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NO49 同居

10月30日 (水)

玲香は今日よりあかねの家に夫婦そろって居候する事になった。
春樹と玲香の部屋は、あかねがレイアウトした事もあって、
落ち着いた雰囲気になっている。
部屋の西側の壁にモネの田園が飾られていた。
あかねは泉にあるマンションを売る予定で、実家に引っ越しをした。

「お兄さん、姉さん、これから、しばらく・・・んんぅ~~」
玲香は春樹の顔を見る、そうなのだ、まだ何も決まっていないのだ。
 
「どうする、玲香は猫ヶ洞には戻る気は無いんだろう」
 
「どうしよう、また、マンション買う?」
 
「そんな先の事は考えなくていいから、
ず~と、ここに居てもいいし、そうね、
この家も古いから新しく二世帯住宅に立て直したらどうかしら、
ねえ、修平さん」
 
「私に振られても困るが、お父さんはどう思うかだな、
この家もお父さんの家だから、勝手に立て直すのはよくないぞ」

「そうね、先にこの家を相続するのが先ね」
   
「待て待て、生前贈与と遺産相続とでは税金がずいぶん違うはずだから、
税理士さんに相談した方がいい、
 それよりも、やはり、お父さんに話をしてからだよ」
 
「そうねぇ・・・・れいちゃんもそんな事、心配しなくていいから、
ず~と、一緒に暮らしましょう、春樹もいいわね!」

あかねは一息つくと
「私はね、本当に春樹もれいちゃんも家族だと思っているの、
ほかの人たちとは違うのよ信じられる・・・受け入れられる・・
何もかも・・・修平さんと同じなの」

「姉貴、俺らもそう思っているから、なぁ、玲香」

「んん、だけど、ここはやっぱり、おじさんの家よ、
お姉さんの家じゃない」
 
「じゃ~春樹もれいちゃんも、中西の姓になりなさいよ、
泉って姓に執着しているの?」
 
「どういう事、中西を名乗るって養子になるって事?
そんな簡単に泉の姓を捨てていいのかな」
 
「どうよ、本当の家族になるって事」
 
「そんな事ができるの?本当なの修平さん?」玲香が驚いて修平に聞いた。
 
「そうだな、私もあかねと籍を入れる時、婿養子で結婚したからな、
稲留から中西に姓を変えれば、過去を捨てられるからって
あかねが言うので甘えてしまった」

「あのね、私、思うんだけど 家族ってなんだと思う?
親が子を殺したり、子が親を殺したり、
最近、すごく多くなってきたじゃない。
あんな事件を見ると、家族って血筋じゃないのかなって思うの。

私、前は家族って、信じ合えるとか、助け合うとか、
きずなとかって思っていたのよ、だけれど、今はちがうの、
春樹やれいちゃん、修平さん、みんな 人に言えないような
辛い過去を持って、それでも一つになれるって言うのは、
許すって言葉の前提の上で成り立っているのだと思う。
だから、すべてを受け入れることができるのだと思うわ。
身も心も過去もすべて受け止めてって本当にいい言葉だわ。
なにもかも、許し合えるからこそ受け止められるのよ」

「そうか、おれは玲香に会って、ビックリすることばっかりだったよな、
最初に会った時は、かわいい女だなって思ったけど、
まさか、AVなんて想像もしなかったし、なのに・・・結婚してる。
それって玲香の過去を許したってことなのかな~」

「私もあかねにはずいぶん許してもらっているよな」

「ね、 すべてが許すことが前提であれば、
万が一春樹が痴漢をして捕まったとしても、
私たちは協力して助けようとするわよね、
避けるなんて絶対無いでしょう」

「ちょっと待ってよ 姉貴、どうしておれが痴漢することになるんだ」

「だって、修平さんはしないもの」

「俺だってするわけないだろ」

「分からない人ね たとえよ!たとえ!」

「それに知ってる、修平さんの肩から足から、
赤あざ 青あざでひどいのよ」

「あかね、その話はいいから」

「それって、ドアをひっくり倒した時のあざ?」

「そうなの、でも、絶対、れいちゃんに言うなって言われていたんだけど
この情こそ、家族だと思わない・・・つまり、私たちは本当の家族になれるって事なのよ、ちがう、春樹」

「どうして、俺にふるの」

「あんたが一言、中西の姓になるって言えば、今日から家族でしょう。
 別に二人とも親らしい親も居ないし、
 それよりも二人とも中西の家族になった方が、
後々、幸せになれると思うのよ」 

「私、中西玲香になりたい、中西春樹、いいじゃん、
ねぇ、春樹、なりたい」

「おじさんに、なんてお願いするの」
 
「父には私がうまく言っておくから、
 じゃあ、今度の日曜日に4人で父に会いに行くわよ、いいわね」


10月27日 (日曜日)
午前11時 四人はお父さんの老人ホームに行った。
すると、スタップの方が寄ってきて、お父さんは松原ときさんと
さっき、タクシーを呼んで出掛けて行ったと教えてくれた。
なんでも
愛知県芸術劇場で水谷千重子の宴ジョインコンサートがあり
13時公演なので栄で昼食をとってコンサートに行くと言って出掛けたらしい
ゲストに岩崎宏美/高橋洋子も来るらしい
そんな話は、全く、聞いていなかったので四人は呆気あっけに取られてしまった。
「やるね おじさんも・・・」
「まさか、まさかでしょ、開いた口がふさがらないわ まぁ~」

「あかね、いいじゃないか つまり なんだ、
お父さんも元気になったって事だろ」

「よかったじゃない お姉ちゃん いいことよ ステキ!」

結局、その日は勝川南部学習施設によって選挙投票をして、
家に帰ったのだ。


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泉 春樹
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