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NO41 玲香 こもる

     10月5日 日曜日 午後1時

あかねと修平は重箱と着替えを持って東部医療センターに来た。
玲香の病室に入ると、
今年の秋は遅く、今日もまだ、27度の気温の中
玲香は頭から毛布をかぶって寝ていた。
もう、昼も過ぎているというのに、まだ、昼食もすませていない
テーブル台車には手つかずの食事がそのままになっていた。
あかねは玲香の体調が悪いのかと思い、毛布をはぐって声をかけると
玲香が拒んだ。
「れいちゃん、大丈夫 寒いの?ご飯も食べていないし」

「いや、そーっとしておいて いやなの」
毛布をしっかりにぎって顔を見せようとしない

「どうしたの何がイヤなの? れいちゃん 毛布をかぶって暑くないの?」

「おねがい ほっておいて! なにもかもイヤなの おねがい」

玲香の声がだんだん泣き声に変わってきた。顔も見せない
仰向けのまま、頭からすっぽり 毛布をかぶっている。
あかねは玲香が今になって心が崩れて来たことを察した。

「れいちゃん 辛いのよね わかるわ あんな事をされたら
誰だっておかしくなるから 
だけど、良いこと 思い詰めて変なこと考えないでよ」

「わかったから、一人にして もう、イヤ」

こんな時は、一人にさせておいた方がいいと判断したあかねは修平と病室を出ると、担当医に玲香の状況を告げて、少し時間をかけて様子を見ることにしたのだ。修平は春樹に連絡を付けると今の状況を説明する。
春樹もすぐに東部医療センターに駆けつけた。
春樹たち三人は、もう一度、玲香の顔を見ようと
病室の引き戸を開けようとするが、
何かが引っかかっていて開かないのだ。

「玲香 どうした あけろよ 大丈夫か」
春樹が様子を伺うが応答が無い

「れいちゃん ドアを開けて・・・ね、れいちゃん 
顔だけ見せてくれたら帰るから れいちゃん」
全く反応が無いのだ。
看護婦 担当医も駆けつけてきたがドアが開かなければどうにもならない。ドアのサンを何かで押さえているようだ。
その時、部屋の中でバタバタと大きな音がした。

玲香はドア越しに話をしようと、ベットから立ち上がった時、
ベットの下に置いていたカバンの紐に足を絡めて転倒してしまった。
中から、痛い 痛いと言っている声が聞こえる
担当医が大きな声で聞いた
「泉さん どうされましたか?転んだのですか?大丈夫ですか」

「痛くて、動けない 助けてー」
玲香が泣いている、動けないようだ。

突然 春樹がドアの前にいる人たちをさえぎると、
「玲香 待ってろ 今 ドアを倒すから
危なくないか 玲香に当たらないか」

「ベットの横にいるから大丈夫」
玲香が痛みを堪えて答えた。

春樹は勢いを付けてドアに体当たりをした。
ド~ンと大きな音はするが、ドアは倒れない。
今度は修平が大きな身体で体当たりをした。

ドアは室内に倒れ、修平もそのままドアと一緒に倒れ込んだ。

担当医が玲香に駆け寄り、身体に触れて検査をする
担当医はすぐに看護婦と連携をとって玲香を手術室へ運んだ。
ただでさえ2本折れている肋骨まわりにまた、異常が発したらしい。
春樹たちは今まで玲香が強がりを言っていたが、
本当はず~と苦しんでいたんだと改めて認識をした。
辛かったのだろう、それを顔に出さないで・・・・・今まで頑張ってきたのだ。
それは、春樹が自分から離れないように 
ただその一点だけを考えて今まで頑張ってきたのだと思った。

病室のドアは撤去され 修理代が30万円ほどかかるようだ。
病室を移らなければならない。
また、何かあってはいけないと思い
あかねは特別個室をお願いした。

翌日、三人は午前中に玲香の様子を見に来た。
担当医の話では、少し肋骨がずれていたが、上手く固定できたようだ。
先生も大したことが無くてよかったと胸を撫で下ろしていたようだ。
病室に入ると、やはり 特別室だけあって広い ソファーもある
玲香は昨日と違って、安らいだ顔をしていた。
きっと精神安定剤で落ち着いているのだろう。

「春樹 お姉ちゃん 修平さん きのう ごめんね 
ちょっと、落ち込んじゃってた」

「いいの いいの れいちゃんがおかしくなって当然よ!
あんな事があったら、誰だっておかしくなるわよ、
どう、肋骨 どうなってたの?」

「うん、なんか折れてた骨がずれていたみたい」

「痛いだろう 話していて大丈夫か」春樹が玲香の手をにぎった

「修平さん 大丈夫だった、すごい倒れ方だったよ びっくりした」

「あぁ、ありがとう あれくらいじゃビクともしないから
これでも、昔はラグビーをしていたからね。
体当たりは鍛えてあるから大丈夫だよ
でも、ほんとうにれいちゃんが部屋にこもった時は
どうしようと春樹もあかねも参ったんだからね、頼むよ」

「辛かったのね そんな事おくびにも出さないから、一人で悩まないで
もう少し 私たちに甘えていいのよ 思いっきり泣いていいのよ」
あかねが玲香の足に絡まっている毛布を直した。

「だって、春樹が 私の身体 元々 汚いって言ったの」

「春樹 あんた、そんなバカな事 よく言ったわね 何考えているのよ」
あかねが血相抱えて怒る

「えぇ、ちょっと待ってよ、玲香 お前が・・・
私の身体 汚くなったから、もう、死にたい・・って言うから、だから・・・
玲香はAV女優をしていた時から汚くなってるのだから一回くらい増えても大丈夫って言ってたじゃん

だから、元々汚いから、そんなこと 気にしないで
死にたいなんて言うなって・・・・・

言ったのに どうして なにが 何で・・・おれ・・・・・俺なんだ」

「ほんとうに春樹は女心がわからない人だわ れいちゃんも・・・・・
それで ず~~~と苦しんでいたの 
そう、そう言う事だったの
あんたたち二人一緒に居た方がいいわね・・・・・
 れいちゃん そうね 不安だよね 
春樹に首輪を付けてここに置いておこうか」

「ちょっと、おれ 犬じゃないから・・・・・」

玲香が胸を押さえて 痛い 痛いと言って笑いをこらえてた。
修平もあかねも、もう、大丈夫だと思ったのだ。
===ドアの修理費 30万円====





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泉 春樹
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