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NO58 まこちゃん カラオケ店へ

今夜も、茜専属タクシーは忙しい。
以前、手伝ってもらっていた辻さんは、お母さんの容態が悪く、
実家に帰ったらしい。高木には外れてもらった。
今、茜専属タクシーで頑張っているのは
武田誠{30歳独身、千種区赤坂町に家がある}
加藤信二{32歳独身会社の寮に住んでいる}
通称、まこちゃん・信ちゃん、そして春樹だ。
修平は会社を辞めて、スナック茜を手伝っている。
修平の炒飯や焼きそばは好評だ。麻婆春雨もよく売れる。
そうしながら、タクシーの手配もしているのだ。
つまり、タクシーを利用されるお客さんの
住所、電話番号、会社、家の連絡先は前もって聞いてある。
これはお客さんが寝られても、安全に家へ送り届けるためだ。
また、親族に連絡ができれば事故に遭った時にでも
すぐに連絡をつける事ができる。
忘れ物があっても確実に届ける事ができる、
そう言う事も含めて
事前に必要事項は記入してもらっているのだ。

運転手には、極力、同じお客さんをあてがうようにしている
相乗りの場合は、修平が店内で、途中下車されるお客さんの料金を決めて、
最後に下車されるお客さんに、その料金を渡していた。

当然、途中下車されるお客さんの自宅も分かっているので、
春樹たちも道順の段取りを組む事ができた。
お客さんは、1人でタクシーを利用する料金の半額、
もしくは半額以下で帰る事ができる。
また、乗車している相乗者も知らぬ訳ではない。
スナック茜での共通話題もある。
あるいは仕事上の関係が発生するかもしれない。
つまり円満に笑顔で帰宅できるよう茜専属タクシーは、
いい事つくしを心がけているのだ。
22時に中沢さん・吉村さんを信ちゃんが送る、

まこちゃんが沢田さんを荒畑まで送る、
その後すぐに古川さんを高蔵寺へ送った。

春樹は金山さんを蟹江に降ろした後、安井さんを弥富へ送った。

こんなふうにして、今日も一日が過ぎていくのだ。

ある月曜日、まこちゃんは、休日だった。
23時頃、地下鉄に乗って栄で下りるとスナック茜に向かった。
実は、今日は智ちゃんと香奈ちゃんとお店が終わってから
カラオケに行く約束をしていたのだ。
お店の一番奥のカウンターに座ると、
スカンクの絵が描いてあるボトルをキープした。
修平が、
「まこちゃん、めずらしいな、どうしたんだ」

「マスター、今日、今から智ちゃんと香奈ちゃんとカラオケに行くんです」

「そりゃぁ、いいね、おいおい、あんまり飲み過ぎるなよ、
セーブして飲まないと、明日の仕事に響くぞ」

「はい、大丈夫です。俺の身体、アルコール分解度がすこぶる早いんです」

「まぁ、ほどほどにな・・・」
ちょうど、0時半にお客さんが引いたので、いつもより30分早く智ちゃんと香奈ちゃんを帰してあげた。
修平は誠なら、真面目な子だから問題ないと、
カラオケに行く3人をやさしく見送った。

誠が家に帰ってきたのは、夜明け前4時を過ぎていた。

そして、翌日、19時にまた、誠がお店に来た。
智ちゃんも香奈ちゃんもあかねもびっくりだ。
「まこちゃん、仕事は・・・どうしたんだ」修平が尋ねる

「はい、会社で出勤時にアルコール検査をしたら引っかかっちゃって、
部長が今日は欠勤扱いにすると言って 凄く怒っていました」

「あほか、それでまた、ここへ飲みに来たらまずいだろう、帰れ」
みんな呆れている。あかねが
「昨日、何時までカラオケをしていたの?香奈ちゃん?」

「3時間だから・・・AM4時くらいかな、けっこう、飲んだよね」

「まぁ、困った子、まこちゃん、ビール一杯だけよ、
智ちゃん 香奈ちゃん・まこちゃんとなにか歌ってあげて・・
歌ったら、それでまっすぐ帰るのよ、いいこと」

誠は満足をして家に帰って行った。


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泉 春樹
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