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NO81 メリークリスマス


12月25日 今日のスナック茜には
{本日貸し切り}の文字が大きくドアに貼られていた。
PM20時になると、ぞろぞろぞろぞろ常連客がお店に入って来る。
玲香・あかね・智美・香奈子が玄関先でサンタの衣装を着て出迎えた。
ハンドベルを鳴らしながらジングルベルを歌っている。
香奈子と智美が一人一人に光る球を手渡している。
15周年記念の時にも渡しているので
みんなは、これがなんなのか分かっているのだ。

ジングルベル ジングルベル 鈴が鳴る 今日も楽しい そりの遊び  オー
♬♪♪♬    ♬♪♪♬    ♬♪♪♬   ♬♪♪♬   ♬♪♪♬
ジングルベル  ジングルベル 鈴が鳴る さぁさ 行こうよ そりの遊び
♬♪♪♬    ♬♪♪♬    ♬♪♪♬  ♬♪♪♬    ♬♪♪♬
村井さん 井沢さん 山口さん 島さん 幸ちゃん 山田さん 秋田さん 吉田さん 金山さん 光る球を手にして26人全員が席に着いた。

修平もサンタクロースの格好をして挨拶をする

「メリークリスマス 皆さん ようこそ!
本日はクリスマスと中西玲香の全快祝いを兼ねてパーティーを開催しました
また、今日 招待させて頂きましたお客様方こそ
スナック茜の大切な大切なお客様だと確信しております。

ただ、ここの所、相乗りタクシーを求めて来るお客様が幅をきかし、
常連の皆様には多大なご迷惑をおかけして申し訳なく思っている所です。
今日はその穴埋めも含めて楽しい企画を練りましたので、
どうか、ゆっくり楽しいお時間をお過ごし頂けるよう
務めさせて頂きますのでよろしくお願いします、
では、れいちゃんから一言!」

香奈子と智美がお客さんにビールジョッキを手渡してまわる

「メリークリスマス 今日は私のために集まってくれてありがとう
おかげさまで、あばらも大分 引っ付いたみたいです。
身体も横に振ってもいたくなくなりました。
お酒も少しなら飲んでもいいって先生が言っていましたので、
今日はじゃんじゃん飲みましょう、では乾杯を!
メリークリスマス カンパ~イ」

「かんぱ~い 乾杯」

すると、幸ちゃんが立ち上がって、
玲香にザ・ノースフェイスの紙袋を手渡した

「れいちゃん、快復 おめでとう 
身体が冷えないようにと・・・・・このダウンジャケット

実はこれ、ここに居るみんなからのクリスマスプレゼントです。
提案者は金山さんなんだけど・・・・・
オレ、れいちゃんのファンクラブの会長だし・・・・・代表して・・・・・
れいちゃん、本当におめでとう」

全員が玲香におめでとうと言って拍手をした

吉田さんが「着てみたら」って言うと、みんなも見たいと言った。

玲香は、思いがけないプレゼントで胸がいっぱいだ。
こみ上げてくる涙を拭き取りながら、
黄色のダウンジャケットを着ると
智美も香奈子もあかねも口々に似合うって言う、
いや、全員が似合うと言っている

「黄色がいいねぇ、れいちゃんにぴったりだ」

「めちゃ似合ってるよ」

「そうだろう、赤か黄色と思ったけど、
いやぁ~こっちにして良かったな」
玲香は嬉しさのあまり、そばにいた金山さんに抱きついてしまった。

「ありがとう!金山さん 幸ちゃん 島さん 村井さん 中里さん 中村さん 浜口さん みんな みんな 本当にありがとう 
最高のサプライズ こんなの初めてです・・・・・本当にありがとう」

玲香はダウンジャケットをしまうと、トイレに走った。
涙が化粧を落としてしまったようだ。

あかねが、玲香に変わってもう一度、
ザ・ノースフェイスのダウンジャケットのお礼を言うと、

各テーブルにおいてあるケーキのロウソクに火を付けて店の明かりを消したカラオケボックスから【きよしこの夜】が流れてきた。
全員でモニターを見ながら合唱する。

きよしこのよる ほしはひかり   Silent night! Holy night!
すくいのみこは まぶねのなかに  All is calm, all is bright
ねむりたもう いとやすく     Round yon virgin mother and child!
                 Holy infant, so tender and mild,
きよしこのよる みつげうけし     Sleep in heavenly peace!
まきびとたちは みこのみまえに    Sleep in heavenly peace!
ぬかずきぬ かしこみて

きよしこのよる みこのえみに
めぐみのみよの あしたのひかり
かがやけり ほがらかに

日本語で歌う人 英語で歌える人、様々だが、
それがきれいに調和して聞こえるのだ

明かりを付けると、各テーブルでケーキカットが始まった。
あかね・玲香・香奈子・智美がナイフを入れる。
人数分に振り分けると、
修平が鶏の腿足の照り焼きを人数分持ってきた。
皿の上には腿足の照り焼きの隅にウインナーやフライドポテトも付いていた

