SM語り特別編 エーテル家族語り グラジオ編
※画像は「ポケットモンスターサン&ムーン」及び「ポケットモンスター」からの引用となります。
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〇概要
エーテル家族特別編ということで三夜にわけてお届けします。二人目はエーテル家族の†守護者†グラジオについての語りです。
グラジオはエーテル一家の長男であり、SMシリーズのサトシのライバルです。父にモーン、母にルザミーネ、妹にリーリエを持ちます。SMシリーズではアローラの各地を転々としており修行の旅を続けています。
〇時系列整理(定期)
本題に入る前にSMシリーズに入るまでのエーテル家族の時系列を整理してみましょう。ストーリーで語られた時系列とは異なるので注意が必要です。一番重要なのはSMストーリーが始まる四年前に「6、UBパラサイトがラボに出現」が発生したことです。
〇グラジオのパーソナリティ
まずはグラジオの象徴「Z詠唱」から。
岩:蒼き月のZを浴びし岩塊が今…滅びゆく世界を封印する!
竜:鮮烈なる光よ!舞え!究極に強き者は誰か!戦場にその名を刻め!
霊:新月の夜、ほの暗き宵闇を彷徨う永遠の旅人となるがいい!
ルナ:月の魔眼よ、闇の魔宮を照らせ
・太陽と月
詠唱でよく使われる「月・闇・光」―これがグラジオのパーソナリティを象徴しているとすると、その対称の「太陽」はわれらがサトシとなります。
しかしサトシとグラジオは対立していません。
なので「光/闇」ではなく「日光/月光」の対比関係で照らし合わせるほうが適切だと思います。
またグラジオのパーソナリティ形成には四年前のウツロイドリーリエ襲撃事件が大きく影響しています。妹であるリーリエを守れなかったことへの悔恨…。それがグラジオがポケモントレーナーになった動機であり、「月」のパーソナリティを獲得する契機となります。
〇グラジオと手持ちの軌跡
グラジオはブラッキー、ルガルガン(真夜中の姿)、シルヴァディ、ゾロアークを所持しています。
グラジオは手持ちのポケモンとともに「守る」ための力を得るために修行を続けてきました。手持ちのポケモンはグラジオと想いを共にし、厳しい修行を経て着実に強くなりました。
ではグラジオがどのようにしてポケモン達と共に歩んできたのか、そして「守る」べき家族とどう向き合ってきたのか、彼の幼少期から振り返ってみましょう。(時系列の考察には私見が混じります)
・イーブイとの出会い
グラジオの相棒ポケモンはブラッキーですが、彼女との出会いは幼少期に傷ついたイーブイを介抱したところからはじまります。ポケモンを慈しみ、守る気持ちがグラジオの根底にあります。
・リーリエ誕生
時系列ははっきりしませんが、イーブイ保護と同時期にリーリエが生まれています。幼少期はやんちゃなグラジオでしたが(ルザミーネ談)、兄として妹を大切に想う気持ちはこのころから持っていたようです。
・父、モーンとの別れ
しかし、そんな幸せは長く続きませんでした。ウルトラホールの研究中にモーンがウルトラホールの中に吸い込まれ行方不明になってしまいます。この頃自我を持たなかったリーリエと比較してグラジオは根深い喪失感を背負うこととなります。
・ウツロイドリーリエ襲撃―シルヴァディの救済
悲劇は続きます。ザオボーがウルトラホールを開いたことでウツロイドが出現しリーリエを襲撃する事件が起こります。
しかし皮肉にもザオボーが開発したシルヴァディがリーリエを助けてくれました。―リーリエにトラウマを植え付けたことは誰も知りませんでした。
・エーテル財団への不信感―家を出るまで
ここからはアニメでは語られてないグラジオが家を出るまでに起こったことを考察します。
①ザオボーによる事件後処理
→シルヴァディに拘束具をつけて「タイプ:ヌル」状態に
→事件についてルザミーネに隠ぺいした
②リーリエがポケモンに触れなくなった
①・②ともにルザミーネは関知していない、あるいは重要な問題と捉えていませんでした。自分たちを守ってくれるはずの大人の裏切りと無関心。これらのことが重なって不信感が募り、グラジオは家を出たと考えられます。(表向きは自分の人生を見つめなおす為とジェームズなどに話していたようです)
・ルガルガン(イワンコ)との出会い・ブラッキーへの進化
グラジオが家を出たのはシリーズの半年前だと明かされています。グラジオが家を出てサトシ達に出会う間にあったと想像される重要な出来事が二つあります。
一つはルガルガン(イワンコ)との出会い、もう一つはイーブイのブラッキーへの進化です。
ルガルガン(イワンコ)との出会いは詳しく語られていませんが、私の想像では家を出た後にゲットし、イーブイがブラッキーになるタイミングで同時に進化したのではないかと妄想しています。(理由は夜進化の共通点があるという浅はかなものですが)
・リーリエとシルヴァディの邂逅
