新無印における再登場ヒロイン
〇概要
過去キャラの再登場が目玉の一つである新無印。今回はその中でも再登場ヒロインに絞ってどのような描かれ方をしたのかその意義について考えてみましょう。
〇アンケート
今回企画を立てるにあたってアンケートを実施しました!質問は「新無印の再登場ヒロインで一番成長したと思うのは?」
得票数は154票で結果は以下のツイートのようになりました。
数字の推移を見ていた感じ、アイリスとセレナはずっと競っていてリーリエが後に続く形となっていました。フォロワー的にはアイリスとセレナに成長を感じた人が多かったようです。
〇時間と成長
今回この質問でアンケートをとったのは「再登場」に期待される大きな要素の一つに「成長」があると考えたからです。
過去シリーズから現行シリーズに至るまでには時間が流れています。もちろん現実の時間と作中の時間は流れ方が異なりますが、過去から現在への時間の流れは変わりません。
「時間」が流れればそのキャラの外見や内面に変化が起こっていると考えるのが「普通」だと考えるのが視聴者の論理です。アニポケのように少年少女が主人公の物語の場合、時間の経過は基本的にポジティブな「成長」に結び付けられます(ポケモンの「進化」になぞらえても面白いかもしれません)。
〇不変≒普遍の価値
一方で時間が経過したからこそキャラの不変≒普遍性に価値が生まれることもあります。「お前変わらないな~」っていう奴です。過去キャラには過去キャラが過ごしたシリーズの空気があり、それを再現するのも再登場回の役割の一つです。
〇ヒロインの立ち位置
さらに「ヒロイン」という属性も加わるとどうなるか。
私は「ヒロイン」とは単なる女性同行者ではなく、サトシとは違う目標を持ちそれに取り組んだキャラ達…と考えています。特にXY編までの旅スタイルの場合、男性同行者はサポートに回ることが多いためヒロインの役割は大きいです。
作中で時間が流れている間にヒロイン達はどのように自分の目標に取り組んだのか。ここからは各ヒロインごとに登場シリーズでの活躍と新無印でどのような描かれ方をしたのかについておさらいしていきます。
〇ヒカリの場合
・DPでのヒカリ
ヒカリはDP編のヒロインで母アヤコのようなトップコーディネーターを目指して旅に出た少女です。初のW主人公に位置付けられたキャラでサトシとのコンビ感がかなり強いイメージです。相棒はポッチャマで現在に至るまで盤石な人気を獲得する人気キャラクターとなりました。
新無印でのヒカリは全て特別編に登場しています。
74:ダークライ 真夏の夜の夢
75:クレセリア 真夏の夜の光
89:ディアルガ&パルキア! 時空大異変!!
90:ディアルガ&パルキア! 時空大決戦!!
そしてAmazonPrime限定「神とよばれしアルセウス」
「再登場」以上にBDSP/レジェアルの販促の趣が強いですね。
・ゲストとしての役割
これらの再登場回におけるヒカリの役割はいわゆる「ゲスト」としての役割が大きかったといえます。本編に直接関わらず特別感のフレーバーを付け加える役割。すなわち「不変」の価値を期待されていたのです …ということは必然的に「成長」要素は薄くなります。
ヒカリの目標はトップコーディネーターになることなのでコンテストの様子を映してくれるとよかったのですが、その尺はありませんでした。きらびやかなドレス姿は披露したもののヒカリ得意のコンテストバトルが見れなかったのは少し寂しいところです。
〇アイリスの場合
・BWでのアイリス
アイリスはBW編のヒロインでドラゴンマスターを目指している少女です。カスミ以来のバトル系ヒロインでサトシともよく対戦しますし、その実力も高く描かれています。サトシに「子どもねえ」というのが口癖で大人ぶりますが自分は感情的になることも多いです。
・新無印でのアイリス
新無印でアイリスが登場したのは、65:ドラゴンバトル! サトシVSアイリス!!
