻ふりふりを歌っている、香奈ちゃんの背丈に合わせて、腰を下ろし、
お尻を突き出して、香奈ちゃんのお尻に触れる。
ゆっくり、お尻をなで回す。
(お尻ふりふり プップ)となった時はもう、お尻を突き出したままなので、
簡単に香奈ちゃんに押し出されてしまった。
もう、勝ち負けよりお尻の感触の方が楽しいようだ。
次から次と、みんな、お尻を突き出したまま、手を挙げて踊る。
すごく滑稽な姿だ。その姿を見て、腹を抱えて笑うお客さんたち、
最高の盛り上がりだった。
そうしているうちに23時になった。玲香はそろそろ終わりだと思い、
最後の仕上げにかかる。
「みなさ~んそろそろ、おしまいですので
最後に究極のプレゼントを用意しています。
では、今から皆さん、目を閉じて、静かに静かに、座っていてください。
目を開けちゃダメですよ。はい、スタート」
この企画は、前もって打ち合わせてあったので、玲香、あかね、智美、
香奈子が唇にたっぷり口紅をつけて、お客さんのほっぺや額や首に、
四人で全員につけて回った。お客さんの顔中、キスだらけだ。
みんな、スマホを取り出して自分の顔に付いたキスに、喜びを隠せない。
香奈子や智美と一緒にみんなが自撮りをしている。
すると、幸ちゃんが言った。
「れいちゃん、おれの・・・れいちゃんのキスがない~」
どのキス跡が誰の物かわかるはずもないのに、騒いでる。
玲香は、あまりうるさいので、おとなしくさせようと、
口紅たっぷりつけて、幸ちゃんの口元に唇を押しつけた。
幸ちゃんの口元は真っ赤になって、その上、顔中にキスが付いているので、
化け物のような顔だ。みんな、大笑い。
俺も俺も、と、玲香のキスをせがむ、お客たちに、また、口紅をたっぷりつけて、口に押しつけた。
化け物がドンドン増えていく。香奈ちゃんや智ちゃんが
蛍の光を歌いながら、おしぼりを手渡す。
村井さんたちは、おしぼりで顔を拭いている
おしぼりがピンク色に染まっていく。
おしぼりをおかわりして、きれいに顔を拭いた。
幸ちゃんはこのまま帰ると言い出した。
「化け物の顔をして、本当にその格好で帰るのか」と、島さんが聞く、
「だって、家に帰っても一人だし、錦でこんなにキスをくれる店なんて、
どこにもない、スカンク最高!スカンク ばんざ~い」と叫ぶと、
それに同感した単身族がおれも、このまま帰ると言い出した。
タクシーの手配をする。
玲香が新規の人たちの行き先を聞くと、
「中村さんですね、中村さんの家はどちらですか」
「私は滝の水、緑区ですけど」すると、玲香が
「竹原さん、今日は一人で帰るの」
「そうだけど」
「じゃ、こちらの中村さんと相席しない、
そうすれば、折半で、4千円ずつで帰れるけど」
「あ、それいいな~いつもの半分だ」 二人とも納得する。
「じゃ、お金はどのように、現金、クレジット?」
玲香が新規の中村さんに聞く
「私は、クレジットでも・・・良いですか」
「俺、現金」
「じゃ、中村さんがあと、先に徳重へ行ってから滝の水でいいですか、中村さん」
「はい、僕はかまいません」
「じゃ、竹原さん、中村さんに4千円を渡してね」
「本当にそれでいいの」竹原さんが聞いた。
「大丈夫、茜専属タクシーだから、何も心配しないでね。
ただ、これから、いつも同じ運転手さんになると思うから大事にしてね。
じゃ、タクシー呼ぶから、ちょっと持ってね」
スナック茜を後にするお客さんたちに粗品を渡す。
玲香は、また、新規のお客さんの行き先を聞いて相席を頼んだ。
今日のタクシーは8台、玲香は春樹と打ち合わせをして
お客様を送る行き先の手はずを整えた。。
スナック茜を出るとタクシーの待機場所に足を進める、
その間、お客同士、顔を見合わせてはゲラゲラ笑っている。
何しろ、独身族は、顔の至る所にキスマークをつけたままタクシーに
乗り込んで行くのだ。
春樹はいつものように 瀬戸の村井さんたちを送った。
スナック茜は、床のいたる所にアイスクリームがたれている。
料理の食べかすが、あっちこっちに落ちている。
片付け、掃除が大変だ。キスマークを拭いたタオルもあちこちに置いてある
あかねが、今日の売り上げから、智美と香奈子に3万円づつ渡した。
「今日はご苦労様でした。このお金はお給料とは別だからね、
頑張ったで賞金ね そのかわり、悪いけど、最後まで掃除を手伝ってね」
「ママ、いいんですか、こんなにたくさん、バイト代より多いよ。
今日、本当にすごかったね、あんなに盛り上がったの始めて、楽しかった」
智美が云う 。
「こんな、スナック茜だったら、お客さん、もっと呼べるよ、
もっと、大きいお店に代わった方が良いよ、ママ、
そしたら、もっともっと頑張るから、何でもするよ」
香奈子も3万円も貰ったので、
こんなに貰えるなら毎日でも頑張りたいと思ったのだ。
ママが一言・・・
「本来、スナックがお客さんとこんな接し方をしたらダメでしょう。
今日は十五周年記念と云う事でやっちゃったけれど、
普段はカウンター越しだからね、お願いね」
と、あかねは玲香の顔を見ながら、智美たちに言い聞かせた。
玲香が小さく笑っている。
何はともあれ、 スナック茜の十五周年記念は無事に終わった。
春樹はいつものメンバーを送るのだが、