修平達が、玄関前と奥のステージにテーブルをセットすると
二人羽織ににんばおりが始まった。

「それでは皆さん、ただ今より、二人羽織ににんばおりを始めます。
手に持っている光玉が光った人は前に出て下さい。
前回のように青く光れば香奈子ちゃんとペア
赤く光れば智ちゃんとペア
白く光ればママとペア
黄色く光れば私とペアです
一度に二組のカップルが右側と左側で競い合いますので頑張って下さい
スタートのかけ声と同時に、サンタの羽織を着た人の後ろから、
私たちが羽織の中に入り袖に手を通して
お客さんの口の中にケーキを運びます。
持ち時間、3分の間にたくさん食べた方が勝ちです。
勝った人には、きっと、良い事があるんじゃ無いかと思いますが・・・・・
お楽しみに」

あかねが、箱から取り出した光玉のスイッチを押すと、
安井さんが香奈ちゃんとペアになった。
もう一組はあかねと島さんだ。
島さんはあかねが好きなのでウハウハだ。

席に着くとあかねがサンタの羽織の中でもぞもぞしている
「島さん、いつもありがとう、この店は島さんでもっているのだから、
これからもお願いね」
あかねが小さな声で島さんの背中の中でささやいた。
もう、それだけで島さんはゾクゾクしている

スタートが始まると、香奈子は左手で深いお皿を押さえて、
右手のスプーンでケーキをすくうのだが、すくったのかどうか感触がない。
安井さんが右、左と声を掛けるがよく分からないので、
今度は左手でケーキを押さえて、右手でケーキを手でちぎっては、
安井さんの口にケーキを運んだ。
みんなが右だ、もう少し上だと言っている、
安井さんは口を大きく開けてケーキを追うのだが、
そのケーキが鼻についたり、顎に付いたり、かなり難しいのだ。
香奈子は左手を安井さんの顔に当てて、口元を探る
ようやく見つけた口の中に右手でケーキを頬張った
次に香奈子が手にした所は生クリームだった。
手にたくさんベタベタ付いているので
安井さん口の中で拭い取るようにして手を押し込んだ。
安井さんは香奈子の生クリームの付いた指をしゃぶる。
生クリームが顔中に付いている。
香奈子がしゃぶられた指をもう一度、
一本ずつきれいに口で拭き取ってもらうと
今度は安井さんの左右のほっぺのに手の平を拭った

みんながそれを見て大笑いをしている
安井さんの顔がぐちゃぐちゃになっている。

香奈子は、またケーキをさぐっては安井さんの口の中に押し込んだ。

あかねと島さんも大変な事になっていた。
あかねは両手でケーキそのものを島さんの顔にすり寄せ、
「大丈夫かしら?入れるわよ」と言ってケーキそのものを口に持って行く、
それを島さんがかぶりつくのだが、
顔中生クリームだらけになって、鼻の頭は真っ白だ。
これこそサンタクロース状態だ。
それでも頑張って武者振むしゃぶり付いている。そのケーキの破片が下に落ちる
みんなが島さんの顔を指さして笑っている

一回目の二人羽織は島さん達が勝った。
あかねがおしぼりで島さんの顔をきれいに拭くと頬に軽くキスをした。
島さんはガッツポーズだ。みんな、うらやましそうにしている。
お客さんたちは次は自分だと思うとケーキに手をつける事ができないのだ。
鶏の腿足をかぶりついている

二回目は、また、あかねが当たった。今度は吉田さんとだ。
智ちゃんは山田さんだ。

あかねが吉田さんの羽織の中に顔を埋めると、
また、島さんの時のようにお礼を言った。

「吉田さん、いつもありがとう、
ここの所、相乗りでごった返していてごめんなさいね、
それから玲香にダウンジャケット、本当にありがとう、
これからもよろしくね」
背後からのあかねのひそひそ声が も色っぽい

「何を言っているんだ、私だって相乗りは使わせてもらっているし
れいちゃん、回復して良かったな、これから、もっともっと忙しくなるぞ」

吉田さんは、顔を後ろに回してあかねを諭すように話していると
スタートの合図がなった。
修平がサンタの格好をして指揮をっている。

智美はマイペースで
「山田さん、ケーキ、すくえてる?」
「上手く掬えているよ、そのまま、まっすぐ持ってきて・・ストップ」
山田さんは口を前に出してケーキを食べる。
また、智美がスプーンで探りながら山田さんに聞く
「これ、ケーキ? 掬えた?」