WCSの公式戦でのサトシの対戦相手になるという、再登場回の中でも破格の扱いを受けています。しかもただの一般トレーナーではなく、イッシュ地方のトレーナーの頂点チャンピオンとして立ちはだかります。
・見える「成長」
アイリスは元々の性格が尖っていた分、視聴者から見て「成長」が目に見えてわかりやすいキャラです。ゴウにボールを投げられても怒らなかったり、サトシとの諍いもすぐに矛をおさめたり… 。表情の柔らかさなどを見るだけでアイリスがこれまでの時間で成長したことが分かります。
・見えない心を見る「心」
しかし、新無印アイリスの最大の特徴は「心研ぎ澄ましポケモンと一つに!」 目に見えるもの以上に、アイリスは直接目に見えない「心」を大切にするトレーナーとして成長していました。サトシが見抜けなかったカイリューの心の問題をアイリスは紐解きました。
・サトシに最も近いヒロイン
アイリスはBW編からサトシと立ち位置が近いヒロインでした。カスミのようにジムを受け持つこともなく、ひたすら高みを目指しチャンピオンに到達しました。そしてマスターズトーナメントという大舞台で共に戦う同志へ。アンケートで票を集めたのはこの辺りが要因かもしれません。
〇セレナの場合
・XYでのセレナ
セレナはXY編のヒロインで当初は旅の目的を持たずサトシに再会する為に家を出ましたが、やがてトライポカロンという競技におけるトップパフォーマーを目指す少女です。サトシに明確な好意を抱いているという点で一般的な「ヒロイン」像に最も近いキャラかもしれません。
・新無印でのセレナ
セレナが登場したのは 105:イーブイとニンフィア! 出会いと再会!
他のヒロインと違いタイトルに名前も入っていませんし、事前に告知もされませんでした。サプライズ登場というのが他のヒロインにはない特徴です。
・コハルへの導き
セレナは他のヒロインに比べコハルと密接に関わったキャラです。コンテストの参加を迷っているコハルに「まずは動いてみる」というかつてのサトシの言葉を基にした導き。かつてサトシに導かれたセレナが今度は導く側に。セレナも「成長」に重点が置かれた再登場といえます。
・支える「大人」へ
セレナは視聴者からの再登場の期待の大きさを考えると裏方的な仕事を任されていたように見えます。
しかしこれが最大の「成長」の見せどころ。セレナは現行シリーズのキャラを支える「大人」へと歩みを進めたことが再登場回から読み取れます。それはサトシにも伝わっているはずです。
〇リーリエの場合
・SMでのリーリエ
リーリエはSM編のヒロインの一人でシリーズ中ではポケモンに触れないトラウマと家族の問題に向き合った少女です。他のヒロインと異なり夢を追いかける手前の段階で物語が展開されたキャラです。
・新無印でのリーリエ
リーリエが登場したのは、 111:モーンとリーリエ、雪原の再会
SMからの「忘れ物」回収案件ですね。SM最終話から父親のモーンを探す旅にでていたリーリエ一家ですが、その「忘れ物」がやっと回収されました。
・物語の完結
リーリエの場合他のヒロインと異なり、自分の物語が不完全な状態でシリーズが終わったのでそれを完結させることに全力が注がれました。リーリエ自身の成長も物語の完結には必要ですが、それ以上にモーン喪失のミステリーが解かれることに重きが置かれています。
・「子ども」への回帰
この回をもってエーテル家族は再生するわけですが、その過程でリーリエはSM編よりも幼さが目立つ演出がされていました。グラジオに「強くなったな」と言われてきたリーリエが「子ども」らしく…。これはリーリエの物語のスタート地点を暗示していると考えられます。
・物語のはじまり-成長のはじまり
サトシたちのように、他のヒロインのように夢をもって冒険する未来がリーリエには広がっている。ゴウ・コハルとの絡みもほぼない自己完結型の物語ですがそこには「成長」がある。勝手な憶測ですがリーリエに投票した方はそう感じたのではないでしょうか。
〇総括
さて長くなったのでそろそろまとめます。新無印におけるヒロインの再登場には大きくわけて二つのパターンがあります。
一つは「成長」を魅せるパターン、もう一つは「不変≒普遍」の空気感を演出するパターンです。前者はアイリス・リーリエ、後者はヒカリ、その中間がセレナといった感じでしょうか。
個人的に最初は「成長」にばかり目がいってしまっていたのですが、キャラに「不変≒普遍」の価値がなければ再登場させるインセンティブがないことに後から気づきました。ファンサービスっていうと俗っぽいですが期待に応えるっていうのは大事ですからね。(例:アラン戦)
さて、そんな再登場ヒロインの一人であるアイリスが明日マスターズトーナメントの大舞台に立ちます。ここまで見事に「成長」を魅せてきたアイリス シロナ相手に全力でその力をぶつけてほしい! というあたりで今回の語りを終わります。
ご清聴ありがとうございました!
(了)
・追記
アイリスVSシロナ素晴らしいバトルでした。見どころなどを記事にまとめましたのでこちらもチェックしてみてください!