今日は、新規の安井さんが加わってた。
山口さんを一社のミニストップで降ろし、
長久手の郵便局前で安井さを降ろす。
そして、印場で井沢さんを降ろして、村井さんを瀬戸まで送った。
その間、車内では、大笑いが続く。
「おもしろかったな~茜はやっぱり、する事が違うな、
どこにも、あんなスナックはないぞ」
「最初のあっち向いてホイも、楽しかったけれど、俺はやっぱり、
お尻相撲がエロチックだったな~お尻相撲って、本来、あんなのだっけ」
「あれは、笑ったね、村井さんなんか、
後ろからママの腰を両手で押さえて踊るから、ママ、困っていたじゃん」
「いや、あれはママのけつが大きいから、
ステージから落ちそうになるんだから仕方がないよ」
もう、笑いが絶えない。
「しかし、最後のキスマークも良かったな、首にキスして貰ったなんて、
何十年ぶりだろう、本当に、女房が居なかったら、私も消さないで、
そのまま帰って来たかったよ」
「あの、例の幸ちゃん、あの子 いいねぇ、
あそこで、唇にキスマークが付いていないって、ごねるもんだから、
結局、あれで、みんなもチュウしてもらえたんだよね」
「本当だね、俺、れいちゃんのチュウだった。」
「私はママだった、うれしかったな~、夢に出てきそうだ、参ったねぇ」
「僕は智ちゃんでした、まだ、唇の感触がわすれられないな~恋しちゃいそう」
春樹は、話を聞きながら、苛立つばかりだ。話が全く違う。
玲香は茜の十五周年記念パーティーの手伝いに行くから休むと言っていた。
あっち向いてホイの話は聞いていた。
直接、唇が触れる事はないので心配いらないとも言っていた。
お尻相撲も、聞いてはいたが、
そんな、エロいとは春樹は想像していなかった。
まして、キスマークなんて、全く聞いていない、
それどころか、俺だって、首にキスマークなんかつけて貰った事がないと思った。
帰ったら、玲香をたたきのめしてやると思いながら、
村井さんたちを無事、事故無く、送り届ける事ができた。
春樹は玲香に電話をした。もう、一時だ。
もう、家に帰っていると思って電話をするとママが出た。
「春樹、終わった、じゃ、待っているから迎えに来て!」
「玲香は?」
「れいちゃんはトイレ」
「えぇ、吐いているの」
「春樹じゃないから・・・普通にトイレよ、待っているからね」と言って、
一方的に切られてしまった。
1時40分、到着のメールを入れる。
あかねと玲香がタクシーに乗り込んできた。
あかねが春樹にタクシー代だと言って1万円を渡した。
先にあかねを勝川に送る。そのあと、玲香を家まで送るのだが、
あかねを降ろしたあと、春樹の激憤が始まった。
玲香は、その雰囲気を感じ取っていた。
「玲香、ちょっと話が違うんじゃないのか、何が、あっち向いてホイだ。
キスマークって何だ。そんな話は聞いていない、全員とキスしたのか」
「違う、そんなんじゃないの、口紅をたっぷりつけて、
ちょっと、プチュってほっぺやおでこにつけただけ」
「よく言うわ、また、あの幸ちゃんの言いなりになってキスしたんだろう」
「本当に、キスって感覚じゃなくて、
キスマークをプチュってつけただけなんだから、
ママも智ちゃんも香奈ちゃんも、みんな、キスマークをつけていたの、
私だけじゃないから」
「大体ね、俺でさえ、首にキスマークなんか付けて貰った事も無いのに、
なんで、客には付けてやるんだ」
「あ、春樹、やいているんだ」
「馬鹿言うな、やいてなんかいないわ、ふざけやがって、降りろ」って、
言うと春樹はタクシーを止めた。ここは茶屋ヶ坂駅付近だ。
まだ、家までは2km以上はある、しかも長い登り坂だ。
玲香は春樹の目をじろっとにらむと、車から降りて行った。
春樹は降りろとは言ったが、
まさか本当に玲香が降りるとは思わなかったのだ。
しかし、玲香が降りたのに、車を出さないわけには行かない。
時間は午前2時20分、このまま、会社に帰ろうかと思ったが、
あの急な坂道、ほろ酔いで帰すには、ちょっと可哀想だ。
会社に戻って納金を済ませてからでは、多分ちょうど家に着く頃だろう、
そこへ帰って行っても、居心地が悪すぎる。
俺は悪くないと思うのだが、声のかけようが無い、悪いのは玲香だ。
そう思いつつも、しかたなく春樹は玲香を迎えに行った。
タクシーを横に着けると、
「迎えに来ると思った!良かった」
と言って玲香はタクシーに乗り込むと春樹の腕に抱きついた。
「まさか、本当に、降りるとは思わんかったわ」
「だって、降りないとず~と怒っていたでしょう」
「ふん、今だって怒っとるわ」
「いいよ、怒っていても、私、春樹が好きだから、あ、首にチュウしてあげる」
![](https://assets.st-note.com/img/1728788130-2AycNzMUQeIkuxt6r1isYv4F.jpg)
春樹は車内でこんな事をするのは、あかねいらいだと思った。
あかねと玲香がかぶる。
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身も心も過去もすべて受け止めて
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