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NO54 玲香 スナック茜で
修平は仕事を終えて家に帰ってくるのは大体18時頃だ。
前はお父さんの見守りもあって、あまり自由がきかなかったが、
先月からお父さんも老人ホームに移った事もあって
少し気が楽になっていた。すると、今度は玲香が家にいる。
修平は仕事から帰ってきて、
今日もあかねをお店に送って行こうとすると、玲香も一緒に行くと言う
「ちょうど、よかったわ、修平さん、悪いけれど、
ジャンボパーキングに車を入れて、店まで来てくれない、
換気扇がおかしいの、ダメなら買い換えるけれど・・・・・
包丁も切れないし
まだ、お客さん来ないから、
ちょっとだけでいいから、見てくれないかしら」
「かまわんよ、換気扇か・・・・・分かるかな」
まだ、18時30分だ、お店の開店時間は19時なのだ。
修平が換気扇を調べ始めた
玲香は暇をもてあまして、
なじみの人たちのボトルを手にすると、
マジックでスカンクの絵を描き、
ボトルの名前の横にハートマークを付けて【スキ】と入れた。
1本 2本 3本と書いていく。
智ちゃんと香奈ちゃんが出勤して来ると
玲香の顔を見て、大はしゃぎだ。
その時、あかねに電話が入る。島さんからだ。
「はい、あかねです 島さん、早いですね」
「1件寄ってから行くから20時30分くらいかな、
今日は4人で行くから頼むよ! あれ`
おいおい、今、れいちゃんの声がしなかったか、
れいちゃん、いるのか」
「えぇ、ちょっと、用事で来ただけ だけど、すぐに帰るわよ」
玲香がいると聞いて、幸ちゃんがすぐに電話をバトンした。
「ちょっと待ってよ、ママ、すぐに行くから、挨拶くらいさせてよ。
頼むよ」
あかねが大きな声で玲香に聞いている
「れいちゃん 幸ちゃんたちが、挨拶をしたいんだって、
すぐに来るっていっているけれど、どうする」
「いいよ、暇だし・・」
「修平さん、いぃい」
「少しならいいけど」
「幸ちゃん、一件目のお店はいいの?」
「あんな店、どうでもいいから、すぐに行くから待っててよ」
そして、幸ちゃんは玲香ファンクラブのみんなに【れいちゃん、参上】
とラインをした。
修平は換気扇のまわりに付着していたゴテゴテの油を取り除くと、
換気扇は勢いよく動き出した。
次は包丁だ、砥石は以前、買っておいていたのですぐに研げた。
島さん、幸ちゃん・ 山田さん、もう一人は初めての人だ。
「やぁ、れいちゃん、事故に遭ったんだって、大変だったね」
「久しぶりだね、会いたかったよ」
「どこの骨が折れたんだって」
「どこで事故ったの」
もう、てんでに話しかける
「島さん、幸ちゃん 山田さん、久しぶりです、だいぶん良くなりました」
「みんなでお見舞いに行こうと思っていたら、
今、身内以外はダメなんだね」
「そうなの、でも、ママからお見舞いしたいって事、聞いていましたよ」
「みんな、心配していたからな、なぁ~」みんなうなずいている。
そこへ 浜口さんと竹原さんが来た。
「れいちゃん、もう、大丈夫なんだって、良かった、良かった」
すると、加藤さんと相沢さんが来る
「あ`居た、居た もう、帰ったかなって思ったよ、間に合ったな」
「ちょっと、待って、ねぇ、
どうして、れいちゃんがいる事、みんなが知っているのよ」
「幸ちゃんからラインが入った、れいちゃん参上って」
「幸ちゃん、みんなに教えたの」
「だって、おれ、れいちゃんのファンクラブの代表だもん」
「そんなファンクラブ、いつ、できたのよ」
「みんなでお見舞いに行こうって言っていた時、
立ち上げたんだ、だから、多分、まだまだ来るよ」
あかねも修平も玲香も香奈子も智美もびっくりだ。
お店を開けた途端、どんどんお客が入ってくる。
れいちゃん、れいちゃんと言って入ってくる。
修平は奥に入って、突き出しの用意だ。
玲香は、お客さんの相手をしてる。
浜口さんが、うれしそうに、れいちゃんにお礼を言った
「れいちゃん、ありがとう、おれもれいちゃんが大好きだ」
浜口さんがみんなにボトルを見せる。
