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NO74  瑠美さんとあかね家

12月1日(日)
今日は、瑠美をあかね家に招待をした。
誠は仕事だったので、勤務に就くとすぐに八事へ行き、
瑠美を乗せてあかねの家に向かった。

「運転手さんも、茜専属タクシーの方かしら」

「そうです、おかげで売り上げが伸びて助かっています」

「春樹さんって、どういう方なの?」

「どういう方?とは、そうですね、曲がった事が嫌いかな、
融通が利かない・真面目・面倒見がいい・つまり、凄く誠実な人です」

「確かにね、そうねー・・・・・
相乗りタクシーを仕切っている人かしら」

「マスターがお客さんに相乗りを斡旋して、
春樹さんがタクシーを手配するって感じです、
だから、僕たちは春樹さんに、
ルートの確認をしてから、お客さんを送り届けるだけです。
料金も普通に頂いていますので、
〃相乗り〃って事に関しては関与していません」

「そうなのね、つまりはマスターがお客さんを斡旋しているって事ね
ちなみに、マスターって春樹さんのお兄さんですよね」

「そうです、マスターとママは夫婦です。
春樹さんと玲香さんも夫婦です」
誠は3人が養子だと言いそうになったがとどまった。

瑠美も招待を受けて、タクシーに乗ったが、
先日のサラ・ブライトマンの公演を春樹と見に行った件について、
今一度、丁寧に謝った方がいいのかどうか気になっていた。
瑠美はその場の空気を見て判断しようと思ったのだ
あれこれ考えているとあかね家に着いた。
瑠美がお金を払おうとすると、誠は、頂けませんと言って拒否をした。
修平から絶対に貰うなと言われている。
メーターは瑠美を送り届けるまでずーと回しておけとも言われていた。
駐車場にタクシーを止めるとメーターを回したまま誠も家に入った。

インターホーンをならすと、玲香とあかねが現れて
瑠美を中へ誘導する。
ゆいがホッキョクグマのぬいぐるみを持って、誠を出迎える。
「パパ パパ クマさんと待ってたよ、
あのね あのね クマさんが遅いねって言ってたよ」

「そうか、クマさんも待っていたのか、ごめんね
ゆいもたくさん待っていたんだ」

「うん、たくさん た~くさん たぁ~くさぁん 待ってたよ」

中に入ると、8畳間に2つ並んだテーブルが幅をきかしていた。
一番奥に瑠美が座る、その横に修平・春樹・信二・誠、
キッチン側にはあかね・玲香・香奈・智美が座り、一番手前にゆいが居た

春樹が瑠美るみに挨拶をして
「瑠美さん、いらっしゃい、
本当は、料理店でも・・と思ったのですが、
玲香が、そんな気をつかう所より家の方がいいだろうと言うので・・・・・、
遠くから来て頂いて恐縮です。まずは紹介をするね。

スナック茜のママとマスターです。私の兄貴と姉貴です。
そして、ご存じのように私と玲香は夫婦です

私はタクシーの運転手です。
実は、玲香も兄貴も今年の夏まで運転手でした。
兄貴は今は、姉貴と結婚してスナック茜を営んでいます。
そして、信二と誠も茜専属タクシー運転手です、
香奈ちゃんと智ちゃんはスナック茜で働いています。
香奈ちゃんと信二 智ちゃんと誠はもうすぐ結婚をします。
『信二、そうだよな』
そして、こちらがラウンジLのママ 瑠美るみさんです。
と言う事で乾杯温度は兄貴にお願いします」

キッチンカウンターにあるビールサーバーからビールが注がれる
全員に行き渡ると

「では、瑠美さんの歓迎パーティーを祝してかんぱ~い」

「カンパイ」 「乾杯」「かんぱ~い」

「初めまして! 岡田瑠美です よろしくお願いします」

テーブルにはごちそうがたくさん運ばれてくる、
寿司、鳥の唐揚げ、焼売・わかさぎの唐揚げ、
スペアリブの煮付け、サラダ・麻婆春雨・果物・
ホルモンとイモの煮っころがし・
すべて大皿で来るので、みんな、食べたいものを小皿に移して食べるのだ。