「落ちた!手で拾っていいから、頂戴」

「うん、わかった!ハイ あ~ん」と言って、口を開けるように言うと、
山田さんも「あ~~ん」と言って大きな口を開けていた。
山田さんは年配者なので智美とちょうどテンポがあっているようだ。

玲香はお客さんたちのジョッキビールが無くなりそうなので
空になったジョッキにビールを注いで手渡していた。
幸ちゃんの横に座ると
「幸ちゃん、ありがとう、スキ スキ 大好き」って言うと、
今度は隣にいる島さんにもスキ スキ 大好きと言っている。
そうかと思うと、また席を移動して、金山さん・浜口さん
結局、みんなにスキ スキ 大好きを連発した。
不思議に玲香がみんなにスキを連発してもアクが無いのか
みんなは素直に受け止める事ができるようだ。

玲香が 二人羽織に応援歌を歌い出した。
【中島みゆきのファイト】

ファイト!♬♪♪♬
闘う君の唄を ♬♪♪♬
闘わないやつがわらうだろう ♬♪♪♬

ファイト!♬♪♪♬
冷たい水の中を ♬♪♪♬
ふるえながらのぼってゆけ ♬♪♪♬

タタタタ タタタタタ ファイト!♬♪♪♬
♬♪♪♬    ♬♪♪♬ ファイト!♬♪♪♬  
タタタタ タタタタタ ファイト!♬♪♪♬
♬♪♪♬    ♬♪♪♬ ファイト!♬♪♪♬

玲香が同じフレーズばかり歌っていると、
みんなもリズムだけを口ずさんでファイトの所はみんな大合唱だ。

一方、あかねは2回目と言う事もあって要領を得たのか、
先にケーキを皿の中で崩してから、
ケーキをすくって吉田さんの口に運んでいる
結構、上手く言っているようだ。
みんなが【右】【左】【上】【下】と教えてくれるので、
なんとなくケーキの配置も分かるようだ。

「タイムオーバー」修平が大きな声でストップをかける

あかねの2勝だ。

次は玲香と村井さんだった。
玲香が村井さんの羽織の中に頭を入れて袖を通すと

「ありがとう、村井さん 
村井さんの背中 温かい いい匂い!」

「えぇ、それ、もしかして汗のにおいだろ」

「でも、エキゾチック いい匂い スキかも・・・・・ 
あ`春樹にいらん事を言わないでね
また、あいつ ヤキモチやくから・・・・・」
玲香がサンタの袖を通した腕で村井さんをギュッと抱きしめる

「わかった 分かった」村井さんが嬉しそうに笑いながら答えた。

そんなふうにして合計10組の二人羽織は終わった。

その次は、クリスマスソングをカラオケした
球が光った人が歌うのだ。
デュエットの相手はお客さんが選ぶ事ができるので
それが嬉しいらしい。
山下達郎 / クリスマス・イブ
幸ちゃんが玲香を指名する

松田聖子/Pearl White Eve
似古さんが智美と手を繋いで歌ってる

松任谷由実/恋人がサンタクロース
中沢さんが香奈子を指名した
気持ちよさそうに歌っている

次々と歌い終えると
修平が赤い大きなサンタ袋を持ってきて、
お客さん一人一人に、袋の中に手を入れて一品取ってもらった 。
光る置物やシャンパン、ワイン、サンタブーツのお菓子、
Tシャツ、マフラー

赤い三角帽子を被ったサンタゴジラの置物
{これは修平が一番気に入った品物だ、
人が近づくと目が光り口から煙が出るのだ}等、
プレゼント品はすべて、包装して赤いリボンが付けてあるので
受け取ったプレゼント品が何なのか分からないのだ、
一つ一つ、大きさも重さも違う。
お客さんはみんな思い思いに推測している。

「これ、瓶だよね、ワインかな」

「箱の中でごそごそ音がする、何かな?」

「サンタさんのブーツにお菓子がたくさん入っている、
孫にちょうどよかった」

「みなさん、プレゼント品は家に持ち帰ってから開けて下さい。
今ここで開けると、浦島太郎になりますよ」
修平が忠告をする!

午前0時、あっという間の4時間だった。
修平がお客さんからタクシーの要望を聞くと、
もう、みんな慣れたもので、めいめいで相乗りの人をつのっていた、
桑名の吉田さんは弥富の安井さん・蟹江の金山さんと乗り合わせる
一宮の中沢さんは清洲の山畑さんさんと帰るようだ。
山畑さんが中沢さんに2000円を払っている
もう、修平が一々段取りを組まなくても、各自でできているので、
タクシーの台数だけを確認して春樹に連絡を取った
下では春樹達が修平のメールを受けて、10台のタクシーが待機をしていた

こうして、スナック茜のクリスマスの夜は終わった。

身も心も過去もすべて受け止めて


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泉 春樹
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