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NO32 あかね 玲香に小言
9月4日 水曜日
スナック茜は、今日は静かな一日だった。
いつものように、あかねは玲香に迎えに来てもらった。
「お疲れ様、ママ、今日は暇だったね、街も全然 パッとしなかった」
「金山さん、中沢さん、吉村さん、あと、島さんたちくらいね」
「金山さんって、ほとんど、毎日来ているよね」
「あの人は、税理士さん、うちの会計も金山さんにお願いしているの、
事務所が錦二丁目だから、歩いてもすぐね」
「そんな事より、智ちゃんと香奈ちゃんが
三越のティファニー店に行って、
貰ったピアスの相場を聞いてきたんですって、
ちょっと、一セット20万円もする物、あげたの」
「15年前に買った時は、7、8万円だったと思うけれど、
金相場も上がっているしね」玲香は澄まして言うのだ。
「れいちゃん、本当にあげてもいいの、
返してもらうよう云ってあげようか」
「いいのよ、ママ、別にお金をあげたわけじゃないし、
私が使っていた物が必要なくなったから、使ってって、あげただけだから、
そんな、お金がうんぬんって、話じゃないし」
「それは、あんたがまだ、あの時から金銭感覚が完全に抜けていないから、
そんなことが言えるのよ、
ちょっと、この話、春樹にしたら大変じゃない。大丈夫」
「ママ、やばい、そうだよね、この話、絶対、春樹に内緒ね、
智ちゃんと香奈ちゃんにもよ~く云っておいてね、
春樹、本当に貧乏垂らしなんだもん」
「何、言ってるの、春樹は普通なのよ、あんたがおかしいのよ、
もう少し、自覚を持って反省しないとダメでしょう」
「は~い!」 玲香はあかねの小言が、なんだか、気持ちよかった。
れいちゃんと呼ばれていたのが、あんたに変わったのが、すごく身近に感じたのだ。
「それはそうと、あんたが、智ちゃんたちにブランド物の
ジュエリーなんかあげるものだから、それに目覚めちゃって、
給料上げろって言ってきたのよ。なんでもSNSでたくさん、
お客を引っ張ってくるから、その分、加算してだって」
「へぇ、やる気になってきたのね、良かったじゃない、ママ」
「良くないわよ、SNSだか、なんだか知らないけれど、
おかしな人たちが来たら困っちゃうじゃない、
前にも、一見さんが来た時、警察沙汰になって、大変だったのだから」
「そうなんだ、だったら、顧客を濃くすれば・・・・・」
「濃くするって、どういう事」
「ママ、さ~ 茜、始めてどれくらい」
「そうね、30歳の時に開けたから、15年かしら」
「じゃ、10周年記念とかやったでしょう」
「そんな事、考えた事もなかったわ。
あの頃は、私、一人で充分足りたから・・・」
「香奈ちゃんたちも気合いが入ってきたんだから、
ママ、もう ひと踏ん張りしてよ」
「15周年記念のイベントを企画して、
常連さんたちに新規のお客さんを連れて来てって・・・・・
招待すればいいじゃない」
「イベントって、なにをするの?」
「んんん・・とね、ちょっと待って、
ママ、お客さんって30人くらいは入れる」
「そうね、ギリギリね。28人は入った事があるけれど、限界かな」
「じゃ、28人分のリモコンのスイッチ付きライト球を買ってくるわ、
それをお客さんに渡して、小箱にはスイッチ球を28個分入れておくの、
そして、ママが小箱の中からスイッチ球を一つ取り出して、
スイッチを入れると、お客さんの持っているライト球が光る仕掛け、
それを手にしていたお客さんと、私か香奈ちゃんか智ちゃんか、ママが
お客さんとあっち向いてホイを口でするって云うのはどう!」
「えぇ、私もするの、口で・・・あっち向いてホイをするの・・・どういう事」
「ママがやらないで、どうするのよ、
別にキスをするわけじゃないから、いいでしょう。
だから、幅の広いスプーンを口にくわえて、
そのスプーンにアイスクリームか何かを乗せて、
それをお客さんがあっち向いてホイの時に
うまくアイスクリームを食べられたら
おめでとう賞、できなかったら残念賞、
なんか、粗品を用意しなくちゃ、どう、ダメ」
「本当に私もあっち向いてホイをするの、勘弁してよ」
「ママ、云っておくけれど、ここはママのお店よ、
ママが先頭切ってやらないでどうするのよ」
「大丈夫、スイッチの方には四カ所、スイッチが付いていて、
赤と黄色と青と白があるから、赤はママ、青は私、黄色は智ちゃん、
白は香奈ちゃんって決めておけば、小箱からスイッチ球を出して、
そのスイッチ球のどれかを押すとお客さんのライト球が赤く光ったら
ママがあっち向いてホイをするの、
青だったら私がお客さんとあっち向いてホイをするって云うのは、
いいでしょう。ねぇ、ママ、みんな盛り上がるよ、きっと」
「もう、玲香が責任を持ってしてくれるなら、
私は何も言わないけど・・・・・」
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ママはあんまり乗り気ではなかった。
「じゃ、ママ、10日程 頂戴
それまでには、しっかりした企画を練るから」
と言っているうちに、茜の実家についた。あかねは寄っていけと言ったが、
玲香は仕事中だと言って、街に戻った。
身も心も過去もすべて受け止めて
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![泉 春樹](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/150768803/profile_ad01dc3ed9385c1a244651cf2e49228c.jpg?width=600&crop=1:1,smart)