「瑠美さん、好き嫌いあるかしら、
このイモの煮っ転がし、私が作ったの、食べて見て」

あかねが世話をやき、一揃い、小皿に盛り付けた。
瑠美は、美味しく頂く・・・・・
「ホルモンとイモって結構、合いますね!この唐揚げも美味しい
ネギをまぶしてあるから、余計に美味しい」

心の中で、今日は相乗りタクシーの話を聞きに来たのにと思いながらも、ビールを飲んだ。食事も美味しい

「これ、私が作ったの、マスターに作り方を聞きながらだけど、美味しいでしょう」 香奈が自慢をする
「このスペアリブ 私が煮たの いけるでしょう」
智美も負けちゃいない、
ゆいは焼売を口に頬張っている
みんな、和気藹々わきあいあいで食事をした。ビールが進む!
それなりに、食事も堪能した所で

女性群はテーブルの片付けに入った

「瑠美さん、うちはこんな感じで、気をつかう必要は無いので、
ざっくばらんでいいですよ。
今日はまず、私の願っている事をお話ししましょう」
修平が口火を切る

「瑠美さん、兄貴の話、長いから、果物でも食べながら聞いた方がいいよ」

「本当、マスターもママさんも、気さくな方たちで助かります」

「では、では、今の時勢、腹が立つ事がとても多いのですが、
結局、一言で言えば、人のつながりがない・・・・・
これがすべてだと思うのです、
だから、人にやさしくなれない、人に気遣きづかいなど全くできない、
人を信用しない、言いだしたら切りがありません、
それで、私が思っているのは、飲んでいる時くらいは、
楽しく飲んで頂きたい。
見知らぬ人が隣に座ったら、優しく声を掛けてあげればいい、
そして、一緒に楽しく飲めばいい、飲み過ぎて、電車がなくなった・・・・・

酒代よりタクシー代金の方が高いなんてぼやかなくても言いように・・・・・

最初にしなければならないのが、お客さんの帰る足です。
公共交通機関を気にしながら飲んでいても美味しくない。
タクシーを考えると余計に飲めなくなる。
しかし、もしも、タクシー代がお客さんが思っている料金の3分の1で
帰られるとすれば、どうなのかという事です。

相乗りと言っても、全く知らない人と相席をするのでは無く、
多少なりとも顔を知っている、あるいは話題が共通している、
つまり、同じお店のお客さんであれば
ママやホステスさんたちの話題で時を過ごせる、
そんな環境の中で相乗りをするのであれば気分もそんなに悪くない。

また、これからも3分の1の料金で帰りたいのであれば、
お店に迷惑を掛けられない、
タクシー内でめれば、茜専属タクシーも使えなければ
お店にも行けなくなる、また、素性も明らかにしているので下手は打てない
などを含み合わせれば、たとえ気狂い水を飲んでいるにしても、
そんな無茶はできないと思います。

お客さん同士もそうですが、
何より、運転手にとってこんなにありがたい事はありません。
居眠りされても、多少強引に起こしてもクレームにならない。
忘れ物は、何処の誰か、すぐに特定できる、
嘔吐をされても店側が責任をとってくれるとなれば、
運転手はみんな、茜専属タクシーになりたいと思うでしょう」

瑠美が質問をした
「確かに3分の1の料金で帰れるのであれば、
店側で多少でも斡旋料を取ってもおかしくないのでは・・・・・」

「それはやめておきましょう、
そんな事をすれば、お客さんの配分でもめるような事があった時、
責任を取れますか?あくまで予想で料金を提示しています、
そして、先に相乗りする方々の精算をしてしまいますので、
多少なりともずれが生じます。
しかし、手数料も何も貰っていないからこそ、
お客さんにも納得して頂けます。

また、店側でマージンを取れば、
運転手からもマージンが取れるという事になりかねません。
相乗りタクシーはビジネスではありません。
錦の活性化に向けた応援です。力です。

