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【感想日記】劇場版ポケットモンスター キミにきめた!
秋の始まりのアローラ🌴
8月も終わりましたが「夏の映画感想日記」第五弾。ここで一つ区切りにしようと思います。観ていくのは「劇場版ポケットモンスター キミにきめた!」
現代ポケモン映画の転換点となった本作。サトシとピカチュウの物語を語り直した先に見えたものとは。
「劇場版ポケットモンスター キミにきめた!」
2017年7月15日公開
監督:湯山邦彦
脚本:米村正二、首藤剛志(一部脚本)
エグゼクティブプロデューサー: 岡本順哉、宮原俊雄
プロデューサー : 下平聡士、松山進、知久敦、片上秀長
アニメーションプロデューサー:加藤浩幸
総作画監督:一石小百合、西谷泰史
音楽:宮崎慎二
アニメーション制作:OLM
製作:ピカチュウプロジェクト
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1996年2月に「ポケットモンスター赤・緑」が発売され、1997年4月にテレビアニメ「ポケットモンスター」が放送開始された。テレビアニメ20周年記念作品として作られたのが「キミにきめた!」だ。
本作はある1点においてポケモン映画の歴史の極めて重要な転換点となっている。それはテレビアニメ版のシリーズとリンクしない「キミ決め時空」とも言うべきユニバースを創出したことだ。帽子の柄が差異のアイコンとして置かれている。
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サトシ、ピカチュウ、ロケット団という慣れ親しんだキャラクターとポケモンが登場するのは変わらない…逆に言うとそれ以外の全てがこれまでの「歴史」とは異なる時空として描かれる物語。
これを「リメイク」というのか「リブート」というのか、詳しいことは私には分からない。ただ一つ確かなのは「キミにきめた!」はテレビアニメ版の映像を現代風に焼き直したものでは決してないということだ。
「キミにきめた!」ではかつて私たちがサトシたちと共に観てきた物語の「ような」ものが少しずつ違う形で現れる。カスミと同じく水ポケモンを扱いながら「母親」にコンプレックスを抱くマコト、タケシと同じくポケモンの知識が豊富ながらポケモンとの関わりに怖さを持っていたソウジ、ダイスケのような非情に見えながらシンジのように勝負に熱い情熱を注ぐクロス…。
登場人物だけではなくイベントも少しずつズレていく。サトシが初めてゲットしたキャタピーは「イヤンセル」しないし、ヒトカゲがリザードに進化しても「ハンコウキ」はやってこない。各要素を違う形で組み直している。
時空が異なるからといえばそれで済むのかもしれないが、一本の映画としてそれらを組みなおした先に描かれるものにも留意すべきだ。それはホウオウ…サトシとピカチュウの旅立ちの日にみた伝説のポケモンの存在。
ホウオウの出会いにおけるテレビアニメ版との最大の「ズレ」は「にじいろのはね」の存在だ。ホウオウはサトシとピカチュウの前に一枚のはねを落とす。それはホウオウに認められた「虹の勇者」を導くためのアイテム。終盤に語られることだが、ライバルであるクロスの前にもホウオウは現れたが「にじいろのはね」は落とさなかったという…。
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個人的な解釈では「キミにきめた!」は<色>を取り戻すための物語だ。ホウオウの「にじいろのはね」を象徴として<色>をめぐる物語が展開されていく。
サトシがクロスに敗北し、ピカチュウから拒絶されてマーシャドーから夢を見せられた時、サトシの世界から<色>が失われた。
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クロスに怒ったマーシャドーの力によって暴走したポケモンたちの攻撃を受けたとき、世界は<色>づいたままサトシの<色>だけ失われた。
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そして、サトシとピカチュウが再び出会ったとき、両者は共に<色>を取り戻した。
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<色>には様々な意味が込められているが、端的には次のボンじいによる語りがそれを表しているだろう。
ボンじい:この世界のどこかに新たな虹の勇者になるものがおる。少年少女よ生きろ、とにかく生きろ。されば道は開く。未来は虹色の光で満ちておるんじゃ。
<色>とはこれからを生きるきらめき。未来を生きるものたちの輝き。過去を積み上げてきたポケットモンスターはこれからの未来を見据えている。おしてそこにはきっとあなただけのポケモンがいるはずなのだ。
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サトシの物語が終わっても、それぞれの世界にそれぞれのポケモンとそれぞれの<色>がある。これからまた新たな世界で新たなポケモンと新たな<色>を楽しみたいと願う、そんな映画だった。
(了)