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NO18 避けて通るエリア

配車の呼び出し音が鳴った。

春樹はこの時間、このエリアは配車をいつもは受けない。
今日は、ボケーとしていたのか、無線が入った時
間違ってタブレットのOKボタンを押してしまった。
このエリアにはとても嫌なお客がいるのだ。
毎日、タクシーで錦へ向かうホステスだ。
対応が横柄おうへいで運転手を人間扱いしていない女性だ。
同僚仲間でも悪評である。
誰もが配車が入るのを避けている。
過去に幾度か乗せているが、どんどん、態度がひどくなってきている。

あるマンションに住んでいるのだが、迎えに来た事を知らせると、
間違いなく15分は待たせるのだ。
5分経ったならメーターを入れていい事になっているが、
そのホステスが乗り込む前にメーターを入れると
阿修羅のように襲い掛かってくる。
なにしろ、自分が15分も遅れて乗り込んで来て、急げと云う。
インターホーンで呼んですぐにタクシーに乗り込んで来て
急いで下さいと云うのなら、運転手も頑張ろうかと思うが、
15分も待たせてからだ。
しかも、車線までいちいち命令する。ふざけた話だ。
そのホステスのスマホが鳴った。

「あら、カイさん、お席用意してありましてよ、
はい、えぇ、もちろん、
今日はマキちゃんもチエちゃんも出勤していますわ、はい、20時ですね、
4人様でお待ちしています。よろしく」
と、あまーい声でお客に対応している。

そして、スマホを切ったかと思うと態度は一変してまた、
阿修羅に戻るのだ。桜通りから呉服町に入るや否や、
「なにやってるの、早くメーター切りなさいよ、馬鹿じゃないの」
と言う。
このママのビルはマリオン錦だ。
呉服町からまだ200m先につけるのだが、
錦に入った途端、メーターを切れというのだ。
実はこの行為は、タクシー運転手の気配りで、
メーターを切っていた事なのだ。
と云うのも、錦の中は、車でごった返しており渋滞が続く。
つまり、到着してから料金の精算をしていたら、
また、渋滞の原因になる、それをおそれて、錦に入った所で、
すぐに降ろせるように、
運転手は良かれと思って手前で精算を済ませていた。

これは運転手の心配りのはずなのだが、
このママに限っては当たり前になっている。
誰がこんな客を乗せたいと思うのだろうか、
つまり、残念な事だが、この時間このエリアで無線を取るのは、
何も知らない新人運転手で、
その新人たちは、この阿修羅に恐れおののき会社を辞めていくのだ。
このママ一人のために、このエリアのタクシーご利用のお客さんは、
ずいぶん迷惑をしているのは、わかってはいるが、どうにもならない。
春樹は、この地域に来るといつも、このママが頭をよぎるのだった。

7月22日午前3時半ごろ、蒲郡市の東海道新幹線の線路上で
保守用の車両が別の保守用車両に追突して脱線事故が発生した。
事故の影響で、7月23日も東海道新幹線は
名古屋‐浜松間の運休になっている。
早朝、仕事前にテレビを付けると脱線事故のニュースで持ちきりだった。
修平は仕事につくとすぐに名古屋駅に向かった。
名古屋駅のタクシー乗り場はタクシーを待っている人でいっぱいだ。
修平のタクシーに乗車されたお客様は、
新幹線が使用できないので中部国際空港へ変更されたのだ。
口には出せないが、タクシー運転手にとって、
電車の事故はラッキーな事なのだ。
修平はセントレアまでの定額料金16,400円でセントレアへ向かった。


身も心も過去もすべて受け止めて

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泉 春樹
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