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NO43  玲香のきざし

 10月6日 日曜日 午後一時
今日も28度を超えている。
今年は本当に異常の暑さだ
そんな事を言いながら
あかねと修平は東部医療センターに来た。
最近の日課になってきている

昨日は玲香が動乱して大変だったのだ。

「れいちゃん、どうだ、少しは落ち着いたか、胸はどうだ」

「今朝から、体を動かすとすごく痛くて、激痛が走るの、息するのも辛い
看護婦さんが言っていたけれど、この2、3日がピークだって・・・・・
これを乗り越えれば、少しは楽になるから、今は我慢してねって、」

「春樹は?」

「今、ドンキに行っている 
お姉ちゃんが持ってきた、このクッション大きいから
もう少し、小さいクッションを買いに行った」

「そうね、ちょっと大きすぎたわね 昨夜は眠れた?」

「うん よく寝れた、春樹に身体を拭いてもらった」
玲香がニコニコして言う

「そう、身体を拭いてもらったの よかったね
じゃ、もう、きれいね なにも迷うことはないわね」

「うん 大丈夫 春樹にたくさん甘えたから・・・・・」

「あら、甘えたのね よかったね、
修平さん 
れいちゃん、春樹に甘えたんだって・・・・・」

「あいつ どんな顔して受け止めたんだろうか」

「私も甘えてみたい・・・・・」

「おい、ちょっと なんだか こわいな」
修平が怖じけずいた。

「春樹 まじめに身体を拭いてたかしら」

「お姉ちゃんが置いていった犬だったよ」

「ちゃんとお手もおかわりもした?」

「うん、しっかり 言うこと、聞いてくれた」

「よかったわね じゃぁ 春樹には
しばらく犬になっててもらった方がいいわね」

「修平さんも犬になってくれたら、たくさん甘えられるのにね」

「ちょっと待てよ どこで犬の話になったんだ」

3人は大笑いだ。そこへ春樹が戻ってきた。

「クッション これでいいか?」
円柱のクッションと薄い座布団型のクッション だ
「いいかも その円柱クッション 敷いてみる」
玲香はそれを腰に当てると
「これ いいかも ちょっと使ってみる」

「春樹 昨日は大変だったようだな」修平がなにやら言いたそうだ。

「そうだよ、もう、おれの腕をクッション代わりにされたり、
身体を拭けって命令されて大変だった」

「あら、昨夜は犬になってたんじゃないの」あかねが言う

「わん  ってか」
大笑いだ

玲香が肋骨に響くと言って 辛そうだった

「あら`やだ` そうだわね、今が一番辛い時よね、
着替えを持ってきたけれど、どうする、春樹 手伝ってあげてよ」

「きのう、パンティだけは着替えたけれど、どうする 玲香?」

「もうすぐ、回診あるから そのあと 着替える」

「でも、よかったわね、昨日は本当にれいちゃん 
引きこもって
どうしようかと思ったけれど、もう、大丈夫よね」

「ごめんなさい 昨日はなんか、狂っちゃった もう、大丈夫だから」

「じゃぁ、私たち 帰るわよ、
今からお父さんを連れて老人ホームへ入居させるの」

「おじさんの入居先 決まったんだ?」
玲香が聞いた。
「そう、やっとな、上社駅から少しあるけど
スーパーヤマナカも近くにあるし、場所も悪くない」

「じゃぁ 春樹 あんた しばらく犬になってなさいよ
そうね、名前はハルちゃんがいいかしら」
あかねが笑って言うと
「ハル お手!」と言って玲香が左手を差し出す

「わん」と吠えて春樹は右手を玲香の手の上に置いた

「勘弁してよ 犬なんかやってられないよ
ほんとうに二人して・・・・・かんべんしてよ」


修平とあかねは、その後、家に戻ると
お父さんを名東区にある老人ホームへ連れて行った。
以前より、申し込みをしていた老人ホームがやっと空いたのだ。
お父さんも、今年の暑さにはずいぶんこたえているらしい。
自分の思うように、体が動きにくくなった事もあり
老人ホームに入居する事を承諾したのだった。


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泉 春樹
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