そこにはいつものスカンクと、横にハートマークと名前
そして【スキ】って書いてある。
💛スキ💗浜口💗スキ💛
みんなが自分のボトルを確認すると
4人のボトルにスカンクが書いてあるが、あとは誰にも入っていない、
ブーイングが起きる 幸ちゃんが玲香に言った。
「なんで、なんで、俺たちのボトルには書いてないの」
「幸ちゃん、もう、そのボトル、底じゃない」
「あ、そうか、じゃ、ボトルを入れるから書いてよ、
浜口さんのが【スキ】なんだから、おれのには、【大好き】って入れてよ」
「ちょっと待って、幸ちゃんのが【大好き】なら
俺のには【愛してる】って入れてよ」
もう、スナック茜はハチャメチャになっていた。
===玲香が怒る===
「幸ちゃん、山田さん、中里さん、あんたたち、ここへ何しに来たの
私を見舞いに来たんじゃないの、あんまり、うるさいと帰るわよ」
「ごめんなさい、そんなつもりじゃ・・・・・」幸ちゃんが小さくなった。
みんなも頭を下げている、まるで、小学生だ。
玲香が言った。
「ねぇ、私が歌って欲しい曲を歌えた人にはスカンクを書いてあげる
最初は、ひまわりの約束 歌える人」
「ぼく 歌える」 中里さんがステージで歌い出した。
中里さんのボトルにスカンクを書いていく
みんなは少しおとなしくなって酒を飲み出した。
料理の注文が来る、みんな、食事をしてから飲むつもりだったのに
れいちゃんがいると聞いて飛んできたのだ。
みんな お腹が空いていた。
修平は香奈子にビルの隣にあるコンビ二・デイリーで、
サトウのごはんとハム、卵、ネギ、焼きそばを買って来るように頼んだ。
修平の作る炒飯と焼きそばが美味しいと言って、どんどん注文が来る。
酒屋に電話をして足りなくなったボトルや焼酎などを届けてもらった。
みんな、玲香のスカンクほしさにボトルを注文するのだ。
まだ、半分以上ある人も、新しいボトルに書いてくれと言って注文をする。
玲香が書いているスカンクを見たさに、みんな、玲香の側に寄る。
カラオケは香奈ちゃんに適当に10曲くらい入れてもらった、
歌える人が歌えばいい、
なにしろ、10本以上の瓶にスカンクを入れないと帰れそうもない。
あかねが、
「はい はい、じゃまだから、はい、みんな座って・・・・・」
と言って座らせると、
「れいちゃんはね、10月4日に事故に遭って、今日は11月6日だから、
ちょうど1ヶ月前に事故に遭って肋骨骨折、あばらを2本も折ったの、
だからね、まだまだ、安静にしていないと危ないの、
今日はたまたま、用事があって、ちょっと、お店に寄っただけのはずが、
幸ちゃんに見つかって・・・・・
みんな、巻き込んじゃってごめんなさいね。
だけど、もう、帰してあげないと、
また、傷口がひどくなったら大変だから、
その代わり、今日、受けたボトルは
全部、家で書いてもらうから、それでいいかしら」
「ママ、ごめんな、もう、治ったのかと思った」幸ちゃんがあやまる。
「れいちゃん 悪かったね!身体、大切にしろよ」
「れいちゃん、なんか困った事があったら、言ってな、力になるから」
「お大事に・・・・・!」
みんなが心配そうに玲香を見送った。
「ごめんね、ちょっと、疲れちゃった。ちゃんと復帰したら・・・・
返り咲きパーティを企画するから、それまで待ってね」
玲香はみんなとハイタッチをしながら、
「れいちゃん、待っているから」
「でも、顔を拝めて良かった」
「れいちゃん、スカンク頼むよ」
「れいちゃん、また、あの時の口紅キスがいいなぁ」
みんなとトントン・タッチをしながら、修平と玲香は家に帰った。
玲香は酒こそ飲まなかったが、対応にかなり疲れたようだった。
身も心も過去もすべて受け止めて
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![泉 春樹](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/150768803/profile_ad01dc3ed9385c1a244651cf2e49228c.jpg?width=600&crop=1:1,smart)