NO42 忘れることのない1日
その日、あかねと修平は帰ったが、春樹は病院に泊まることになった。
主治医の先生は、今は春樹がそばに添うことが一番の薬になると言って、
付き添いを認めたのだ。
夕食を病院で一緒に食べる・・・・・思いもしなかったことだ。
病室は特別個室にしてもらった テレビ、冷凍冷蔵庫、クローゼット、
応接セット、洗面台、トイレ、ユニットシャワー、ミニキッチン
がついているので、仮眠も楽になるはずだった。
「ねぇ 春樹 背中が痛いの」
「大丈夫か 背中が痛いのか 看護婦さん、呼ぼうか」
ソファーで休んでいた春樹は玲香のベット横にある椅子に腰掛けた。
「ううん 大丈夫 ず~~と、同じ姿勢だから、背中が痛いだけ」
「クッション なかったっけ」春樹がクッションを探そうとすると
「あのさ~私の背中に春樹の腕を枕にさせて」
「どういう事」
「だから、ここに腕を入れて」
玲香は左手で春樹の腕を誘導した。
「あ、少し楽になった このままがいい 腕、痛くない」
玲香の顔に笑顔がこぼれる
「こんな事で楽になるならいいよ
ちょっと、寝汗かいているのかな しめっぽい」
「そうなの 春樹 あとでいいから・・・・・身体を拭いて欲しい」
「いいよ、そんな事なら いくらでもするから」
春樹も玲香の心が戻ってきたので安心をした。
すると、玲香が遊びだす。
春樹の腕を今度は下
今度はお尻の下と言って
あっちこっちに春樹の腕を移動させる。
春樹は言われるとおり腕をずらした。
そのうち、春樹の両腕で玲香を抱きかかえるように腕を広げた
しばらく、その状態が続く。
「腕 痛くない」
「うん、少し しびれてきた」
「ちょっと休憩していいよ、少し楽になってきた」
玲香が小さな声でなにか口ずさんでいる
{朝の空を見上げて ♪ ♫今日という一日が ♫
笑顔でいられるように ♫そっとお願いした♫}
「それ、誰の歌」春樹が聞く
「AKB48って しってる」
「アイドルグループだっけ」
「==365日の紙飛行機==あのね!
{♫ 人は思うよりも ♫ひとりぼっちじゃないんだ
すぐそばのやさしさに♫気づかずにいるだけ ♪♪}
ここの歌詞 大好き 春樹のやさしさが わかるんだ」
顔をくちゃくちゃにしてくちずさんでいる
「春樹 ダイ ダイ ダイ だ~~~いすき」
「わかったから 少し寝ようか、もう、22時だぞ」
その時 ドアを叩く音がした。看護婦さんの夜の見回りだ。
「泉さん どうですか あら`素敵な笑顔 身体も痛くないですか」
「はい、大丈夫です、今から春樹に身体を拭いてもらうの」
「そう、やさしい旦那さんでよかったですね
でも、時間も時間ですから ほどほどにね
何かあったら、そこのブザーを押して下さいね」
看護婦は察したように出て行った。
「玲香 えぇ 今から身体を拭くのか」
「ううん 身体を拭くんじゃなくて、春樹が私の身体を全部 洗うの」
「そんな話 聞いていないぞ」
「今 話したもん」
玲香が身体を洗えと言い出した
「ねぇ 春樹 私の身体はもともと汚いのよね」
「あ、また その話を持ち出すのか 悪かったから許してくれよ」
春樹は困惑を隠せない
「ダメ! だったら 私の身体 きれいに洗って
汚いところ全部 きれいにして・・・・・
きれいにしてくれないと死んでやるから!」
春樹は少し戸惑ったが、身体を拭くくらいならできると思った
玲香が指示する ユニットバスから石けんとタオルとおけにお湯を入れて
春樹が座っていた椅子の上に置けというのだ。
上半身はトラコバンドで肋骨を圧迫固定してあるのでさわれない
玲香は身体を起こすと、背中と肌が見えている部分を
タオルに石けんを付けてきれいに洗ってと言い出した。
そして 春樹に下半身を全部 脱がしてもらうと、
前もお尻も股下も腿も足もつま先まできれいに洗うように指示する
その言い方がすごく愉しそうだ
「春樹 あか でてる 汚いでしょう きれいに洗ってよ
きれいにしてくれないと、汚いままだと死んじゃうよ
だから もっときれいに そこ そこ もっと強く
やさしく そう、今度はお尻も」
と言って 膝をあげる。春樹は指示されるまま、タオルを洗いながら玲香の身体を拭いた。たしかに垢もたまっていた。最後にもう一度お湯を替え、
きれいに拭き取っていると、
あそこがまだ汚いから、もう一度洗えって言うのだ。
「玲香 もう 大丈夫 全部きれいになったから
もう、きたなくないよ きれいだよ」
「ほんとう じゃ、きれいになったあかしに
そこ しっかり、愛撫して・・・・・」
その夜は玲香にとって忘れることのない、かけがえのない1日になった。