ポケマス「黄金色に輝く未来」感想
〇概要
ポケマスイベントの「黄金色に輝く未来」感想です。なぜマツバは今までホウオウに出会えず、このストーリーによって出会えたのか。深堀して語ります。
◎マツバについて
マツバはジョウト地方エンジュシティのジムリーダーでゴーストタイプのエキスパートです。伝説のポケモンは真の実力を持ったトレーナーの前に舞い降りるという言い伝えを信じて修行を続けた結果、普通では見えないものが見えるようになりゴーストタイプに精通するようになりました。
◎パシオにおけるホウオウ伝説
原作であれば伝説ポケモンは主人公(ポケマス時空的にはヒビキ・コトネ)がゲットするところですが、なんとポケマスにおいてはシルバーがすでにホウオウをゲットしています。シルバーがホウオウをゲットした経緯については以前語りましたのでそちらをご参照ください。
◎マツバが抱えるモヤモヤ
クールなマツバは自分の感情を表に出しませんが、その胸中は複雑であったことが示唆されています。そんな中パシオにてホウオウの羽根をみつけるところからエピソードが始まります。
◎ホウオウの羽根
マツバは羽根がシルバーのホウオウのものだと思い、渡そうとしますがシルバー曰く違うようで…。さらにホープトレーナーがホウオウの羽根を持っていることを自慢している現場を目撃。こちらもシルバーのものではない…では別のホウオウがパシオにきたのでは?と色めき立ちます。
◎信じる者と疑う者
マツバにとってはホウオウとの邂逅は悲願の夢。ヒビキ・コトネと共にホウオウ探しに乗り出そうとします。
しかし、シルバーとクリスは羽根の真偽を確かめなくてはならないと探索を辞退。チーム一丸となって…とはいかず二手に分かれてこの事象の真相にあたっていくこととなります。
シルバーとクリスは各々あの羽根の真偽を確かめるべく調査します。シルバーはホープトレーナーへ クリスはオーキド博士に。どうやら二人とも有力な手掛かりをみつけたようですが広場では何やら不穏な騒ぎが…。
◎羽根を信じる者たち
どうやらパシオでホウオウの羽根を持つトレーナーが複数人存在し、それぞれが自分こそがホウオウに会う権利があると主張しているようです。マツバはここでシルバーとクリスの仮説が正しかったことを悟ります。
◎羽根の真実とマツバの想い
シルバーとクリスの調査により、羽根は偽物でありその出所はロケット団であることが明らかになりました。マツバは「信じる心をもてあそび 夢や憧れを踏みにじる」行為が許せないようです。
◎マツバの激高
マツバは諸悪の根源であるロケット団の密売の現場を押さえます。当然口でいってやめるような悪の組織ではないので、実力行使へ到達します。ジムリーダーのマツバに叶うわけもありませんが、それでも反省の色が見えないマツバは更なる追い打ちをかけようとします。
そのとき…
◎シルバーの仲裁
シルバーがマツバの追い打ちを止めます。シルバーは本物のホウオウを見せることで偽物の羽根を売る商売ができないことを示し、ロケット団を退けました。
シルバーはマツバに問います 「らしくないじゃないか?」
◎シルバーとマツバの問答
マツバは「ちょっと熱くなりすぎた」と反省しますがシルバーは続けて問います。
シ「ホウオウだったからか? それともロケット団のやり方が許せなかったからか?」
マ「…両方 かな」
◎問題の収束…シルバーの残した言葉
結果としてロケット団はクリスらの活躍によって鎮静化されました。しかしそれはホウオウの羽根が偽物でパシオに新たなホウオウが来ていないことを意味します。悲壮感漂う中シルバーはこういいます。
「羽根なんて関係ない」
◎マツバの出立
「俺がそうだったからな」
「ありがとうシルバーくん」
シルバーの言葉をマツバは好意的に受け止めます。ヒビキもホウオウが正しき心の持ち主の前に現れるならばマツバのもとに現れるはずだと励まします。マツバは拾った羽根をホウオウに出会いたい気持ちの証として持つことにしました。
◎ホウオウとの邂逅
後日、マツバはいつものように修行しているとそこにホウオウが現れます。
マツバは問います。
「きみがぼくの新しい未来なのかい…?」
ホウオウはそっとマツバの後ろに追従し、二人は朝日を共に拝むのでした。
〇物語のポイント
さて、ざっとストーリーを振り返ってお気づきの方もいるかもしれませんが、このストーリーはマツバとホウオウの邂逅それ自体はかなり軽めの比重になっています。
物語の比重は偽羽根騒動にあり、もっと言えばシルバーとの問答がこのストーリーの軸となります。
◎なぜマツバはホウオウに選ばれていなかったのか
本ストーリーはマツバと色違いホウオウがバディになる物語…でありながら逆説的に今までマツバがホウオウに選ばれていなかった理由を同時に説明する物語でもあります。ここからはマツバがホウオウに選ばれてこなかった理由について考えます。
◎信じる者はすくわれる?
いろんな切り口があると思いますが、個人的に一番気になったのは偽羽根騒動に踊らされた人たちに対するマツバの反応です。
マツバは「信じる者」の心を踏みにじる行為が許せないと言いました。一見正しそうに見えますが、では果たして彼らは「救われる」べきでしょうか?
確かに偽物の羽根をつかまされた彼らは被害者です。しかし、彼らがホウオウに会いたいという気持ちは本当に「正しき心」によるものだったでしょうか。
自分だけがホウオウに会う価値のある人間だと主張するその姿は「蜘蛛の糸」のカンダタを想起します。
◎信じることの自己目的化
思うにマツバは「信じること」を否定されたくなかったのでしょう。「信じる者は救われる」、もとい「救われるべきだ」と。それは誰のための信仰でしょうか?
マツバにとっての修行はホウオウという信仰対象への愛を忘れ自己目的化していたのではないでしょうか。
◎シルバーが問いかけたこと
シルバーはロケット団に追い打ちをかけようとしたマツバを諫めました。シルバーの箴言には次のような真意が含まれていたのではないでしょうか?
その怒りは何のためか?
自分がやってきたことを侮辱されたからではないのか?
その怒りは本当に「正しき心」によるものか?
そして最後のシルバーの言葉。
「羽根なんて関係ない」
「俺がそうだったからな」
そう、ホウオウに会うのに羽根は関係ないのです。少なくともパシオの世界では。正しき心を持ったトレーナーのもとに「勝手に」舞い降りる…それがホウオウなのです。もちろん修行した「から」会えるというものでもありません。
◎マツバの気づき
ホウオウとの邂逅は努力の果てにたどり着くものではありません。大事なのは「正しき心」とは何か考え続けること、ホウオウを想い続けること。シルバーの言葉によってマツバは羽根を「ホウオウに会うためのアイテム」から「ホウオウに会いたいという気持ちの象徴」へと見方を変えました。
〇総括
マツバがホウオウに出会えなかったのは、修行をつづけるうちに「信じること」が自己目的化してしまっていたから。シルバーのマツバに対する問いかけはマツバの信仰を解体し再構築する契機となりました。まっさらな心を認めてホウオウはマツバのもとへ「勝手に」舞い降りたのです。
心を新たにしたマツバは新たな未来をホウオウと共に歩むことでしょう… というわけで個人的解釈ですが自分の語りは以上となります。ご清聴ありがとうございました。また次回の語りまで。
(了)