また、現在 夜の栄・錦付近の集客範囲は大体10 Km範囲内です。
しかし、タクシーの料金が3分の1になると言う事は、
逆に集客範囲がかなり広がると考えて良いと思います。

つまり、飲屋街に夜遅くまで飲む人が増えるはずです。
そうなれば、瑠美さんのお店も廻転が良くなり、忙しくなると思います

相乗りタクシーのマージンなど取らなくても充分に
採算は取れるようになると思いますよ」

「そこまで、考えていらっしゃるのですね、分かりました
どうか、私どもにもお力を貸してください」

「ただ、困った事がありまして、今までは、茜一件だったので、
私一人でも間に合ったのですが・・・・・
今後は、智ちゃん・香奈ちゃん・瑠美さんのお店も加えて相乗りの段取りを組むには到底、私一人では補えません。
どういう事かと申しますと、お客さんが相乗りと言われましても、
同じ方向に帰宅する方がそんなにいるわけでもありません、
これが、4件のお店が一つになる事で、
相乗りが成立する率がすごく高くなります。
いずれは、方向性を記したお店作りをしていこうと考えています。
北西店・北東店・南西店・南東店と、
お客様が帰る方向のお店に立ち寄る事で
スムーズに相乗りが斡旋できるようになればシメタものです」

「そうなったら、もう、相乗り待合室の喫茶店でも充分だわね」

「そうですね!問題は、その待合室でお客様同士で顔見知りになって
自分たちで相乗り客の選択、料金の交渉等ができれば、
私たちも必要なくなるのですが、いや、早くそうなって欲しいものです」

「本当だわ、きっと、その頃は錦もお客さんで、ごった返しているわね
なんだか、錦がそんな街になるような気がしてきたわ」

「そうです、そうなるまで頑張りましょう
錦が忙しくなれば客引きもいなくなります。
健全な飲屋街にしていきましょう」

「今日は話を聞きに来て、本当に良かったわ、
それで、私どもはマスターが推薦する
斡旋してくれる方を30万円で雇えば良いのかしら」

「マスターって・・・・・呼び方 おかしいわ!
修平さんって呼んであげて、その方が耳触りがいいわ」
あかねが口を挟む

修平が話を続けた
「私も最初は、そのような方向で考えていたのだけれど、
瑠美さんはPCは使えますか」

「まぁ、それなりに・・・文書を書くくらいでしたらワードで」

「ワードやエクセルを使えれば充分です。
私も最初はお店側で運転手を雇って貰おうと考えていたのですが、
よくよく考えれば、相乗りを希望されてる方は、
最初に契約書に必要事項を書いているので、住所も分かっているわけです。
つまり、今、来ているお客さんをPCに打ち込んでいけば、
PCが勝手に同じ方向のお客さんをリストアップしてくれる、
後はお客さんの帰る時間帯が一致すればいいわけですので、
別に個々のお店で人を雇わなくてもいいのではと気がつきました。
と言っても、私一人では到底こなせません。あと一人・二人は必要になってきますので、その時はまた相談させてください。
とりあえず、年明けから、4店舗で初めていきましょう。
それまでにアプリも作らなければならないし、
タクシー運転手も30人ほど確保しなければなりません

春樹、お前にはタクシー運転手の方を頼んだぞ」

「了解です 兄貴! 誠も信二もいるから大丈夫だよ」

「瑠美さん、他に何か質問があれば・・・・・」

「いえ、本当に素晴らしい相乗りタクシーでわくわくしてきました」

夕方18時に来て、もう21時を過ぎていた
誠のタクシーメーターはすでに10,000円を超えている、
そして、また、このまま八事まで瑠美を送り届けるので
14,000円は堅いと思った。日曜日にこの数字はとても嬉しかった。
マスターから20,000円を預かると瑠美さんを八事に送った。
ゆいと一緒に食事をして話も聞けた。
誠は修平に着いていけば間違いないと確信したのだ

身も心も過去もすべて受け止めて

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泉 春樹
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