リーリエ編でも語りましたが財団編においてほしぐものテレポートにより不意にシルヴァディに出会ってしまいます。
ここでリーリエは過去のトラウマを思い起こしますが、グラジオはリーリエがウツロイドではなくシルヴァディに恐怖していることには気づいていませんでした。
・ルザミーネに対する激昂
その後ザオボーによる襲撃を受け、シルヴァディが奪還されてしまいます。グラジオはこのことをルザミーネに追及しますが、ザオボーの凶行をルザミーネが関知していなかったことをここで初めて知ります。
そしてここでルザミーネに対する積年の不信感を爆発させます。
グラジオのルザミーネに対する不信の根底には、四年前に自分とリーリエを守ってくれなかったことにあります。
グラジオの眼にはルザミーネは自分の興味本位で家族を守らなかった大人として映ったのでしょう。自分はルザミーネのようにはならない…そう思い家を出たのかもしれません。
・ルザミーネ救出へのマインドセット
しかし再度ウツロイドが襲った時、リーリエを守るために前にでたグラジオの「前に」ルザミーネが出て守りました。詳しくは語られませんが、この瞬間にグラジオの中でルザミーネは許されたのでしょう。消失後、即座にルザミーネ救出へマインドを切り替えました。
・兄妹でルザミーネ救出へ
そしてルザミーネ救出に妹のリーリエと向かいます。
救出には危険が伴うためリーリエを積極的に救出に同行させようとはしませんでしたが、グラジオは明確にチャンスを与えました。これはリーリエにとってもルザミーネが「守る」べき家族だと認めていたからでしょう。
そして様々な障壁を乗り越えた先でいよいよ救出する段になって、グラジオはリーリエの説得に託します。ルザミーネに対して響く言葉をリーリエが持っていると信用していたからでしょう。
実際のところ、グラジオ以上にリーリエとルザミーネは深く連動しているように見えます。
・モーンへの思い
54話でルザミーネを救出したことで、家族の問題は一見解決したように思えましたが、実は根本的な問題はそのままになっていました。
それは父モーンについての清算です。モーンはグラジオが幼い時に行方不明になっていましたが、その喪失感をずっと抱えたままにしていたのです。
しかし、108話で死者と対話できるカプ・レヒレの霧の中でモーンに出会えなかったことで逆説的に生存が確認されるとグラジオは前のめりに捜索へと乗り出しました。ルザミーネもグラジオがモーンをそこまで想っているとは考えていませんでした。グラジオにとっての家族の原風景はモーンにあったのです。
・ゾロアーク連れ戻し―家族再生のピース
リーリエがマギアナの起動によってモーンへの想いを膨らませていく中、グラジオはモーンの相棒であったゾロアークを連れ戻します。ゾロアークを連れ戻したのは、何よりグラジオの家族の原風景にゾロアークがいたことが大きな要因でしょう。
結果、グラジオはゾロアークを見つけ出しモーン捜索の体制を整えます。ゾロアークの幻影は「家族」の原風景の再現であり、マギアナの起動条件でした。マギアナの指し示す光がモーンへと繋がる羅針盤となります。家族総出でモーン捜索に乗り出し、そして、来週には…。
〇家族を「守る」月光
先ほど、月光をグラジオとすればその対称は日光であるサトシであると述べました。ここでいう「光」とは自分以外の誰かを守ること、「愛」と言い換えられるものです。
グラジオの「愛」は「家族」に注がれています。
一方サトシの「愛」は全存在に注がれています。
・ロマンティシズムとリアリズム―内向的な「愛」
グラジオはサトシが初対面で「良い奴」と評するように愛に溢れたキャラクターです。
しかし、グラジオの「愛」の対象は「家族」、身内に限定されています。厨二発言などをみると一見ロマンチストに見えますが、その実リアリストでもあるのです。
・サトシの特異性
一方サトシは「太陽」、全てを照らす愛を持っています。ルザミーネ救出のときも、かがやき様のときもサトシは外の存在でしたが、問題解決のためその身を投げ出しました。グラジオはサトシの特異性にいち早く気づき、その正体を探ろうとしていました。
「お前は何者だ?」
…メタ的には「主人公だから」としか言いようがない質問をグラジオはサトシにぶつけます。
・真夜中と対峙する黄昏
グラジオとサトシの対比を象徴しているのが、真夜中と黄昏の姿のルガルガンの対峙です。昼も夜も照らす黄昏の光と暗闇を照らす月光。ルガルガン同士もサトシとグラジオもお互いを照らす光となりました。
サトシと対峙する―バトルするとき、グラジオは「守る」ことを忘れられました。何かを守るためではなく、自分自身をぶつけ合い高めあう。サトシと出会ったことでグラジオは解放されたのかもしれません。
〇総括
非常に長くなりましたがここで〆ます。
家族を「守る」ため、常に自分を磨き上げてきたグラジオ。太陽の光とはまた違う優しい光です。太陽と月、両方がそろってはじめて「光」は「輝き」になります。どうかその「輝き」をまた見たいものです。
(了)