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NO86 「香奈」オープン
スナック茜の仕事始めは1月14日(火)なのだ。
錦界隈は例年のごとく年末で閉めたお店も結構あるようだ。
スナック茜の向かい側に、そう、大津通を挟んだ東側のビルで
20坪のパブが営業をしていたのだが、此処も12月で閉業した
昨年の11月頃、知り合いの不動産屋が修平に
このテナントを居抜きでやってもらえないかと話を持ちかけていたのだ。
修平は当初は錦2丁目と考えていたのだが、
不動産屋の意向ですぐに借りてくれるのであれば
保証金・敷金共に20%オフと言う事なので
急遽このテナントに決めたのだった。
それなりのステージも設置されている。
元々はフィリピンパブのようだ。
内装に少し手を加えテーブル・ソファを入れ替えると
それなりに見栄えのするお店になった。
店の名は「香奈」とした。まずは香奈子のお店を開店させたのだ。
今週11日(土)までは茜のお客が「香奈」に移行する。
つまり茜は13日までは閉めているので、
スナック茜の常連さんは「香奈」に足を向ける事になる。
まだ、表だっての開店には至っているわけではない、
いわば、予備練習みたいな事である。
スタップも3人雇い入れたのでその教育もある。
何を教育するというわけでもないが、
とりあえず、香奈子がママとしての自覚を持って雇い入れた
3人を上手くリードできるように認識させる事が重要なのだ。
「おめでとう」
「中沢さん・吉村さん、おめでとうございます
本年もどうぞよろしくお願いします」
「明けましておめでとう、良い店だね」
「村井さん 井沢さん おめでとうございます
本年もよろしくお願いします」
「広いな~おめでとう」
「加藤さん、沢田さん おめでとうございます本年もよろしくお願いします
「香奈ちゃんのお店なんだって?」
「浜口さん、おめでとうございます。私に出来るかどうか不安だらけです」
「香奈ちゃん、頑張れよ、困った事があったら言ってな、力になるから」
「あの子、新人さんか?」
あっという間に15人の常連さん席を埋めた。
後からまた、吉田さん達が見えた。
修平が挨拶をする
「えぇ~みなさん、明けましておめでとうございます
兼ねてから、口にしていましたように、
ようやく茜の姉妹店【香奈】を開店する事が出来ました。
これも、ひとえに皆様のお力添え合っての賜物です
今後ともどうかよろしくお願い申し上げます」
「スカンクの開店は?」幸ちゃんが口にした
「スカンクは只今、冬眠中です」 玲香が笑って答える
「スカンクって冬眠するんだ 本当だ、冬眠をするって書いてある」
幸ちゃんが早速、グーグルで調べていた。
「このお店の主役は、香奈ちゃんですので・・・・・
香奈ママを今後ともよろしくお願いします 幸ちゃん 分かったぁ~」
「香奈ママから一言、挨拶を」 玲香が香奈子にバトンタッチをする
「私、今日 ママデビューした新人の香奈子です。
今まで通り可愛がってください、お願いします。
それから、めいさん、松子さん、優香さんの新人スタップです。
私、同様 よろしくお願いします」
修平が、乾杯音頭を取った。
「では、2025年1月6日 香奈のオープンに先立ち乾杯!」
香奈子が新人スタップを引き連れて各自に挨拶をして廻る
20坪はあるテナントは玄関から正面奥に畳2畳ほどのステージが見える
また、玄関から入った左側には長く連なったソファーが奥まで伸びていた。12人は座れる、そこにテーブルが3卓あり、
小椅子が無造作に5席ほど置いてある。
玄関から右側は手前に化粧室があり
右中央からカウンター8席が円形になって2つのカウンターが構えている。その奥はキッチンになっているが仕切ってあるので
お客様には見えないのだ。
智美は手前のカウンター内でアルコールやソフトドリンクを作っていた。
修平はキッチンで料理を作っている。
あかねと玲香は奥のカウンターで
金山さんや沢田さんと静かにお酒を飲んでいる。
香奈子はめいさんを小椅子に座らせて村井さん達のお相手をお願いした。
ショートカットに茶髪、ちょっぴりあどけなさの残るチャーミングな子だ。
とても27歳には見えない
竹原さん達には優香さん、孝子さんには浅井さんのお相手を任せた。
本来、スナックがお客さんの席に座るのは許されない事だが、
実は修平は今まで散々、玲香の振る舞いに気がとがめていたので
こっそりと風俗営業許可証も取っていたのだ。
表だって大きく謳ってはいないが、いざって時には、
必ず役に立つと思っている。
なので、飲食店営業許可証はもちろんの事、
深夜酒類提供飲食店営業許可証も得ている。
だからと云って玲香や香奈子に
キャバクラみたいな事をしていいとはいっさい言っていないのだ。
ただ、のびのびと羽目を外さない程度に
接客していければ良いと考えていた。
「金山さん、経理をお願いしますね、
智ちゃんのお店も来月予定をしているから3店舗になるけどいいかしら」
「もちろんだよ、うれしいね~、茜が大きくなると私も気合いが入る・・・・
いわば、一心同体みたいなもんだ、こちらこそ、よろしくお願いします」
と話していると、加藤さんが玲香にデュエットをしてくれと言って来た。
曲は(愛が生まれた日)だ。広いステージで歌う、
加藤さんは去年の暮れに玲香とデュエットした
この曲が忘れられないようだ。
玲香が加藤さんの腰に手を回して歌う、玲香と見つめ合って歌う、
それが忘れられないらしい。
歌い終えたかと思ったら、幸ちゃんが (打上花火)をうたおうと言ってきた。そうしている内に次から次と玲香にデュエットの予約が入る。
手を繋いで歌ったり、肩を抱き合って歌ったり、
腰に手を回したり、腕を組んだりして、ふれあいながら歌ってくれるので、
みんな、それが一層の親近感を感じるようだ。
結局、「香奈」も、いつの間にか、玲香のペースになってしまった。
お尻フリフリ、お尻フリフリ お尻フリフリ、プイ・プイを
誰からともなく歌い出す。歌が始まればお尻を振らないわけにはいかない。
常連客はみんな、暮れに香奈子も智美もお尻を揺らして
踊っていたのを覚えているので、そばにおいでと誘い出す、
つまり、玲香の行く所はすべて玲香のお店になってしまうのだった。
新人のスタップは、呆気にとられている。
お客さんの手が伸びてきて戸惑ったのだが、
香奈ママも踊っているので・・・・・雰囲気に呑まれるように・・・・・踊っていた。
修平とあかねは、こうなる事は疾うにわかっていたようだ
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![泉 春樹](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/150768803/profile_ad01dc3ed9385c1a244651cf2e49228c.jpg?width=600&crop=1:1,smart)