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NO68 無賃乗車
そろそろ、忘年会シーズン突入のはずなのだが、街はまだ元気がない。
18時頃から22時頃までは人々は多数いるが、22時を過ぎると人はいなくなる
つまり、本来ならば22時頃から、
タクシー利用者が現れるはずなのに人はいないのだ。
深夜0時頃、久しぶりに千種駅前で飲酒検問にあった。
最近、飲酒検問を見た事がなかったのでびっくりだ。
しかも、今まで、タクシーは素通りできていたのに、
今回は春樹も息を調べられた。
それも、お客さんが乗車していると言うのに・・・・・
警察も点数稼ぎで忙しいようだ。
今池でお客さんを降ろすとGOOアプリが入った。
仕事だ、春樹はナビに従ってお迎えに行く。どうやら、お店からの依頼だ。男性が2人乗ってきて、1人は新瑞で降ろし、
もう一人は、本星崎の駅前で降りたのだが、
「お客様、料金は5200円です、お支払いは・・・・・」
「おい、おかしいな、財布がない、お前 財布を取っただろ」
「お客さん、私はお客さんの前で運転しているのに、
取れるわけなど無いでしょう」
「じゃ、なんで無いんだ、お前が取らなきゃ、誰が取るんだ」
【また、言い掛かりの客だ、いや、こんな奴 客じゃない】
「お客さん、お金を払っていただけないのなら警察を呼びますよ」
「おお、呼べ」
春樹は警察を呼んだ。警察官が3人来た。
春樹は警察官に事の経緯を話すと
「言い掛かりをつけられてお金を払ってもらえないので困っています、
お客は財布がなくなったので『お前が取っただろう』と言うのです。後ろの客の財布など運転をしていて取れるわけがないでしょう」
すると、さっきまでお客の話を聞いていた警察官が来て
「そうなんだが、あの人は財布は持っていたと言う、
お金も財布の中に3万円が入っていたと言っている
車の中を探しましたか?」
警察官はお客の言う事を信じているのか、
春樹にタクシーの中を探せと言い出した。
「車の中を探そうにも、車から降りないもので探せもしない、
いや、それどころか、本人は探す気など全くありません
あの男が、本当に財布を持っていないのか、
持っているのか身体検査をして下さい。
そうすれば、ハッキリすると思います」
「とりあえず探しましょう」と、言って、身体検査にはふれてくれない。
春樹は警察官と、
後ろのマットの下やシートも外して調べた。出てくるわけがない。
「私はお金など取っていないし、取れるわけがない、
お金を払うように言ってください、身体検査をしたらどうですか?」
「本人に払う意思はあるんだ、
ただ、財布が出てこないから払えないと言っている」
「そんな事、ウソに決まっているじゃないですか
だから、身体検査をしたら分かる事でしょう」
「そうなんだが、万が一出てこなかったらどうする。
推測だけで調べる事は我々もできないんだ」
「そんなバカな・・・・・明らかに詐欺じゃないですか」
「と、言っても、こればかりはどうにもならん」
警察官がその言い掛かりの男に、『免許証を見せろ』と言うと、
『免許証は持っていない』と言う。住所、名前を聞いても、
『なんで、教えな、いかんのだ、おれは悪い事はしていない』と言うのだ。
「では、落とし物届を出してもらうので署まで来てもらう事になるが、
その時に住所、名前が言えないんでは困る」
警察官がそう言っても、お客は取り合わずに春樹にわざと疑いを掛ける
「おい、あの運転手、逃がすなよ、あいつをもっと調べろ、
俺は朝までかかっても平気だ・・・・・
あいつを調べろ!3万円を返してもらうからな」
警察官も春樹が取ったとは思っていないが、
そういう以上、一応、春樹も調べなければならない
春樹は、どこでもすべて調べてくれと言った。
もう、1時間も経っている、今から、警察に行って、
どうのこうのとするとまだ、1~2時間はかかると言うのだ。
春樹は、どうにもならず、警察官に
「もう、お金はいいから勘弁してくれ」と言って、その場を離れた。
ふざけた話だ。春樹が無賃乗車で訴えれば、警察も動いたかも知れないが、
とても、そんな時間を費やす気力は無かった。
身も心も過去もすべて受け止めて
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![泉 春樹](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/150768803/profile_ad01dc3ed9385c1a244651cf2e49228c.jpg?width=600&crop=1:1,smart)