矯正をやめた日
「おまえ、前歯欠けとるぞ!!」
高校時代、部活の午後練で、先輩に言われた一言。本気で心配されるのが1番辛いねん。
隙間があるだけだ。
「お前の歯は、醜いアヒルの子やね」
サイコパスの歯学部の友達が、私を見てそういう。専門用語として、実際にあるそうだが、それを悪気なく直接伝えるかよ普通。
そう。私の前歯には隙間がある。俗にいうすきっ歯だ。
小さい頃からよく、「マスキッパー」
などと、いじられていた。
いじられるのは美味しいと思ってしまうタチなので、学生までは、特にこの歯を気にしていなかった。
社会人になって営業として働き出した私は、美への意識が高まった。
今は、髭の医療脱毛に通っている。
すると必然的に、歯も矯正したいと思うようになった。
子どもと比べると、大人の矯正には、時間とお金がかかる。
それを分かってる上でも、「やっぱりやりたい!」
日に日に思いが募っていった。
ある時、本格的に矯正を始めようと、ネットで詳しく調べたことがあった。
「前歯 すきっ歯」で検索。
すると、ある記事に当たった。
「フランスでは前歯のすきっ歯は幸運の呼び込み口とされ、芸能人では矯正をしないどころか、逆に隙間を作る人もいる」とのこと。
実際画像を見ても、多くの女優や俳優の前歯に隙間があった。
美男美女のすきっ歯を見続けていると、脳がゲシュタルト崩壊して、逆にセクシーに見えてくる。
「こんな世界線もあるんだぁ」
私はもう一度ちゃんと、自分の前歯について考えることにした。
すきっ歯を治して何がどうなるだろうか。
本当に前歯で、顧客は対応が変わるのか?
前歯だから、噛み合わせにもそんなに影響は無い、、。
自分の内面は変化する?
何ひとつとして、変わりそうに無かった。
だったら、高いお金と時間をかけて矯正することに意味はないのでは?と思った。
それになんということこか。
私の前歯は、やや斜めに生えている。
それも、口に入り込む形で。
形状的に、幸運を入れ込み、かつ出にくい構造なのだ。
そう思った時、矯正をすることが、逆に怖くなった。
また一時期、私が洋楽にハマっていた時に出会った歌詞に
「I love the gap between your teeth」
というものがある。
すきっ歯はもしかすると、
チャームポイントにすらなるのかもしれない。
私は、矯正するのをやめた。
p.s.
中国ではすきっ歯から幸せが出ていくという言い伝えがあるそうですが、そこは目で覆います、、、。